第7章 考え方3 未来と自分は変えることができる
変えられないことをあきらめる
私たちには、変えられることと変えられないことがあります。変えられないものは過去と周囲であり、変えられるものは未来と自分です。
過去はすでに起きてしまったことです。巻き戻しボタンを押してやり直すことはできません。もしあの時こうだっ『たら』、そのときこうしてい『れば』、という「たら・れば」は、現実には起こり得ないことです。
ある人は、「たら・れば」は世界一広い川の向こう岸だ 、と表現しました。世界一広い川幅はアマゾン川だそうです。河口の幅は三百キロにも及びます。もはや川と呼ばれる範囲を超えています。「たら・れば」の川の向こう岸はそれよりもさらに遠く、決して行き着くことができないものである、とイメージするとよいでしょう。
過去だけではありません。周囲の人々も変えることはできません。できれば周囲の人々を自分の思ったとおりに動かしたい、と願うことがあります。しかし、無理やり力ずくで動かすことはできません。同意して、納得しなければ、人は動かないのです。
周囲の人たちの歩みは、私のコントロールできる範囲の向こう側にあります。自分の歩みと他人の歩みとの間には一本の線が引かれているとイメージするとわかりやすいでしょう。線のこちら側は私の領域で、自分の自由にできる範囲です。ただし、線の向こう側は私の領域ではなく、私が自由にできない範囲です。線の向こう側のことを無理に動かそうとすると、ひたすらエネルギーを使い、消耗することになります。こうなって欲しい、そのとおりにならない、どうしたらいいか、どうすることもできない、でもこうなって欲しいの繰り返しです。線の向こう側のことはコントロールできない、と割り切ることが必要です。
変えられることに取り組む
一方で、線のこちら側、つまり自分の範囲は自由に扱うことができます。自分が何を見るか、何を知るか、どう決断するか、どう行動するか、などについてはコントロールが可能です。主導権は、自分自身にあります。
変えられる自分の範囲を自覚して取り組むならば、結果として未来を変えることができます。未来は、未だ来ぬ現実です。過去の上に、現在を経て、いまから積み重ねられるものの結果として実現します。自分の判断と行動によって、未だ来ていない未来は十分に変わる可能性があります。
ですから、サーバントは自分の範囲内のことに取り組み、よい未来を創ることに集中します。自分の範囲外のことにエネルギーを浪費せずに範囲内のできることに焦点を合わせゴールを目指します。
残念ながら、目指すべきゴールがわかったからといって、すぐに自動的にゴールに着くことはありません。一歩一歩、足を踏み出して進んだ結果として、ゴールにたどり着きます。時間をかけて、地道な一つひとつの行動を積み重ねることが必要です。
また、反対の方向に足を踏み出しながら、ゴールに行き着くこともありません。一歩一歩が、正しい方向に進むことが必要でしょう。正しく判断し、ふさわしい行動を見出し、実際にそれを実行することが求められます。
サーバントは、過去の結果や周囲の状況の犠牲者になりません。いまある現実を引き受けることが必要です。その上で、置かれている状況を打開する開拓者として、過去の支配を打ち破る勝利者として歩むのです。自分の範囲をわきまえつつ、できることに自ら取り組んでいくことによって、未来を造り変える英雄になる。それこそがサーバントの歩みです。