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学び合う生徒を支える学び合う教員であるために 【週刊新陽 #159】

5月も中旬に入り、急に日差しが強くなってきました。札幌にいると本州よりも紫外線が強く感じるのは、急に初夏らしくなるからなのか緯度のせいか・・・。

登校してきた生徒を迎える木漏れ日もはっきりくっきりしてきたような気がします。


授業研究会を公開する理由

5月9日(木)、今年度最初の公開授業研究会を開催しました。

新陽では1〜2ヶ月に一度のペースで授業研究のための研修を行なっていて、そのうち数回は外部講師をお招きする形式です。毎回素晴らしい講師の方々が来てくださるので、この貴重な機会を本校だけに限るのはもったいないと思い、広く公開しています。

参加者は、近隣の中学校や高校の先生方、教育学部の先生や大学生、遠方からわざわざお越しくださる方など様々。今回も、多くの方に参加いただきました。

午前中は1〜3年次すべての授業を公開。講師の佐藤学先生と守屋淳先生、外部参加者の方々、そしても新陽の先生たちも、いつもと変わらないそのままの授業を見て回ります。

新陽の授業研究会は「いつも通りの授業をすること」というポリシーがあり特別な授業はしません。単元も、たまたまそのタイミングでやる予定だったところをやります。

協議会に向けた研究授業も、あくまでも協議会で共通の話題とするための指定に過ぎず、毎回、授業研究会のテーマ(今回は『学びの共同体』)について自らチャレンジしている先生に教務部が依頼し、いつも通りの授業をやってもらいます。

今回引き受けてくれたのは地歴公民科の山下先生。科目は『倫理』で、2・3年次合同授業(2年でも3年でも選択可能)という新陽ならではのクラスです。

とは言え、大勢のお客様が教室に入って見学したり
記録を撮ったりするので、生徒はいつもと違う
雰囲気を察して少し"よそ行き"の態度になります。

変化に気付き課題を見つける

研修を外部に公開する理由がもう一つあります。それは、学校の現状に対する客観的な視点です。

佐藤学先生をお招きして行う『学びの共同体』の授業研究会は、今回で3年目となりました。新陽では、2021年から北海道大学大学院教授の守屋淳先生にご指導いただき、2022年5月31日には『学びの共同体』の提唱者である東京大学名誉教授の佐藤学先生を招聘し公開授業研究会を開催。

その頃、職員室になんとなくあったのが「このままではいけない」という雰囲気でした。それまで色々と学校改革に挑戦してきて、その成果や外部評価もありながら、授業のあり方や生徒との関わり方はそれぞれの先生の経験値に頼っているのが実情で、新陽の一つの特徴である「生徒に親身であること」も授業を通してというよりは個々の関係性によるところが大きかったような気がします。

学校は学ぶところ、生徒は本来「学びたい」と思っている、と考えた時に、私たちがやらなければいけないのは授業改善だということは明らかでした。

そんな中で実施した2022年5月31日の公開授業研究会で、佐藤学先生から、新陽の現状について厳しい言葉をいただきました。でも今思えばそれは大きなエールだったと思えるのですが、その時のショックは忘れられません。

でもこういう時、ただ言われたままになっている新陽の先生たちではありません(笑)。次の日、多くの先生が動きました。その後も、まずはやってみる、そして考える、この繰り返しをやってきた2年間だと思います。

2022年5月31日に公開授業研究会を実施。そして
翌6月1日から『学びの共同体』への挑戦がスタート

佐藤学先生も仰っている通り『学びの共同体』は哲学であり、新陽も『学びの共同体』のハウツーを取り入れようとしているのではありません。だからこそ、授業改善はイベントではなく日々の取組であり、自分では良くも悪くも変化に気付きづらい、ということがあると思っています。

自分たちが一度立ち止まり、取組を見つめ直すのが研修の目的ではありますが、それは内部の人間だけではなかなか難しいもの。そこで、外から講師の先生に来ていただくだけでなく、他校の先生方にも参加いただくことで、フィードバックや質問から新陽の成果と課題に気付くことができます。

