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ピアコンサルテーションの勧め

このところTwitterで臨床心理士さんや公認心理師さんが「研鑽したいけどなかなかできない」という困りごとをよく目にします。

「お金がない!時間がない!いいSVや仲間が見つからない!」の3大問題を抱える心理職。そんなあなたへ私のイチ推しはピアコンサルテーション

ピアコンサルテーション、略してピアコンとは、講師やスーパーバイザーとではなく、利害関係の少ない臨床家の仲間(ピア)同士でサポートし合う場。自分達でデザインするミニ事例研究会や勉強会みたいな感じ。

ピアコンは無料!

自分で時間を選べる!

その上、あなたが望む仲間を見つけられるかもしれない!

「心理士/師の質向上は行政とか組織が作るべきなんじゃないの」と思うあなた。ごもっとも!同感です!そっちに働きかけながら、今あなたが必要としているサポートをあなたがデザインするノウハウを沢山のSVやピアコンを受け、作ってきた私の体験をもとにシェアします。

但しこのノウハウには短所があります。それは計画するあなたにある程度の行動力が求められること。そして自分がサポートしてもらうだけでなく、相手を同じようにサポートする相互関係が欠かせません。

できるかわかんないけど、まずノウハウを知りたいという方は読み進めて下さい。

ステップ1.ピアコンの目的をはっきりさせる

ステップ2.枠組みを作る

ステップ3.仲間を見つける

ではそれぞれのステップを詳しくみていきましょう。

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ステップ1.ピアコンの目的をはっきりさせる

あなたがピアコン仲間に求めるものはなんですか?知識の吸収?技法の演習?グチこぼし?内的成長?

目的をはっきりさせることがあなたが求めるピアコン仲間に出会うために、とても大切です。

例えば「これでいいのかな」と不安になった時に相談できる相手。新しく学んだ技法の視点から事例を考える。転移・逆転移に気づかせてもらいたい。個人開業の運営面の情報交換。クライアント以外の大人と会話したい。安心してリファーし合える人を見つけたい。目的は人それぞれです。

私の最初のころは、免許をとるとSVを受ける義務がなくなるので、漠然とした不安やコンサルは続けるものという風潮から、メンバーを募集しているピアコンのグループに「なんとなく」いれてもらった感じでした。

次に「神経心理学研究の臨床応用をもっと学びたい」「○○療法を使っている人に出会いたい」「△△症治療について知りたい」など知識と臨床力向上がメインになり、その時々に学びたいことにそって焦点が変化して自分からピアコングループを探したり、作ったりしました。

あなたなら、どんなピアコンだったら臨床の腕があがるか想像してみましょう。

最近私は共通する心構えとセルフケアを大切にするようになりました。これは多くのピアコンで、「私だったらこうする」という意見の言いっぱなしや、なぜその情報が必要なのかをはっきりとさせないまま「その点はどうなっているんだ、あの点はどうなっているんだ」という質問攻めや、私が求めていない問題解決をしてきたりと、私がその時に求めていたサポートとはまったく食い違ったものばかりだったからです。

そんな経験から今私がピアコンに求めることは臨床家としてありたい姿を応援し合える仲間になりました。「臨床家自身の理解をサポートする」「コンサルして欲しい人が求めている質問に応える」など。そんな仲間に出会うまでに時間はかかりましたが、今はその仲間が私の大きな支えになってくれています。

あなたはどんなピアコンだったら臨床家として充電されたと思えるか想像してみましょう。

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ステップ2.枠組みを作る

ピアコンは自分に負担がかかったら長続きしません。持続性の高い枠組みをあなたが決め、仲間募集の際にそれを明記しましょう。

枠組みとは、場所、期間、人数、頻度、長さ、時間割です。それが決まったら都合のいい時間帯と曜日を選びます。これらの要素はすべてが変数となります。目的が変われば頻度もかわる、人数がかわれば長さも変わるといった具合です。ここではおおまかな枠組みを紹介します。

