詩 「あかぎれ」

北風の冷たさと夕方の暗さが
街の上に浮き立ち
モノクロームの街路を
真っ黒な猫が駆け抜ける

温度を保とうとすればするほど
無意識に歯を食いしばって
歯を食いしばっていることに気づいた時には
鈍い痛みが閉じたままの口内に残る

薬缶から沸く湯気
洗濯物の乾き具合
右手指のあかぎれ

浅い呼吸の連続
その節々に漏れる深い呼気
吐いた分の息を吸い込もうとすると
死のにおいが仄かに鼻腔を擽る

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