[800字コラム] 当たり前の想像力
このnote記事、もっともらしい描写で始まったと思ったら、医療用マスクがない!布マスクは無駄!の絶叫アジ演説になっている。
何かおかしい。
マスクに限らず、商品を欲しいと思った時に手に入るのは流通在庫が市場にある場合だけ。製造元は、作ってから市場に出るまでのリードタイムを見計らって生産計画を立てるし、急には変えられない。
「お母さん、今日友達連れて帰るから夕飯10人前つくって」
と当日に言われても、10人分の食材とそれを賄う調理器具がなければ、要望に応えられない、という当たり前の想像力は必要。
在庫が底をつくと分かった時点で大量の注文が入っても、どうしてもタイムラグは発生する。
我々が普段、欲しいものを欲しいだけ手に入れられるのは、製造元や商社が、無駄な在庫を抑えつつ必要な数量が市場に行き渡るよう、見えないところで努力してきたからであって、この看護師氏のように好き放題マスクを使い捨ててきた人が突然発狂しても詮無い話、というよりもワガママをわめいているようにしか見えない。
布マスクは、400億円という額だけを見ればマスクや医療設備の工場を建てられるかも知れないけど、原料、製造装置、労働力、衛生管理、商品の流通にどれだけの時間と費用がかかり、いつまでに何をすれば完成するのか。
「10人分の夕食をつくれ、金はここにある」
と言われても、そこから食材や調理器具を買いに出て、帰宅して料理を始めてそれで夕食に間に合うのか、という想像力がここでも必要。
日々感染者が増える中で、今あるインフラ(布マスク工場)と制度(郵便)で、少しでも拡散を抑える政府の施策を、
「『無駄金を投じる』ならやらない方がマシだ。私はそう思う」
とまで高圧的におっしゃる所以は奈辺にあるのか。
現下、フランス政府も布マスク配布の方針を決めたけど、これも無駄金?
この方の絶叫の目的は政府批判のイデオロギー闘争()なんじゃないか、と思えてしまう。