第6章 考え方2 どんなことでも人のために用いられる
与えるために任されている
人生の目的は仕え合うことで、他者と競争して勝つことではありません。
競争は、自分と他人との比較です。多くのものを手に入れることによって、他人より優位な立場を得ることができます。たとえば、経済的にうるおっていれば、自分も満足できるでしょうし、人からも羨ましがられるでしょう。良い業績をあげれば、評価されて、仲間より早く昇進することができるでしょう。素敵な洋服を着て、好きなところを旅行し、仲間と楽しく過ごして「いいね」をたくさんもらえれば、優越感に満たされます。そうやって、自分のために人より多くのものを得ようとするのが競争です。
しかし、サーバントは自分のために得ることで満足しません。人を富ませようとします。自分が手に入れたものを与えることによってです。
この世には多くのよいもの、私たちの心を満たすもの、すてきなものがたくさんあります。ふさわしく活用すれば、相手を幸せにするために役立てることができます。サーバントは、自分が手にするものは活用するために任された預かりものなのだ、と理解します。
与えられているいろいろなもの
「私は特別なものを持っていない」
「人のために役に立つものなど何もない」
という声が聞こえてきそうです。特別なものでなくても、どんなものでも、人のために用いることができます。
・たとえば、経験です。一人ひとり違う人生を歩んでいます。まったく同じ経験をしてきた人はいません。特別な成功でなくても、それぞれのユニークな経験だからこそ、助けになれることがあります。失敗談を語ることで同じ過ちをしないように助言できるでしょう。同じような経験談は安心感を与え、心の支えになるでしょう。
・技術で人を助けることもできます。その人にしかできない技術を利用して、できなかったことをやってもらえたら、大きな助けになります。
・人には違った能力が与えられています。それぞれの強みとか、長所と言われることも含みます。関わってくれることによって、グループの力が一回りも二回りも大きくなることでしょう。
・人間関係も用いることができます。助ける人を紹介する、人と人とをつなげる役割はとても大きなものです。たくさんの人を知っている、頼める人がいるというのは、自分が助けになれる以上のことを成し遂げることができます。
・時間も用いられます。人のために時間を提供することです。何か特別なことをしなくてもよいのです。隣に一緒にいて時を過ごすことが、どれほど大きな助けになることでしょう。孤独をいやし、力を与え、勇気づける働きをします。
・アイデアで人を助けることもできます。豊かな発想によって、視野を広げることができます。違った角度から考えてみることを促します。いろいろな可能性があることがわかれば、余計なこだわりを捨てることもできるでしょう。八方ふさがりの袋小路のように思えても、実は道が開けていることを示せば、それも大きな助けになります。
・財産も人を助けることのできるものです。物事を動かしていくために資金が必要になる場合も多くあります。お金がなくて身動きがとれないという人も少なからずいます。奨学金や支援金などは、足かせとなっている経済的な要素をクリアするために有益です。
・知識も人のために役立ちます。専門的な知識は、見えない世界を見えるようにします。ものの道理や仕組みを明らかにします。理解が進み、新たな展開を生み出すことにつながるでしょう。ノウハウをアドバイスすることで、もっと効果的に成果が上がるでしょう。
あたたかい気づかい、力ある立場、率直な言葉、その他のあらゆるものが人の助けになります。すべてのものは道具として用いられます。自分のためだけに使うのか、人を傷つけるために使うのか、それとも人を助けるために使うのか、それはあなた次第です。
サーバントは、生きる目的が誰かを笑顔にすることだと自覚しているので、あらゆる良いものを惜しみなく人のために用いるのです。