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対話のスキルと対話の文化。システム思考と学校 【週刊新陽 #119】
先日、Inspire High主催のオンラインセミナーに参加しました。
ドルトン東京学園の安居校長と広尾学園の金子副校長と一緒に、学校改革をテーマに話をさせていただいたのですが、『中つ火を囲む会』に多くの質問が寄せられるなど、組織内での対話に全国の学校関係者の関心が高まっているのを感じました。
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木を見て森も見る
新陽高校で毎月行っている職員の対話の場『中つ火を囲む会(通称:中つ火)』、今月は7月20日(木)でした。
今回の対話の主題は生徒指導。今年2月の中つ火で、生徒指導提要が改訂されたことをきっかけに意見交換をしたので、それから半年経ってどう実践しているか、事例や価値観の共有をしようということになりました。
この対話に使う、『学習する組織』のテーマ(ディシプリン)はシステム思考。
システム思考とは、相互のつながりに着目して物事を捉える考え方。人はつい見えている現象にばかり気を取られたり、また、トラブルを解決したいあまり見えている問題を処理しようとしたりしてしまいますが、実は物事は複雑に絡み合っていてその問題を引き起こしている何かがある、それに目を向けよう、というものです。
多面的に捉えることから「木を見て森も見る」考え方と説明されることもあります。(システム思考教育家・福谷彰鴻さんの記事より)
リモートでメインファシリテーターを務めてくださったのは、リクルート・HITOLAB(ヒトラボ)の福田さん。氷山モデルやシングルループとダブルループといったシステム思考のツールを復習したあと、ケーススタディを行いました。
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「そうさせているものは何?」
事前に先生たちから貰ったアイデアをもとに福田さんと熊平美香さんと相談して設定した生徒指導のケース(ありそうな事例)を使い、以下1〜5のワークを行いました。
【個人ワーク】教職員である私たちはどう対応すればよいでしょうか。そう考えた背景にある、ご自身の「意見/経験/感情/価値観」はどのようなものでしょうか。
【対話】検討した対応策(アクションプラン)をグループ内でシェアしたあと、1〜2つを選択してください。その対応策は私たちのどの観点や信念に紐づいているでしょうか。
【対話】立場を変えて考えてみます。「当事者生徒をそうさせているもの(行動を生み出した背景や要因、メンタルモデル)」は何でしょうか。また当事者生徒以外に、この案件で考慮すべき重要な人物を想定しどんなメンタルモデルなのか想像してください。
【対話】ここまでの議論を踏まえて、(2)で検討した対応策をアップデートしてください。特に、問題が起きた後ではなく、事前や日常的にできるアクションはありそうでしょうか。
【リフレクション】対話を経て、対応策は変わりましたか?それぞれの教職員の価値観や経験などの違いに気付きはありましたか?当事者生徒や他の人のメンタルモデルを考えた時に気付いたことはなんでしょうか?今後に活かせそうな考え方やアクションはありますか?
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今回のシステム思考を使った対話の中で、
・多様な経験のシェア
・一様ではない教師の価値観の見える化
・アクションは同じでも元となる考え方は異なることがあるという気付き
などが生まれました。
また、「当事者生徒をそうさせているものはなにか?また、当事者生徒以外にこの案件で考慮すべき重要な人物を想定しどんなメンタルモデルか想像する。」という対話でとても興味深かったのは、各グループで想定した重要な人物の多様さ。
当事者生徒を取り巻く他の生徒(友達や情報提供者)、それぞれの生徒の保護者、教員、周りの大人、など、一つの事象に対して実は多くの関係者がいる可能性があることや、生徒をそうさせたものはその瞬間だけではなく時間をかけて起きていた可能性があること、など、まさに木を見て森も見るような、さまざまな視点から物事を捉えていました。
対話と学校DX
今回、システム思考を使った対話をするためのワークシートの設計がいつもより少し複雑でした。
対面で模造紙とポストイットを使う、オンラインでJamboardを使う、というのはよくやるのですが、今回1〜5のワークをグループや全体で共有したり個人ワークとグループワークを繋げたりするために、福田さんがスプレッドシートでのワークシートを準備してくださいました。
スプレッドシートを共同編集すること自体は新陽の先生たちは慣れているので、まぁなんとかなるだろう、とやってみたのですが、ワークが進む中でレイアウトの修正が必要だったり追記があったり。でも、毎月オペレーションを担ってくれている櫻庭先生がきめ細かくフォローしてくれたので、まごつくこともなくスムーズに対話が進んでいきます。
今回、外部のお客様が「中つ火を体験してみたい」と来校されて参加してくださっていたのですが、終わった後に「これがオンラインで普通に行われていて、凄さにしばらく気付きませんでした!笑」と感想をいただきました。そう言われて初めて、私たちもその凄さを感じたというのが正直なところです。
今回、システム思考を使ってみること、そのために生徒と教員だけでなくいろいろな「つながり」に目を向ける問いを立てること、事後指導ではなく予防的・常態的指導にも思考を巡らせること、など、対話そのものの設計もかなり複雑で難易度の高いものに挑戦しました。
終わった後に福田さんたちと「どうなるかと思ったけど、けっこうイケましたね・笑」とほっと一息。同時に、これが出来たのは、福田さんのファシリテーションと新陽の先生たちの対話力、そして新陽の先生たちのデジタルリテラシーの高さ(全員ができなくても得意な先生が率先してサポートするスキルや関係性も含めて)の賜物、と感じています。
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なお、この中つ火が終わったあと、『中つ火を囲む会』の名付け親でもある髙橋励起先生から「そろそろリアル中つ火やりませんか」と言われました。
以前より、しっかりデザインした対話もいいけど、ただ焚き火を囲んで対話する『リアル中つ火を囲む会』もやりたいね、と話していたのですが、今回、櫻庭先生がオペレーションに徹してあまり対話に参加できていないことを感じ提案してくれたのです。
新陽には焚き火台も薪もあるので、ぜひ近いうちにリアル中つ火をやりたいと思います!
【編集後記】
この度、明治図書出版より発刊された『SCHOOL SHIFT あなたが未来の「教育」を体現する』の第4章 実践編『対話を通して「学習する組織」になる学校』に、中つ火の対話を軸にした新陽高校の事例を書かせていただきました。Amazonでは8月7日発売予定です。ぜひ手に取っていただけたらうれしいです!
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Introduction. SCHOOL SHIFT概論─日本の学校教育の成り立ちと未来
Chapter 1.「教育活動」のSHIFT―学校DX
Chapter 2. 「学び方・教え方」のSHIFT―探究学習とPBL
Chapter 3. 「学び方・教え方」のSHIFT―これからのキャリア教育
Chapter 4. 「学校組織」のSHIFT―変わる組織、学ぶ組織
Chapter 5. 「教師」のSHIFT―新たなキャリアデザイン
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