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解説)首すわり前の赤ちゃんの素手の縦抱っこ
首すわり前の赤ちゃんの縦抱っこについて、いろいろ書いてきました。
では、どんな縦抱っこがいいのか、ということについての記述はまだまだ少なかったように思います。そこで、今回は、首すわり前の赤ちゃんを素手で抱っこする方法をご紹介します。首すわり前の赤ちゃんは基本、素手で横抱きで抱っこするものです。この間、縦抱き用の抱っこ紐は不要です。縦抱きの場合は特に素手でしてくださいね。
デンマーク在住の澤渡夏代ブラントさんが、首すわり前、特に、新生児の素手の縦抱っこのわかりやすい動画を紹介して下さいました。4分弱の短い動画ですので、どうぞご覧ください。
デンマーク語ですが、youtubeの機能を作って、日本語字幕を付けることができます。「設定」→字幕→自動翻訳→日本語 あるいは、字幕→日本語 にします。
できる人にとって自然な動作を、全くわからない人に言語で説明するのは、意外と難しいものです。
特に、手の置き場所(肩甲骨)、指や手のひらの使い方、そして腕の使い方までは、なかなか説明していない場合が多いのではないでしょうか。
動画だと、肘の締め方、肩の力の抜き方などの微妙なところにも注目できますね。
この動画は、私が首すわり前の赤ちゃんを抱っこするときに無意識にやることを丁寧に説明してくれています。この助産師さんの説明は、他の動画も参考になると思います。もしかしたら日本のプロの方も、この動画を知ったら、真似するかもしれませんね!!
さて、この動きを、抱っこ紐で再現できるか、というと、抱っこ紐がロボットに進化するまで難しいのではないか(皮膚を通じるぬくもりや呼吸や鼓動まで人間化するのはいつでしょうか)と思います。何しろ、赤ちゃんと大人との阿吽の呼吸(調律といいます)(しかも、双方が日々成長し学習していく状況)を、プログラミングしなければならないのですから、商品として大量生産して販売できるものではないと思います。そもそも、自分や自分の子ども、孫、子孫が、生まれてすぐにロボットに抱っこされて育ったという状況はあまり考えたくもないです(笑)。
さて、デンマークでは抱っこひもを使う習慣がほとんどなく、素手でなければ、ベビーカーやカーシート(時には大きなかご付き自転車)を使っての移動となるので、日本のような抱っこ紐の問題は生じていないようです。そもそも、北欧は、基本的にベビーカーが大きいし、そのベビーカーでそのままエレベーターを使ってホームに行って、電車にも乗れるし(何しろ、大きな自転車でそのまま電車に乗れる国々です)、かつて、ノルウェーでですが、日本でもかつて使われていたような乳母車を近年見かけたくらいです。
でも、アメリカやカナダ、フィリピンやドイツなど、おそらくかつては抱っこ紐を使う文化がなかった海外の国々でも、近年は抱っこひもで縦抱っこする姿を見かけます。国際学会などを通じて、正しい情報が広がるといいのですが、現在は必ずしもそうではないようです。
さて、縦抱っこは、心臓の鼓動が聞こえるから横抱っこよりもいい、という主張は、縦抱っこを推奨する方からしばしば聞かれます。これは、カンガルーケアの発想から来ているものと思われます。でも、カンガルーケアは、未熟児や早産児のケアから始まったものですし、裸での母子接触で15度程度体を起こした状態がいいとされているものですので、正常出産の赤ちゃんが服を着た状態で通常の寝床でする似たような縦抱っこ(母子早期接触)を同じものとみなすことはできないように思います。
そして、実は、心音は、横抱っこの方がよく聞こえるようなのです。
横抱っこの場合
・赤ちゃんの耳が母親の胸の側面や中央付近に密着しやすく、心音をダイレクトに聞き取りやすい姿勢です。
・心音は比較的近くで響き、胎内で聞いていた音に近いと感じる可能性があります。
・落ち着きや安心感を与えやすくなって、新生児には特によいと考えられます。
縦抱っこの場合
・赤ちゃんの耳が母親の鎖骨付近や胸の上側に位置することが多く、心音はやや遠く、横抱っこほど直接的には伝わりにくいかもしれません。
・母親の呼吸音や声、振動、ぬくもりを感じることで十分な安心感を得られると考えられます。成長した赤ちゃんには、よいと考えられます。
また、肩に頭を載せるような縦抱っこでは「直接、心音が聞こえる」ということはありませんので、心音を聞かせるということであれば、胸のところでする縦抱っこということになるでしょう。
もちろん、上の動画にあるようなしっかりとした縦抱っこが素手でできるのであれば、縦抱っこも問題ないでしょう。
新生児は基本、寝床で横になって寝ているものですが、たまに抱っこをしたときに、しっかりと縦に抱っこされるとか、双子を両方を縦抱きにするとか、いろいろな状況があります。子育ては、母の味の料理と同じで、大匙何杯というような指示が難しくて、いわゆる一つまみというような塩梅(塩加減)でするものですから、あれがいいこれがいいというのは難しいのです。
でも、絶対にこれはダメでしょう。赤ちゃんの発達を阻害して、一生の流れを変えます、というようなことが起きていたら、注意を促しておく必要があると思います。
どうか、よい塩梅の素手の抱っこを身につけていただけますように!!
動画のご紹介がお役に立てば幸いです。
※ 写真は、生まれたばかりの赤ちゃんの足。ここからだんだん自分の体を支えられるように発達していきます。色が紫色なのは、生まれた直後だからです。ここからだんだん色が変わっていきます。
(最近は、縦抱っこによって、手足の血流に問題が生じ、チアノーゼになっている赤ちゃんが増えてきていて心配ですね)
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