場所 オンラインがお勧め。移動にかかる時間も経費も節約でき、朝イチや昼休みなど、対面では都合をつけにくい時間帯にすることができます。参加できる仲間も地理的な条件に縛られません。子育て中や色々な事情で簡単に出掛けられないという方も参加しやすいです。けれどもネット環境によっては参加に適さない方もいるでしょう。また、雑談する時間が無いので、関係が深まるのに時間がかかるかもしれませんが、これは時々オフ会をしたり、ピアコン時間を長めにして、最初の20分を談話や長めのチェックインに充てることである程度カバーするのもありです。

期間・回数 ピアコンを始める前に同じメンバーで集まる期間や回数を決めましょう。3か月、または12回など回数を決めます。これは、期間が終わればみんなが気兼ねなく離れられるためです。知らない人にも募集をかける時は短め、少な目の設定にしておくと、応募するほうとしても気楽なため、あなたが求めている仲間に出会いやすくなるでしょう。

人数、頻度、コンサルの長さ。私のお勧めには2通りありますが、無難なのは4人か5人で毎週1時間。その人数を超えると一人当たりの時間が足りなかったり、コミットメントのレベルにバラツキが出ます。遅れてくる人を待っていることも減ります。5人だと一人が休んだり、途中で抜けてもうまくまわります。隔週や月に1度だと、祝日やカンファ諸々の理由で休みがでると、次回までに時間があきすぎ、全員が揃う日へのリスケもほぼ不可能。1回1時間(または50分)だと、無理なくスケジュールに組み込める人が多いでしょう。

もう一つのお勧めは2人で隔週に1時間。2人だけだと休みが入ってもリスケしやすく、次のピアコンまで待てない要件でも相談しやすいです。ただし、これは相手を慎重に選ぶ必要があります。お互いにとってプラスになる相手選びの私の経験はステップ3でお話します。

時間割 ステップ1で考えたあなたのピアコンの目的をかなえるために、ピアコン1時間の中での時間の割り振りを決めましょう。例えば最初の10分はそれぞれが1、2分で手短に近況報告して、今日のコンサルで話したい事例があるかを伝える。次に残りの時間をどう使うかの目途を立てて、事例を話すなど。今までの事例研究会様式にとらわれずに、あなたや仲間のニーズにあるものを作ってみましょう。

曜日と時間帯 これは「あなたにとって」都合がいい時間を選びましょう。忙しい4、5人のスケジュール調整は大変です。まずはあなたが無理なく参加できることを優先しましょう。例えば子育て中だと、対面ではありえない、夜9時スタートや、土曜の朝7時などでも、「その時間だと丁度いい!」と思ってくれる人が意外にいるもんです。

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ステップ3.仲間を見つける

ピアコンの質は仲間で決まると言っても過言ではありません。ピアコンの魅力は利害関係の少なさです。同じ職場の人とのコンサルもいいですが、微妙な力関係や、希望者が5人より多い場合どうするか、気が合わない時にどうするかなどの問題になりがちです。

もちろん上司や先輩から学べたら最高ですが、力関係の影響に疎い上司や先輩がほとんどと言うのが現状なのではないでしょうか。あなたがいつか、本当の意味でいい上司や先輩になれるように、ピアコンで沢山練習してみましょう。

狭い心理界ですが、仲間募集の手段を工夫することで利害関係を最小限にとどめたピアコン仲間に出会いやすくなるでしょう。地理的に離れているほうが利害関係になりにくいです。募集先の例として心理士会や学会はもちろんのこと、こくチーズやSNSでの募集などクリエイティブに考えてみましょう。ここで大切になってくるのがステップ1とステップ2であなたがクリアにしてきたことを明記することです。

私はオンライン化の前は地域の心理士会に「ピアコンに入りたいです」というメッセージを書いて入れてもらいました。でもそれは私の目的がはっきりしていなかったので、イマイチの結果でした。

