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大阪デクショナリー5

大正区、港区、西区の大阪西部エリアを中心に、年に2回発行しているフリーマガジン「Lifes」の中で連載している、絶滅して欲しくない大阪弁を思いつくまま紹介しているマイ“デ”クショナリーです。

【あ行】

アホみたいな顔して

ボケ~っとしたような顔のこと。

テレビを見ている時に口開けて見ていたり、ボーッとしていたり、ブサイクな表現はちょっとまずいなという時に使われる。悪口や罵倒よりも親しみのある独特な表現。「もう、アホみたいな顔して!」に対して言われた本人は「誰がアホみたいな顔や」と返すのがセットでもある。

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いがむ

曲がっているの意。
一般的にはゆがんでいると言うけれど関西ではいがむ。「ちょっとこの自転車のカゴ、いがんだあるわ」や「あんたの書いた線、いがみすぎやがな」「ちょっと顔いがんでんちゃう」みたいな使い方をする。ゆがむよりもいがむの方が曲がっている感じがするのはなんでやろ。


インデアンカレー

大阪を中心に展開している名物老舗カレー屋。

1947年にオープン。70年の歴史を経た今も関西人に愛されるインデアンカレー。最初は甘い口当たりが徐々に辛くなり、いつの間にかジワリと頭皮に汗をかいていたりするものの、すぐにまた食べたくなる美味しさ。そして一緒に添えられるキャベツのピクルスがいい口直しとなって、あぁインデアンカレー食べたなぁって満足感を与えてくれる。そんなカレーはもちろんだけど、たまに食べたくなるのはインデアンスパゲッティ。アルデンテなんてあったっけ?と思えるほどもちもちソフトな麺をさっと痛めてカレーをかけてあるもの。この美味しさはカレーライスとはまた違う美味しさ。飾りでもあり、アクセントにもなるグリンピースも嬉しい気配り。

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おこうこ

漬物の意。

漢字では御香香と書き、香香の丁寧語だそうだ。子どもの頃、祖父母の家に行った時、口さみしくて「なんかない?」と聞いたら「お菓子なんもないわぁ、おこうこやったらあるから食べとき」と、きゅうりのぬか漬けや白菜の浅漬けを鰹節で和えたものを出してくれたっけ(子ども的には嬉しくなかったけど)。あと「つけもんて言いなさんな、おこうこって丁寧に言わなあかん」って諭されたことも。今改めて漢字で見ると、美しい言葉やなって思う。

【か行】
蚊に噛まれる

蚊に血を吸われること。
この言葉も関西独特の言い方やそうです。間寛平さんはギャグで「血ぃ吸うたろかぁ」と言うてましたが、ほんまは噛んだろかぁの方が良かったみたいですが、全国的には伝わらないので吸うにしたと昔、聞きました。確かに蚊の注射器のような口を思うと、吸うという表現がしっくりきますが、噛むという表現の方がもっと注意せなあかんと言うてるような気がします。

ぐねる

足を捻ること。
グネッとなる。


【さ行】

細雪

谷崎潤一郎の長編小説のこと。
船場の大店の旧家を舞台に、そこで生まれ育った四姉妹の昭和11年から16年までの春夏秋冬と三女の雪子の縁談を軸に描いたお話。
小説よりも先に体験したのが市川崑監督の映画の方。岸恵子、佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子の豪華女優陣四姉妹に扮し競い合った名作。オープニングの京都での花見のシーンの美しさとヘンデルのオペラ「セルセ」のアリア「オンブラ・マイ・フ」の素晴らしき融合。艶やかな着物と衣擦れの音など見るべき場面の多いこと。大阪の上質なモダンを味わう上で最良の映画やと思う。ちなみに小説は上中下と壮大。1回目は夢中で読んだけど、2回目はなんか読みにくなぁと思ってしまった。

正味

本当は、実際のところの意。
漫才師、横山やすしがネタの中でよく使っていたフレーズ。「本当」「ほんま」をさらに「嘘ではない」を強調するための言葉。とはいえ、おっさんしか使っているとこしか見たことがない。それに「正味の話やっちゅうねん」と言われると余計に説得力がなく聞こえる。

素うどん

かけうどん、何も具が入っていないうどんのこと
素饂飩を単独で頼むのはなんだか勇気がいる。貧乏やわ、ケチやわ、それ頼むんやったら食べんといたらええのにとかも割れるんちゃうやろかと。だから実は素饂飩でええ腹具合やのに、つい天ぷらとかきつねとか言うてしまう。もしくは素饂飩においなりさんとかおにぎりをつけてしまう。ただ最近は、昆布饂飩にすると、昆布の効果でダシがさらに美味しくなることがわかり、それにシフトし素饂飩の悩みは無くなった。

