ストーリー15 忠実に仕え続けたヨセフ
旧約聖書に、ヨセフという人が登場します。父ヤコブには妻が二人いて、それぞれに女奴隷たちがいました。この女性たちから十二人の息子たちが生まれました。イスラエルの十二部族を構成するようになる兄弟たちです。下から二番目がヨセフでした。
ヨセフは、父ヤコブが最も愛していた妻ラケルとの間に、長年の苦悩の末に生まれた子でした。他の兄弟に比べ、あからさまにえこひいきされて育ちました。兄たちはおもしろくありません。ヨセフをねたみ、憎んでいました。
ヨセフが十七歳のころです。父のもとでかわいがられて生活していました。用事を頼まれ、野にいる兄たちを訪ねます。兄たちは結託し、エジプトに下る商人たちに奴隷として売り飛ばしてしまいます。ヨセフは独り家族から切り離され、エジプトで奴隷生活を強いられるようになりました。
エジプトでの奴隷生活は、これまでの生活とはまるで違うものでした。役人の家のしもべとして、苦労しました。しかし、ヨセフは忠実に仕え続け、新しい主人の信頼を得ました。多くのことを任されるようになりました。
ところがヨセフの優れた能力と整った容姿があだになります。なんと主人の妻が彼を見そめて、自分と寝るように誘惑したのです。妻は主人の目を盗んで言い寄りますが、ヨセフはかたくなに拒否します。それに逆上した女主人は「あの男が私と寝ようとした」とあらぬ言いがかりをつけます。主人はひどく怒り、ヨセフを牢に入れてしまいます。それまで仕え続け、信頼を得てきた歩みは一瞬にして失われてしまいました。
牢獄でも、ヨセフの姿勢は変わりません。いつでも、どこでも、どのような状況でも、仕え続けました。監獄長はその姿を見ていました。すべての囚人をまとめて世話する役割を任せるようになります。聖書は、神がヨセフとともにおられたことを強調しています。
王の献酌官と調理官が捕らえられてきました。王の怒りをかって投獄されたようです。ある朝二人がイライラしているので理由を聞くと、どうやらわけが分からない夢を見て胸騒ぎがしている様子です。ヨセフは夢を説き明かしました。献酌官の夢は、やがて王の元に戻れるという夢でした。調理官は王に処刑されるという夢です。はたして夢はヨセフの説き明かし通りに実現し、調理官は処刑され、献酌官は王の元に復帰しました。
「私を思い出して、ここから出られるようにしてください」
ヨセフは献酌官に願っていましたが、すっかり忘れられてしまいます。その後なお二年間牢獄に留まりました。それでも、小さなことに忠実に取り組み、囚人たちの世話をし、監獄長に信頼される歩みを続けました。
二年が経ったとき、王が不思議な夢を見ました。国の危機にまつわる重大な夢のようです。ついに献酌官はヨセフのことを思い出します。推薦されたヨセフは、王の不思議な夢を見事に説き明かし、これによって全エジプトは飢饉の危機を免れることができました。
こうしてヨセフは王の信頼を得て、エジプトの全土を支配する者になります。王に次ぐ地位です。エジプトに奴隷として売られてから実に十年以上経ってのことでした。家族から遠く離れて、与えられた場所で、神への信頼を失わずに、仕え続けてきた結果でした。