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2024.2.28 東北の山奥、湖のほとりに

5年前に亡くなった友人Kの墓があり、そこに墓参に行こうとレンタカーを乗り継いで出かけようとする、という夢を見た。

就職活動をしているとき、ひょんなことから意気投合した仲間のひとり、K。彼女の訃報を受け取ったときは「えっ、ガセネタでしょ??」という声が出てしまった。その数年前から実はガンを患っていたというが、周りの人はほとんど誰も知らなかった。
20代の頃は、なんやかんやと飲んだり旅行したり、忙しく働きながらもよく一緒に遊んでいたK。彼女は、私が第一志望だった企業の内定を勝ち取り、バリバリと音が出るような激務をこなすカッコイイ女性だった。私はどこかで内心、比較にならないくらいの優秀さを持つ彼女に引け目も感じていた。
そういえば、30代に入り、互いに結婚したくらいから少しずつ会う頻度は減っていったかな。そして数年前からは、共通の友人つてで連絡取るくらいになっていた。「忙しさ」にかまけていた自分をぶん殴りたい。彼女はその頃も、人知れず闘病しながら仕事にも変わらず打ち込み続けていたという。でもそれが、彼女の寿命を削っていたとしたら…?

訃報を受け取った私は、共通の友人たちと葬儀に参列するため、彼女の実家がある東北地方の町を訪れた。その地域では火葬を告別式の前に行うという。すでに小さい骨箱の中に収まってしまった彼女と、一緒に旅をした愉快な彼女とがまったくリンクせず、未だに彼女の存在は自分の中で宙ぶらりんのままになっている。

ちょっと前に読んだ、村上春樹の新作「街とその不確かな壁」は、後半の舞台を東北は奥会津と思われる場所へと移す。深い山々を抜けてたどり着く山奥の町と、Kの故郷とを何故か重ねてしまいながら読んだのを思い出す。

物語を愛していた彼女は、どこか架空の森の中に溶けていってしまったような感じもあり、彼女を思うと東北という場所がさらに神秘的にも思える。あの夢の中で見た場所をいつか巡って、彼女に会いに行きたい。



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