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夏期講習でも補習でもない。新陽にしかない集中講座とは 【週刊新陽 #172】

新陽高校では、2022年度入学生から単位制カリキュラムを採用しています。

生徒一人ひとりが自分で時間割を組めることや、新陽にしかない学校設定科目などカリキュラムの特色はいろいろありますが、夏季・冬季の集中講座もその一つ。

集中講座とは、進学指導を目的とした夏期講習や授業の補足的な内容を扱う補習とは異なり、(日帰りの場合も宿泊を伴う場合もありますが)数日かけて集中的にあるテーマについて学習するもので、生徒は履修と修得の条件を満たせば「単位」が付与されます。

というわけで、この夏に実施した3つのプログラムを紹介します。

なお今号は、担当した先生たちから提供してもらった文章や画像を編集したものになっています。十勝岳で生徒が撮った写真も素敵なのでぜひご覧ください!


SDGsに本気で挑戦!道北ツアーin上川町(理科)

理科の安齋先生がプロデュースするこのプログラムは、事前学習と上川町での2泊3日のフィールドワークを通して、黒岳登山や生態系学習、異文化コミュニケーション、地方創生の取り組みを体験するというもの。

上川町は、北海道のほぼ中央にある大雪山国立公園の北方部に位置する自然豊かな町です。

1年次4名、2年次3名、計7名の生徒が、黒岳では溶岩円頂丘や層雲峡の柱状節理を観察し、国立公園で高山生植物や野生動物と共に生きるということについて学びました。また、上川町の人々や移住者との交流を通して、地元の課題やSDGsについて考える機会を持ちました。

参加した生徒たちは、初めての登山に挑戦し頂上を目指して奮闘したり、地元の取り組みや文化に感動したり、英語でのコミュニケーションに挑戦したりと、それぞれが多くの学びと経験を得たようです。

「頂上までの道のりは大変だったけど、景色がとても綺麗で感動した!」「英語でのインタビューは良い経験になった。でも難しかったので、もっと勉強したいと思った。」など、感想からも満足度の高さが伝わってきます。

担当した安齋先生も「生徒たちの成長が見られました。特に黒岳登山では、生徒たちの体力と協力の姿勢に感心しました。」と手応えを感じ、次回への期待が高まったとのこと。

なお上川町で様々な町民の方々にインタビューさせていただいた生徒たち。不安や緊張しながらも勇気を出して「話を聞かせてください」と街中や店舗で声をかけると、皆さん優しく対応してくださり、小さなお子さんまで話を聞かせてくれたそうです。

人の温かさや明るさ、地元愛などを感じ、「上川町の魅力は『人』だと思う」と口を揃えて言っていました。上川町の皆さま、本当にありがとうございました!

GoGoランニング(保健体育)

体育科による夏季集中講座は「GoGoランニング」。

その名の通り、ランニングを核としたプログラムで、走り方の基礎から学び、生涯スポーツの一つとしてランニング技術を向上することを目的としています。

全5日のスケジュールで、1日目は座学、2~4日目はランニングの実技、最終日は「理想のトレーニング計画」をテーマにプレゼンテーションを行いました。

メインのランニングは、3日間で42.195kmを走り切るのが目標。講座2日目に真駒内公園を12.195km、3・4日目に豊平川河川敷を15kmずつ走行。

担当した体育科の奥谷先生と越後先生は、それぞれ野球やサッカーなど本格的にスポーツに取り組んできた経験がありますが、そのお二人でも「気が進みません(笑)」というほどのプログラムです。

しかも、残念ながら期間中天候に恵まれず、特に4日目は最初から最後まで雨が降る中でのランニングとなってしまいました。それでも参加した1年生から3年生まで20名程度の生徒たちは、未体験の走行距離にも気落ちせず、各々のペースで3日間走り切りました。

先生たちからは「本当によく頑張った!!!」と賞賛の声。生徒は達成感とともに、フォームやペースなど"考えて"走ることの大切さや、一緒に走る仲間が力になることなどを学んだようです。

みんな本当にお疲れ様でした!

十勝岳縦走登山(アウトドア探究)

アウトドア探究」とは、新陽にしかない学校設定科目で、高校生が野外体験を通じてアウトドア活動に必要な知識や技術を学び、自己の成長や人間関係づくりに役立つマインドやスキルを身に付けることを目的にしています。

アウトドア活動や登山の経験が豊富な髙橋励起先生と植田先生が、北海道教育大学岩見沢校にあるアウトドア・ライフコースの山田先生や学生さんにご協力いただいたり、日本野外教育学会で実践発表をしたりしながら、カリキュラムを構成。通常の授業に対して、集中講座はより自然体験を重視したプログラムになっています。

今年の夏季集中講座ではテント泊を伴う3泊4日の縦走登山を実施。事前に藻岩山でのトレーニングを行い、最終的に9名の生徒が参加(3年次1名、2年次5名、1年次3名)することになりました。

