EdTech(エドテック)でつながる学び 【週刊新陽 #59】
先週、日本最大の教育分野の展示会「EDIX(エディックス)東京」が開催されていました。教育関係者の方々で参加された方も多いのではないでしょうか。
残念ながら私は行けなかったのですが、プログラミングやSTEAM関連の教材、VRのデバイス、新しい端末やツールなどがたくさん出て盛り上がっていたようですね。
参加した友人からは、コロナで加速したGIGAスクール構想が実際にどう進んでいくか、学校外からの注目の高さも感じる3日間だったと聞きました。
Inspire High 体験授業
EDIX東京開催期間中の5月12日(木)、新陽高校では「全道GIGAスクール研修会」と題した公開授業を実施し、1年次の生徒全員がInspire High(インスパイア・ハイ)を体験しました。
Inspire Highは、世界中の創造力と自分をつなぐ10代のためのオンラインプログラム。世界中で活躍するインスパイアリングな大人(ガイド)から、多様な生き方や価値観、仕事、社会課題に触れることができる、他にないEdTechプログラムです。
ガイドからの「本物の声」もすばらしいのですが、その後に、子どもたちが自分で考えたり、他の10代の考えに触れたりできる設計になっているのもInspire Highの特徴。
今回、新陽では「メキシコの失敗研究者と考える、失敗ってこわいもの?」のセッションを活用したスペシャルプログラムを実施していただきました。
オンラインプログラムを集団でやる意味
今回の体験授業の流れは、
1. ガイドのペペ・ヴィラトロさん(メキシコの失敗研究者)の動画視聴
2. アウトプット
3. フィードバック
4. リフレクション
というInspire Highの通常のプログラムに加えて
5. テーマ別のディスカッション
6. グループでのディスカッション内容の共有
のトータル110分(休憩含む)です。
1年全員(230名)が8教室に分かれ、プロジェクターで投影しながら全員でガイドトークの動画を見て、アウトプットなどのワークは各生徒の端末で行う、というオペレーションだったのですが、スタートと同時にトラブル発生。ネットの接続状況が悪く、動画がカクカクしてしまったり音声が途切れたり、生徒の端末の中にも動作がかなり遅くなってしまったものが出てしまいました。
事前に接続テストとオリエンテーションをしていたのですが、テスト時のあと全体の流れを考えて少し運用を変更したことが裏目に出ました・・・。
それでもなんとか対応しながらガイドトークがスタート。各教室では先生のサポートを受けながら、字幕に映されるペペさんの言葉を聴き取ろうとする生徒たちの姿がありました。
動画が終わるとアウトプットの時間。Inspire Highのセッションでは、生徒が自ら考え、自身の考えを表現するパートがあります。
興味深かったのが、アウトプットの時間になるとみんなが少し前傾になりだしたこと。ネット接続トラブルでの動画の見づらさなどから集中力がもたないかな・・・と心配したのですが、少し操作に戸惑う生徒も先生に聞いたり隣の友だちに助けてもらったりしながら、「自分の失敗エピソード」について投稿していました。
続くフィードバックの時間では、新陽の生徒を含む全国の10代からの投稿へコメントを書き込むのですが、この時、画面を見せ合いながら他の子のアウトプットやフィードバックコメントについて感想を言い合っている様子がたくさん見られました。
ICTを使った双方向の学習体験が可能になるEdTechですが、オンラインのアプリケーションを通した対話だけではなく、リアルな対話も活発になることを発見。
Inspire Highは、「将来の人生に最も影響を受けやすいこの期間に、さまざまなインスピレーションを手にしてもらいたい。」という願いのもと開発されているそうですが、まさに、世界中の多様なガイドのトークから、全国の顔も知らない同世代のアウトプットから、そして隣にいる友達から、様々な角度でインスパイアされるプログラムになっていると感じました。
ちなみにプログラム終了後のリフレクションの投稿率は97%!多くの生徒が主体的に取り組めたように思います。
***
今回の特別体験授業では、Inspire Highオリジナルの動画プログラムに加え、リアルタイムの対話を組み合わせました。
教室ごとにテーマを決め、4〜5人でディスカッション。前半で自分の経験や考えと向きあい、いろいろな同世代の声にインスパイアされているので、かなり活発に意見が出たようです。
最後に、いくつかのグループの生徒による全体共有があり、体験授業は終了しました。
高校GIGAスクール元年
全国の小中学校で昨年度スタートしたGIGAスクール構想が、高校でも今年から始まりました。
GIGAスクールというと「1人1台端末」というイメージが強いかもしれませんが、「GIGA」は「Global and Innovation Gateway for All」の略。「全ての児童・生徒のための世界につながる革新的な扉」としてICTを活用できるようにしよう、という取り組みだと理解しています。
新陽では、2016年から教員が、2017年から生徒も1人1台の端末を使っています。当初はiPadでしたが、2018年からは生徒も教員もChromebook。今では授業中にChromebookを使うのは当たり前になっています。
ICTを活用した授業実践に力を入れ、これまでもその実践紹介のための全道ICT研修会やSHINYO Online Salonを開催して、通算400名近くの教育関係者の皆様にご参加いただいてきました。
高校GIGAスクール元年を迎え、新陽でも「生徒が自分らしく生きるための探究的な学びにICTをどう活用するか」という視点を持って、あらためて取り組みを実践研究していこうということになり、今回の授業もその一環です。
これまでもICT研修会を担当してくれていた安齋先生が各所へアナウンスしたところ、40名近くの方から参加申し込みがあり、関心の高さを感じました。オンラインでの参加も多かった中、近隣の中学校や高校の先生が来校してくださり、プログラムを体験する生徒の様子を間近で見て、興味津々。見学している最中も公開授業後も、新陽の先生たちへの質問が止まらなかったようです。
何かと新しいことに取り組む新陽は、近年は企業だけでなく研究者の方ともつながる機会に恵まれています。その機会を本校だけに閉じるのではなく、広く教育関係者の方にもご参加いただくことが結果的に多くの子どもたちに還元することになると思い、今後も可能な限り公開していきます。
なお、5月31日には東大名誉教授の佐藤学先生をお迎えし、「学びの共同体」をテーマにした授業研究会を行います。来校していただいても、オンライン視聴でも可能ですので、ぜひご参加いただけたらと思います。