ストーリー14 夢の実現を目指すサクラさん
サクラさんは小さな会計事務所に勤める二十代の女性です。彼女には大きな夢があります。それは中学生の頃から続けているダンスにもっと磨きをかけることでした。将来、ダンスを教えるクラスをもちたいと願っています。今はレッスンに通い、仕事をしながらお金を貯めています。年に二、三回は、ロサンゼルスの先生のところでもレッスンを受けています。
ところが、ダンスのために時間を取ることがなかなか難しくなってきました。というのもサクラさんは頼まれると断れない性格で、どうしても自分のことを後回しにすることが多くなってしまうのでした。職場でもそうです。小さな事務所ですからこまごまとした仕事が次々に出てきます。頼みやすいサクラさんのところにまわってきます。時間が余計にかかってしまい、定時で退社すればギリギリ間に合うレッスンに行けないことが続くようになりました。
家族には、ダンスを趣味にしていることは理解されています。でも、将来それを仕事にしたいとまでは話していません。そろそろダンスはほどほどにしなさいと言われます。週末は、買い物で車を出してほしいなどと頼まれます。週末こそはバッチリ練習できるはずなのに、それもかないません。
友人にはずっと恵まれてきました。ダンスを通じた良い友だちもたくさんできました。でも気がついてみると、みんなのお世話ばかりが多くなっています。ステップを教えてほしい。グループの取りまとめをしてほしい。せっかくダンスのクラスに行っても、自分のために踊る時間が減ってきてしまいました。
ロサンゼルスのダンスの先生が、サクラさんの様子を見かねて声をかけました。
「あなたは、みんなにイエスと言って、自分の夢にノーと言っているんだね。すべての人を満足させることなんてできないよ。いまのままなら、ダンスの夢はあきらめなさい」サクラさんの心にぐさっと刺さる言葉でした。
それ以来、サクラさんは変わりました。みんなより早く出勤し、仕事をすみやかに片付けるように努力し始めました。「今日中にという仕事はありませんか」と午前のうちに尋ねるようにしました。家族には、ダンスを仕事にしたいと話し、週末はダンスに専念したいとお願いしました。弟が両親のために車を出して買い物に行ってくれることになりました。ダンスの仲間のためには、ミニクラスを開くことにしました。将来、自分が教えるためにも良い経験です。みんなも喜んでくれました。
「すべてのことはできないけれど、やるべきことはやっている」
みんなに応援してもらって夢の実現を目指していることを感謝するようになりました。