高校とNPOが協働で授業開発・LGBTQ+の生徒も安心安全に学べる学校をめざして 【週刊新陽 #78】
9月17日(土)〜18日(日)、『さっぽろレインボープライド2022』が大通周辺で行われました。
LGBTQ+などの性的少数者が差別や偏見にさらされず前向きに生活できる社会の実現を目指したイベントで、このレインボープライドとタイミングを合わせるように、新陽高校の生徒がLGBTQ+について考える授業に取り組みました。
札幌新陽高校とプライドハウス東京が一緒に考え、一緒に創る『性の多様性』についての授業。今回はその一部をご紹介します。
性の多様性を学ぶ4週間
新陽では、ビジョン2030『人物多様性』や、学校生活規則の目的「多様な生徒および教職員がお互いに自由かつ安心安全に学校生活を送ること」に向かって、「多様性とは何か」「なぜ多様性を尊重することが大事なのだろう」と考えたり感じたりする機会を設けています。
特に、単位制一期生である今の1年次の生徒は『総合的な探究の時間』を中心に、4月から「価値観の違い」や「当たり前を疑ってみること」について学んできました。
この1年次生徒たちが9月の『総合的な探究の時間』で4週にわたって扱ったテーマは性の多様性。
「LGBTQ+の生徒も安心安全に学べる学校とは」を切り口に、誰もが安心して自分らしく暮らせる学校や社会の当事者として、一歩踏み出してもらいたいと考えました。
この授業は、プライドハウス東京(*)と新陽高校が協働して開発した新しいプログラムです。
すべての生徒が社会の中の多様性を構成する一人ひとりであることを感じ、LGBTQ+というテーマを入り口に行動のきっかけを作ることが、プログラム開発のゴールです。また、新陽だけではなく他の高校や小中学校などでも使ってもらえるようにモデル授業として全国に展開することも見据えて、協働開発に至りました。
全4回からなり、前半はインプット学習、後半は生徒が個人やグループでアイデアを生むアウトプット学習、という構成になっています。
2回目のヒューマンライブラリーでは、プライドハウス東京や札幌のNPO法人 L-Portの皆さまの協力のもと、LGBTQ+の当事者の方々5名から直接お話を聞く貴重な機会となりました。
3回目以降、「LGBTQ+の生徒も安心安全に過ごせる新陽高校になるためのアイデアづくり」に挑戦。
すべては生徒の一言から始まった
今回の授業、実は昨年12月、全校集会の『多様性対談』にプライドハウス東京代表のゴンちゃん(松中権さん)が登壇してくれたことが始まりです。
この集会の後、生徒から「偏見を生まないために、いろいろな人が一緒にいる高校のうちに学ぶことに意義があると思います。全校集会でやってくれたのはよかったけど、授業でももっとやるべき!」と言われたのが心に残っていて、ゴンちゃんとも「これは実現しようね。」と話をしていました。
プライドハウス東京には、教育コンテンツの開発や発信を行ったり、安心安全な居場所づくりのためにユースをサポートしたりするメンバーがいます。NPOや専門家、企業などセクターを超えた多様な方々に加わっていただき、新陽の先生たちと一緒にキックオフミーティングをしたのが今年5月。
まずはどんな授業ができるだろうか、とか、教員の研修も必要なんじゃないか、という意見交換からスタートしたのですが、もともと新陽の1年次の総合的な探究の時間で「性の多様性」をテーマに探究学習を予定していたこともあり、だったらそれを新陽とプライドハウス東京で一緒に作ろう!と決まりました。
そこからオンライン会議やメールでのやり取りを重ね、7月には、授業づくり公開企画会議 in 『トビタテ!LGBTQ+6人のハイスクール・ストーリー』出版記念イベントを開催。教員経験もあるシゲ先生(鈴木茂義さん)やアンリさん(小野アンリさん)も授業開発プロジェクトに加わってくださり、だんだん形が見えてきました。
たとえば、ヒューマンライブラリーのアイデアはアンリさんから。これは語り手を「本」と捉え、いろいろな人が「本」になってそれぞれの人生を語るという対話型イベントです。新陽が大切にしている「出会いと原体験」の活動にもなると感じたので、是非やりたいと思いました。
とはいえ、ヒューマンライブラリーをやるには「本」になってくれる方を集めなければいけません。
プライドハウス東京のメンバーの尽力で協力企業の方も登壇してくださることになりましたが、さらに、地元の当事者からも生徒たちが話を聞けるとよいのではと、札幌のNPO法人 北海道レインボー・リソースセンター L-Portの中谷衣里さんを紹介していただくことに。おかげで、性も年齢も地域も多様なヒューマンライブラリーが実現しました。
さらに、衣里さんからさっぽろレインボープライドのことを聞いた生徒が9月18日にレインボーパレードを観に行ったり、パレードをニュースで見た生徒が「来年は参加したい」と言ってきたり、地元である札幌の団体が授業に関わってくださったおかげでさらに一歩踏み出す生徒が出てきた気がします。
あの集会の後の生徒の声から生まれたこの授業が、後輩の背中を押すきっかけとなったことも、生徒が多様性を構成する一人としての大事なワンアクションを起こした証拠だと感じます。
開発した授業プランは公開します
前述の通り、このプログラムはモデル授業として全国に展開していきたいと考えています。
新陽では、機会があるごとに生徒のリフレクションを促していますが、今回も都度「自分がどう感じたか」や「どのアイデアが良かったか」などGoogleフォームを使って意見を集めたり共有したりしました。
3回目の授業の中で「LGBTQ+の生徒も安心安全に過ごせる学校であるために新陽高校が"いいところ"や"すでにやっていること"は?」という質問に、「見た目に関する校則がないところ」や「人物多様性を掲げていること」以外で多かった意見が、「こういう授業をやっているところ」でした。
もちろん、生徒の中にはいろいろな意見がありますし、戸惑っている子たちもいます。その一人ひとりに寄り添いつつ、みんなが安心安全に過ごせる学校を作っていきたいと思います。
今後、生徒たちからのコメントや関わった教員の意見を踏まえて、プライドハウス東京の皆さんと一緒にこれから授業パッケージを作って公開する予定です。ご関心のある教育関係者や保護者の方々、なにより生徒・学生の皆さん、引き続きご注目ください!