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【た行】

他府県

他の都道府県のこと。これは大阪に住んでると言うてしまう。あくまでも大阪を中心に物事を考えて、愛知県より西に対しての言い方。以前このことで東京在住の子と話したことがあるけれど、関東では「他県」と言うそうな。お互いに“都”“府”を入れてないのが意地悪やなぁと笑ってたけどなんかモヤモヤが残った。

チキンラーメン

1958年に発売されたインスタントラーメンの元祖
2018年の秋から翌年3月まで放送されていた朝の連続テレビ小説「まんぷく」は、チキンラーメンを生み出した安藤百福とその奥さんたちをめぐる話をやったけれど、今や時代とともに進化し、世界中で、さらに宇宙食にまでなるとはやはりすごいものを発明しはったんやなぁと改めて敬服する。しかも大阪発祥だということに誇りを抱く。そして再認識したのは百福という名前のめでたさ、そして彼の福耳の凄さ。個人的に好きな食べ方は、チキンラーメンにご飯を混ぜ、ネギをたっぷりのせたおじや風。

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鶴橋

大阪市生野区北西端,JR大阪環状線鶴橋駅一帯の地区のこと。
今や焼肉の街、コリアンタウンのあるエリアとしてもお馴染みで、JR環状線鶴橋駅の発車メロディも桂雀三郎withまんぷくブラザーズの「ヨーデル食べ放題」と言う焼肉を歌ったもの。元々は闇市から発展したエリアで、かつては近鉄電車で伊勢方面からの行商の方達が多く来られていたので卸売り市場としても活気あふれていた。駅を降りると本当に焼き肉の匂いが漂っているのがすごい。あと、以前、駅構内の立ち食いうどん屋には韓国風の冷麺もあったのがさすがだなと思った。


電気風呂

浴槽の湯に、微弱電流を流しマッサージ効果を促すもの。

子どもの頃、銭湯で電気風呂と書かれた浴槽に体を沈めるのは一種のガマン比べ、罰ゲーム的でもありました。調子に乗ってビリビリを体現してるとおっちゃんに怒られたりしたものです。
電気風呂は、京都の船岡温泉が昭和8年に日本で初めて取り入れ、それが好評だったのと本当は独占をすればええのに、電気風呂は定期的に電気技師によるメンテナンスが必要ゆえ、一軒では経費的にも賄いきれないので、それならば広がる方がええやんということで次々と関西の公衆浴場に導入されたんやそう、それが今も関西を中心に根強く残っているのは単に物珍しさではなくちゃんと効果があるからなんやと思います。つい最近知ったことですが、関東では電気風呂があまりないそうで、理由を聞くと浴場の規制の壁が導入を阻んだそうな。電気風呂も関西の名物としてアピールしたらもっと面白いと思う。

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東京ねぎ

長ねぎ、白ねぎのこと
すき焼きをするとき、母親は「東京ねぎ買うの忘れんようにせな」と言ってた。細い青ねぎは難波ねぎかワケギと言うて、うどんや味噌汁などで使い、すき焼きや鍋をする時は東京ねぎやった。なんで東京ねぎと言うのかは知らないけれど、関西人なりの区別やったんやろか。翌日の余ったすき焼きのトロトロになった東京ねぎをご飯に乗せて朝ごはんにするのが子供心に最高やった。

【は行】
バラ寿司

五目すし、ちらし寿司の意。

「力餅」という大衆食堂が大阪の商店街にチェーン展開していた(今もあるけれど、店舗は減り、形態は変わっているかも)。そこで人気やったのがバラ寿司やった。プラッチックのお皿にちょうどご飯一膳くらいのバラ寿司が入ってい、しいたけなど甘辛く炊かれた具が混ぜられ、上に錦糸卵、紅生姜が乗っていたシンプルなもので、酢飯もちょっと甘めでうどんとこれがあれば最高のセットやった。なじみみにしてた「力餅」で「なんでバラ寿司なんて聞いたら「バラバラなもん入れたあるさかい」って教えられたけど、母親に聞いたら「握り寿司と違ってご飯バラバラやから」って言うてた。どっちも納得がいき、今もふた通りの意味があると思っている。

彦八まつり

大阪落語の始祖・米澤彦八の名を後世に残すため、彼が活動の拠点としていた天王寺は生玉町にある生國魂神社の境内に、1990年に『彦八の碑』を建立したのをきっかけに翌年より毎年9月の第一土曜日曜に開催されている上方落語界のお祭り。
趣向を凝らした、それぞれの一門たちによる屋台や、その時ならではのテーマで組まれる落語会など、まさに落語フェス!30回目を迎えるはずだった2020年は、残念ながら新型コロナの影響で中止となった。毎回、持ち回りで一人の落語家さんが実行委員長を務め流のだけど毎年個性が出て楽しい。何よりも落語家さんたちと実際に身近に会話できたり、写真を撮ってもらえたりするのが嬉しい。