今回も、参加くださった他校の先生方からも多くの反響がありました。その一部を紹介します。

生徒が学びに向かう素敵な姿をたくさん見ることができ、生徒一人一人の頑張りと先生方が行なっている生徒に寄り添う指導の成果ではないかと感じました。 様々な背景を持っているであろう生徒たちが学校に来て、笑顔で学び合っている姿は良い意味で大きな衝撃を受けました。「与える教育観」ではなく「支える教育観」とは、どういうものなのかを授業を通して学ばせていただきました。

2年前に学校見学をさせていただいた当時1年生だった単位制1期生が3年生になり、着実に学びに向かう姿に出会えたこと感動致しました。これまでの学校のあり方にとらわれず、生徒一人ひとりの生き方や学びにフォーカスし続ける場となってきていることが伝わってきました。ここまで、スタッフの皆さんが学校をつくっていくにあたって蓄積した力も相当なものに違いないと推察致します。

佐藤学先生からも「山下先生は、子どもと教材と教育に対する誠実さがある素晴らしい先生です。生徒が学び合うために授業で取り入れているアプローチに、学ぶべき点がいくつもありました。」「新陽高校には3度目の訪問になりますが、毎年ぐんぐん前進しています。生徒たちの変化が著しい。先生方の授業に対する真摯な姿勢も素晴らしい。」と褒めていただきました。

2021年度から見ていただいてる守屋先生からも「着実な変化が子どもたちにも先生にも起きていると感じました。」とコメントいただき、素直に、とてもとても嬉しかったです。

もちろん、進歩したからこそ課題も出てきて、協議会で他校の先生からご意見をいただいたり、講師の先生方の講演でもご指摘があったりしました。私たち自身が感じていたことも、気付いていなかったこともあり、これらの課題にしっかりと向き合い、ここからまた一歩一歩取り組んでいきたいと思います。

「学びの専門家」となるための対話

週が明けて、5月14日(火)は『中つ火を囲む会』。せっかくのタイミングなので公開授業研究会を受けて対話することにしました。

今月は、いつもリモートでファシリテーションしてくださる福田さんと熊平さんのご都合がどうしても合わなかったので、私がメインファシリテーターです。

リフレクションのフレームワークやシステム思考の視点を入れながら、2年間を振り返り、お互いの価値観を共有しながら、この先の取組に向けたワンアクションを宣言する、という流れで進めました。

チェックイン「自分を無知と感じたのはどんな時?(山下先生の研究授業内で生徒が考えた問いを引用)」
対話1、『学びの共同体』に取り組んで2年、どんな変化がありましたか?
対話2、その変化はどうして起きましたか。何がその変化を起こしたのでしょうか?
対話3、『学びの専門家』としての教員の役割とは(新任の先生に説明するとしたらどのように言いますか)?
チェックアウト「新陽が『学びの専門家』集団となるため、踏み出したい一歩とは?」

『学びの共同体』に取り組んで2年、とは言うものの、この2年間には、単位制カリキュラムの導入、校則の見直し、コロナからアフターコロナ、など生徒や教員の変化の要因となっているものも多様です。

そのため何が真因か正解を見つけるのが目的ではなく、自分たちの変化(進化)を自覚し、その要因それぞれのつながりや、そこに紐づく自分たちの感情や価値観を掘り下げる、というのが今回の対話のねらいでした。

「まずはやってみる、そして考える、この繰り返しをやってきた2年間」は決して楽な道ではなかったし、今もなお、皆で悩みながら奮闘している毎日です。

でも真剣に、ときに冗談や苦労話に笑いながら対話している先生たちからは自信のようなものを感じました。これが何よりの変化、そして新陽の強みかもしれません。

【編集後記】
毎年4〜5月に近隣の中学校の校長先生にご挨拶に伺うのですが、対面で訪問するようになって3年目(校長初年度はコロナのため書面でのご挨拶)、中学校の新陽の理解に少し変化が起きたように感じています。
具体的に言うと、今年、単位制カリキュラムやハウス・メンター制について質問していただく学校が増えたのです。ちなみに昨年は校則の見直し、一昨年は入試制度(パスポート制度やWeb出願)についてが聞かれることが多かった気がするので、教育の中身に関心を持っていただけるようになったことをとても嬉しく思います。中学生の期待に応えられるように、教育の再創造への挑戦を続けていきます。

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