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ストーリー06 動かない身体でブログを書くエミさん

エミさんは、自分の身体を思うように動かすことができません。大学生のときに交通事故にあってしまったからです。事故直後は、死んでしまうかもしれない、という恐怖の中にありました。しかし、一命をとりとめます。結果として、首から下の身体が動かず、言葉もうまく話せないという生活を強いられることになりました。

「なぜこんなことになってしまったのか」
「自分には何もできることがない」
「生きている意味がない」
「いっそのこと死んでしまったほうがましだった」

毎日絶望の中で生活していました。心は荒れ果て、人を呪い、自分を呪うような思いばかりでした。

ところが、リハビリで出会った理学療法士さんが
「ひとつできることを見つけましょう。そうしたら、絶対に生活が変わりますから」
「私は、エミさんの人生にも意味があると信じていますよ」
口癖のように言い続けてくれました。

最初は、その言葉が受け入れられませんでした。でも、熱心さにつられて、リハビリに一生懸命に取り組むようになりました。その結果、あごを使ってかろうじてコンピュータで文字を入力できるようになりました。これが、まさにエミさんの生きる希望になりました。

一日に入力できる文字数は、必死にがんばっても百文字程度。最初は、うらみ、つらみの思いを言葉にしていました。そのうち、限られた文字数を絶望の言葉に費やすことがむだに思え、誰かに何かを伝えたい、と願うようになりました。そしてようやく「いま私が感謝していること」というブログの公開にこぎつけたのでした。

感謝の内容は他愛のないものです。窓から見える風景、看護師さんのひとこと、思いついたダジャレ、お見舞の人との会話など。他の人々の充実した生活とは比較にもなりません。それでも、エミさんだからこそ抱く感謝の一つひとつは、読者の心をとらえました。次第に多くの人が再訪して読んでくれるようになり、コメントが届くようになりました。

理学療法士さんの言っていたとおりでした。ひとつできることを見つけたら、人生が変わりました。何もできることがないと嘆いていたのに、いつの間にか大勢の人の心をやさしくする人になったのです。エミさんは、「あきらめなくてよかった」としみじみ思っています。

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中澤信幸「等身大リーダーシップ」コーチ
ほめられると調子に乗って、伸びるタイプです。サポートいただけたら、泣いて喜びます。もっともっとノートを書きます。