私が望んでいる仲間に会えてなかったので、自分から「○○療法に興味がある人で親睦会をしませんか」と地域の心理士会のメーリングリストに書き、オフラインで顔合わせをして、その中から気が合いそうな方に個人的にお誘いしました。この方法は、親睦会への参加希望者が予想以上に多く、スケジュール調整がとても大変でした。幸いここからピアコンのグループが生まれました。(でも、他の人の希望に合わせて私が持続しにくい時間と場所だったので、半年くらいで私が挫折。)

それでも良かった点は、ピアコンにはスケジュールが合わなかったけれど、必要に応じて時々電話でコンサルさせてもらう、頼れる先輩にも出会えたことや、私の存在を知ってくれる人が増えたことでした。

講習会参加者に声をかけることもできるでしょう。講師の方に「この技法を一緒に練習する仲間を募集したい」など相談して、参加者に募集のメールを転送してもらったり、講習会参加中に講師の方の許可をもらって告知させてもらえるかもしれません。交流型のオンラインだったらチャット欄に連絡先を流させてもらう事もできるかもしれません。参加した多くの講習会では講師が、Googleシートを使って連絡先を交換したい人がそれをできるようにしてくれていました。

短い期間のピアコンを何度か経験する中で、仲間の臨床スタイルを知ることができ、リファーする際の信頼へとつながります。(この人にはリファーしないでおこうと思う人にも沢山出会いますが。)私の場合は上に書いた方法で何人もの臨床家に出会い、その中から相性のいい同僚と期間を区切らずに続けることが多かったです。

ステップ2の人数のところで触れた2人一組のピアコンは私にとって楽しく、困っている時には頼りになる、待ち遠しい時間です。

ある療法の長期研修で意気投合した一人とは、その療法のスーパーバイザーを探し、バイザー1人と私達バイジー2人の有料スーパービジョンを受けました。2人で受けることで一人当たりの負担額が半額になり、もう一人のバイジーの臨床スタイルからも学ぶことが沢山ありました。

そのバイジーとは今でも隔週オンラインで1時間のピアコンをお互い面談を録画したものを見せあい、技法のセオリーに照らし合わせながら研鑽しています。その人と私は共に社会的マイノリティであり、マイノリティであることへの疲れなど、マジョリティにはわかってもらいにくいことなども話せる大切な場です。

私はもう一人、隔週オフラインでゆる~いピアコンっぽいことをしている仲間がいます。その人とは地域の心理士会員で作った開業心理士の5人のピアコンで知り合いました。そのピアコンからその人は抜けましたが、気の合ったので、私が子供を学校に送り出した足で朝8時半からカフェで1時間と決めて、事例ではなく療法家としての悩みやこれからチャレンジしたいことなど、主にセルフケアの目的で会っています。

ちなみに、もとは5人のピアコンだったグループは今は4人で週1時間オンラインで会い、一般的なコンサルをしています。支持する療法は違いますが、倫理関連や開業臨床だからこそのケースマネジメントなどを主にしています。

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これらのノウハウをきいてみていかがだったでしょうか。もしも「無理」と思ったあなたは、今は疲れちゃっているのかも。「もう十分やってるんだからこれ以上要求しないでくれ」とちょっと不快になっているのかもしれません。もしそうだったら、とりあえず休みましょ。今無理しなくても大丈夫。ちょっと力が戻ってきたら、自分でピアコン作らなくても、「こんなピアコンさがしてるんですが、ありませんか」とヘルプのサインを出すのもありです。ピアコンは始めたら抜け出せないものではありません。次にいいのが見つかったり、作れるまでの通過点。少し元気が出てきたら次に疲れちゃった時にはそこでサポートしてもえるるように、一歩踏み出してみませんか?

アメリカ臨床している私の個人的な体験がもとなので、どこまで日本の心理士/心理師さんに役立つかわかりませんが、何かのヒントになったらと思います。

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