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ブタ

太っていることの意。
関西在住の若い世代はあまり使わなくなったけれど、昔世代の人たちは太っている人のことをデブではなく、ブタと呼んでいた。「また夜に甘いもん食べてる!ブタなんでっ!」「あいつ最近えらい肥えてブタなっとる」「ブタなって(以前に買うた)スカートあかんねん」と太る・太っていることを当たり前のようにブタに例えていた。おそらく1963年に発売されたエースコックのワンタンメンの「ブタ、ブタ、子ブタァお腹が空いた~」というCMソングも多大に影響していると思う。ちなみに「千と千尋の神隠し」でお父さんたちが食べ物を貪り食いやがてブタになるというのはまさに体現していたけど・・・。最近はデブと例えるのが多いけれど、ブタの方がなぜか親しみを感じるのは関西人やからか。

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【ま行】
また遊ぼ・また◯◯しよ

次回遊びましょう、◯◯しましょうと言う意味
また=againと言う意味ではない。もちろん再びと言う意味はあるけれど、初めてでもまた◯◯しよと使う。これは他の地域ではなかなか理解されないようだ。「また遊ぼって、一回も遊んだことないのに」と言われるのだけど、こちらはそれを重々わかっての言葉。親しみの表れであり、テレ隠しのひとつでもある。

【や行】
やいと

お灸のこと。

今の若い子は知らへん言葉やろなぁと思う。お灸をすえる方がまだ伝わりやすいかも。
子どもを叱る時に「そんな悪いことしたら、やいとすんで!」と言ってた。おねしょがひどかった幼少期、父親に鍼灸院に連れて行かれ、ほんまにやいとを据えられたことがある。おへそとチンチンの間くらいに針を打たれ、その先に小さく丸めたもぐさを付けられ火が灯されました。最初は怖くて泣いたみたいですが、2回目からはもぐさの匂いがなんとも好きで自分からパンツ下げてました。おねしょは収まったような気がします。

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吉本新喜劇

吉本興業のプログラムのひとつでお笑いの劇団のこと。

1959年にうめだ花月の開場時の目玉企画として公演されたのが花菱アチャコ主演の「吉本ヴァラエティ~アチャコの迷月赤城山~」。これが現在の吉本新喜劇の前身。当初は既存の大物芸人を起用しながら新人を起用、そこから平参平や、白羽大介、秋山たか志、白木みのる、花紀京、財津一郎、岡八郎、原哲男、桑原和男、木村進、間寛平、山田スミ子、片岡あや子、中山美保、楠本見枝子、藤里美、末成由美などなどが新喜劇の礎を築き、黎明期、黄金期を迎えることに。
やがて、マンネリと言われ低迷期を迎えるも逆手に取ったキャンペーンやチャーリー浜の「~じゃあ~りませんか」のギャグのヒット、過去のギャグシーンを集めたビデオのヒットなどで復活。以後、新旧役者を融合させつつ進化させ今や日本全国に知られ大阪を代表する名物のひとつとして君臨。今年で創立60周年を迎え、内場勝則、辻本茂雄は座長を勇退し、川畑泰史、小籔千豊、すっちー、酒井藍の4座長体制となっている。テレビでもいいけど、ほんまはナマの舞台で見ると心底面白い。


【ら行】
楽天軒の甘栗

都島に本社を構える明治から続く天津甘栗のお店
昔はCMもやっていた「らく、らくらくらく、楽天け~んの甘~ぐりっ」って。祖父がこの天津甘栗が好きで、しょっちゅう買ってきては皮を剥いて小さかった自分の口に放り込んでくれた。少しの苦味と噛むと広がる栗の甘味に魅了され、「剥いて~」と何個もねだったものだった。小石と水飴の入った釜の中に栗を投入し1時間ほど撹拌しながらじっくりと焼き上げた今はむき栗が主流になっているけれど、剥くという行為は大事にしたいなと思う。

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【わ行】

わちゃわちゃ

賑やかなこと、けたたましいこと、ごちゃごちゃ
葬式などの場で子どもたちが走り回っているとどっかのおっちゃんや、おばちゃんが「わちゃわちゃしいな!」とよく怒っていたもんだ。あとは母親や祖母が小言をはいている時に「わちゃわちゃ言いないな」と面倒臭そうに父や祖父は言い返してたっけ(それを言うたらさらに倍ほど返されたけど)。わちゃわちゃと言う表現は、関西弁ならではのもっちゃりした言い方で角が立たないようやなと思う。



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