[800字コラム] コミュ力って
「コミュ力」って言葉をよく聞く。就活で必須のスキルとも言われて久しいけど、果たしてコミュニケーション能力って何だろう。
明朗快活に見えて、友達が多そうに見えても就活では面接全滅、って人は僕の世代でもいた。自分の周囲を多数派にしてしまう小賢しさは備えていても、それはコミュ力ではなかった。
自分に合わない人をじわじわと排除して、周囲を多数派にしてしまえば、狭い世界で自分の地位を築くことはできる。しかし、就活のような、自分の主観だけではどうにもならない場面では途端に馬脚を現してしまうということなのだろう。
周囲を味方につけて、自分の成したいことに利用するというのは人生における立派なスキルなのだと思うし、振り返ればこの僕は今までの人生で、味方をつくることには数多く失敗してきてむしろ無用な敵対を生んでしまったなと、今更ながらに恥ずかしい思いがしてしまう。
ただし、敵対などといっても、突っ張る理由がなくなればその緊張なり結束なりは弛緩してしまうわけで、思い込みや偏見が解けた時に他者を冷静に見据えて理解する一歩を踏み出すこと、すなわち、苦手、嫌い、分からない相手と、文字通り対話しようと踏み出すことがコミュニケーション能力なんじゃないかと思っている。
僕は学生の頃余り仲が良くなかった人とも今ではメールや年賀状のやり取りがあったりするんだけど、過去は過去として、今の相手をちゃんと見ていられるのはお互いにとってハッピーだと思っている。他人を何とか悪く言おうとしても、いい加減飽きますわな。
オチのある話をするのが旨いとか、相手の話題に乗ってくれることがコミュ力だというのならば、就活で全滅なんていう憂き目に遭うこともないわけで、就活の面接に連戦連敗するのはコミュニケーションの定義を取り違えているから、もっと言うと相手が望んでいるものを理解しないから、自分が間違っていることに気づかないからなのだとつくづく思う。