以下、励起先生による行程の記録です。

1日目:9:00に学校に集合し、各自ギアの点検をしてから出発。バスで十勝岳温泉湯元凌雲閣に向かいました。凌雲閣に到着後、午後からヌッカクシ火口までトレッキング。十勝岳はジオパークになっているため、噴火口から吹き出す水蒸気や火砕流堆積物を観察しながらの有意義なフィールドワークとなりました。

2日目:9:15に出発し上ホロカメットク山避難小屋を目指しました。ギリギリと肩に食い込む15kg以上のザックを背負った本格的な登山に、生徒たちは閉口します。12時半前になんとか上富良野岳のピークに到達。そこから、その日の幕営地である上ホロ避難小屋に向かっている途中で、ひとりの生徒にアクシデントが発生。避難小屋が見えて気が緩んだのか、岩場に足をひっかけ捻挫をしてしまいました。
小屋にたどり着いたのが13時過ぎ。そこからテントの設営。風が強くなってきたため、周辺の岩石を使いテントを固定しました。遅めの昼食は、避難小屋で各自持参した山飯を食べました。夕刻から風がどんどん強くなり、夜半には雨も降り出しました。

3日目:午前4時過ぎに風が弱まり天候が回復する兆しが見えたため、5時に予定通り十勝岳へサミットプッシュをかけることに。足を挫いた生徒は残ることを決めました。5:46に十勝岳のピークに立ちました。一面に広がる雲海と、大雪山の峰々に一同感動。
7時に避難小屋に戻り、そこからテントの片付けと荷造りをしました。その際、足を挫いた生徒の荷物をみんなで分散して持とうという話になり、テントやシュラフなど、重たい装備をみんなで手分けしてザックに詰めました。荷が軽くなった生徒も一緒に、そこから上ホロカメットク山のピークを目指します。9時に山頂に着き、全員揃って記念撮影。その後、上富良野岳の山頂を経由して下山。12時に全員無事に下山しました。温泉に入り、ゆっくり体を休めて、翌日札幌に戻りました。

このようなプログラムが実現できたのも、十勝岳温泉湯元凌雲閣の女将・青野範子さんを始めご協力いただいた皆さまのおかげです。心から感謝します。

全行程を終えて帰校した生徒たちの様子、そして励起先生と植田先生のホッとした顔からは、4日間がとても充実していたことが伝わってきました。

「テントを担いだ縦走登山を、山岳部ではない普通の生徒が行う。一見無謀かと思えるような山行ですが、しっかり準備を整えれば実現できるということを生徒たちが示してくれました。山に登る技術・知識を学ぶだけではなく、山行での集団学習体験を通し、信頼関係の構築と人間的な成長を促すことができたと実感しています。重い荷物を背負い、テントで寝て、苦労して山頂から見た景色は、生徒たちの一生の宝物になったことでしょう。私たち教員にとっても、野外教育の更なる可能性を実感できたプログラムとなりました。」

最後に、生徒の感想の一部を紹介します。

「自分との戦いだった。他のメンバーに迷惑をかけないように工夫して登った。また、メンバーの一人が足を怪我した時もみんなで荷物を持ったり、危険なところは声をかけあったりと、問題が起きても協力することで困難を乗り越えることが出来た。非日常での体験が個々を成長させたと感じた。」

「肉体的にも精神的にもキツかった。でもそれよりも頂上での景色に感動したり、皆でご飯食べたり温泉入ったり、行って良かったと思えることが良かった。山で過ごすといつもの生活が恵まれていることに気付き、自然に触れていると、抱えてる悩みとかストレスが凄くささいなことに思えて心が軽くなる。」

「本格的な登山の経験がない自分が置いていかれないか心配で、仲が良い人もいなくて不安だったけど、登山中に自然と協力し合ったり、経験のある先生方に支えられたりして登山ができてとても嬉しかった。」

「山の上が寒くて大変だった。夜はテントの中で風の音がうるさすぎて寝れなかった。でも道中の景色や、頑張って登った後の頂上の景色で疲れが飛ぶくらい感動することができた。一度山登りにハマるとやめられないと思った。もっといろんな山に登ってみたい。自分と自然が一つになったような感覚があってすごく良かった。」

「怪我をしてしまい、下山のとき足への負担を減らすために仲間が私の荷物を分担して持ってくれた。最高の景色を見たときは、何もかも忘れ景色に感動することだけに集中できた。悔しい思いもしましたが感謝と感動があふれるいい出会いだった。」

写真はすべて、参加した2年生の河村くんが撮影したものです。通常の装備だけでも15kgを超えるのに、さらに本格的なカメラを担いで登山しました。その甲斐あって素敵な写真がたくさん撮れたようです。特にみんなの笑顔、最高です!

【編集後記】
人生でたった一度きりの3年間。その中で、自分を突き動かす原動力を見つけてほしいので、新陽では『出会いと原体験』の機会を様々に設けています。行事や課外活動、部活動もありますが、やはり一番大事な授業でどうやって『出会いと原体験』をデザインするかが大切。集中講座は、生徒たちが非日常体験を通して、様々な人やもの、そして新しい自分に出会うことができる貴重な機会だと改めて感じた夏となりました。

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