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第8章 考え方4 十分に受ける者こそ与えることができる

与え続けるための条件

仕えるとは与えることです。しかし、与えることは容易ではありません。
サーバントが喜んで与え続けるためには、三つの条件が必要です。

まず、与えるものを持っていることです。無いものを与えることはできません。お腹を空かせている人にパンを与えるためには、手元にパンがなくてはなりません。もっと言えば、パンをたくさん持っていることが必要です。自分の分しかないのに与えれば、自分の分を減らすことになります。一時的には可能ですが、長い目で見るとむずかしい状況を招きます。与えるためには十分な量を持っていることが必要です。

次に、与える気持ちがあることです。人は自分の持ち物を自分の所有物だと認識しています。手放すことに抵抗があります。与えようか、どうしようかと葛藤が生じます。抵抗や葛藤を乗り越えて与えるには、積極的な理由が求められ、動機づけが必要となります。あえて与えることを選ぶ意思が必要です。

さらに、長く続けるためのしくみが必要になります。気まぐれで一時的な支援では不十分です。与える物と心の両方が豊かであり続けるためには、ものを生み出し、無理なく協力関係が広がるしくみが必要です。

不完全なサーバント

そのようなものが求められる一方で、サーバントは自分自身が不完全な存在だと理解しています。助けを受けながらでしか、人を助けることができない者です。どうやっても完全に助けること、仕えきることはできません。与え続けるために必要となる三つの条件をすべて自分の力で用意することは無理です。貢献できることで関わり続けているだけなのです。

援助者は自分が万能だと思い込みやすく、相手を助けなければいけないと気負いがちです。他人の人生を必要以上に背負い込み、苦悩します。メサイヤ・コンプレックスといわれるものです。万人を救う救世主になれれば、誇り高く喜ばしいことです。ただ実際は救世主ではありえないので、不完全な自分を責め、焦燥感に駆り立てられます。必要以上に自己を正当化したり、承認を求めたりするようになります。

サーバントは不完全な援助者です。自分も多くの助けを必要とします。一方で「助けが必要だ」と表明すれば、弱みを見せることになります。不利なことも出てくるでしょう。それを承知の上で、周囲からの助けの必要を認め、信頼して助けを求めます。

与えるためには受けることが必要

サーバントは不十分さを自覚し、与え続けるために必要なものを補充します。自分がよい状態を保てるように心がけています。自己管理は自分の責任です。気力は維持されているだろうか、体力は失われていないだろうか、人間関係にゆがみが生じていないだろうか。スケジュール、体調、精神状態、お金など、管理すべき面はいろいろでしょう。ガソリンのメーターが空に近づけば、急いでガソリンスタンドに立ち寄って給油するように、自分に不足するものがあると気づいたら、すみやかに補って充たすことが必要です。不完全ではありながらも、それなりに最善の状態で関わることができるように、サーバント自身が整えられる必要があるのです。

与えるものを十分に持っていないときには、他の人の協力を求めて、与えるものを用意する必要があります。与え続ける気持ちが薄れるときには、励まし合う仲間、志を同じくする人と歩みをともにすると良いでしょう。持続可能なしくみが不完全であるならば、経験者や知恵ある人たちの助けを借りて整えることになります。

強がらず、素直に助けを求めることは、サーバントにとって最も大切なことのひとつです。そもそも、人はひとりで生きる存在ではありません。神がそれぞれのためによいものを与え、人はお互いにそれを用いて助け合う関係の中に生きています。与えるために喜んで受けることが、すべての出発点です。

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中澤信幸「等身大リーダーシップ」コーチ
ほめられると調子に乗って、伸びるタイプです。サポートいただけたら、泣いて喜びます。もっともっとノートを書きます。