ストーリー25 家族を大切にするニノさん
ニノさんは、家庭をもつ男性です。念願の仕事についたニノさんはやりがいをもって毎日仕事に励んでいました。朝早く起きて出社し、誰よりも遅く帰る生活が続きます。それでも何の苦にもなりません。
あるとき会社の研修で、「7つの習慣」 という本のワークをするように宿題が出されました。葬式のとき、自分がどういう人物としてまわりの人から思い出されるかを想像して書く、という内容でした。
職場の同僚が、頼れる仕事仲間だったと話す様子を想像してみることは、難しくありませんでした。取引先の人たちが、信頼して任せられる商売相手でしたと語ってくれる姿が目に浮かびます。ところが、家族からのことばだけが、さっぱり浮かんできませんでした。
そんな矢先、子どもが学校で友だちに怪我をさせたと連絡が入ります。たまたま休みで家にいたニノさんは、学校に行きました。担任の先生から今回の事情やふだんの学校生活の様子を聞き、子どものことを何も知らなかった自分に気づかされます。うちの子には何も問題がないとばかり思っていたのです。
「あなたは家族に関心がないから」
妻の一言に、ぼうぜんとしました。
ワークの宿題のことが頭に浮かびました。
「仕事に一生懸命で、家族には関心のない人でした」
いま自分が死んだら、家族はそう語るだろう。いくら仕事で仲間やお客さんを大切にしているからといって、こんな人生ではよいはずがない。
その晩ニノさんはワークの用紙を取り出して、妻の言葉をこう書き上げました。
「夫は、家族より仕事が大事と考えていたようです。でも、あるときから変わりました。時間をつくって家族とのときを過ごすようになり、子どもにも私にも、『どうしてる?』と声をかけてくれるようになりました。必要なときに助けになってくれる、頼りがいのある存在でした。家族に対して、精一杯に心を込めて向き合ってくれた夫は、私の誇りです」
ニノさんは、この用紙を手帳にはさんでいます。定時退社をすると決めた毎週水曜日、帰りの電車の中でいつも読み直します。家族の信頼を取り戻すには、まだまだ時間がかかりそうですが、ニノさんはすがすがしい思いで生活しています。
ほめられると調子に乗って、伸びるタイプです。サポートいただけたら、泣いて喜びます。もっともっとノートを書きます。