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がんをやっつけろ!第6話「俺の5日間戦争」

死闘が終わり

ぶっちゃけ、この5日間がこの話のクライマックスと言ってもいいと思う。
闘い(オペ)が終わり、目を覚ましたあとのこと。

段々と色んなことを理解し始め、「あー、ラスボス(オペ)との闘いに俺(ブルーブルノブ)は勝ったんだなー」と思いを巡らせる。繰り返すが、身体は動かせないが、頭はクリアだった。それでも今思うと意識は混濁していて、リング(オペ室)から控室(ICU)にストレッチャーで運ばれたのだが、周りが真っ暗だったことを覚えている。真っ暗ていうか、色がないモノトーンな世界。夜だったから?よくわからない。

控室(ICU)にて、寝てるのか起きてるのかわからないボーっとしたまま、何時間経ったかわからない中、時々、看護師がやってきて、レントゲンを撮っていった。ベッドに寝たまま。上からカメラが降りてきて。
寝たままではあるが、そのままでは撮れなくて、背中にレフ板のような板を差し込むのだが、つまり少し横向きにさせられ、板を背中側に敷き、そしてまた仰向けに戻るという。
このとても単純な動きではあるが、自分では横向きになれない(自力で身体を動かすことができない)ので、看護師に強制的に横向きにさせられるわけだが、この時、おそらく人生最大と言ってもいいくらい、在らん限りの声で絶叫した。

ぐわっあああっっっっーー!!!!
いってぇぇぇぇーーーーー!!!!

最悪。

パンチドランカー

あなたは通風の痛みを知ってるだろうか?
もちろん人それぞれだとは思うが、俺的には自分史上最大の痛い体験として周りに吹聴してきた。とにかく足を動かそうとすると強烈な痛みが走り、動かすことができない。だからベッドから起き上がれない。こんな痛いこと、他にはないとずっと思ってきた。(一説には尿管結石がそれを上回る痛さだとか)

が、今はそれと並ぶ、いや、超える痛さを知ってしまった。
そう、この術後の腹筋である。この腹筋の痛さでこの後、5日間、俺は悩み続けることになる。

きっとあなたは「腹筋が痛いってどういうこと?」て思うはず。
えっとね、痛さの種類で言えば筋肉痛のそれと同じ。「え?筋肉痛なんてしょっちゅうなるし、痛い?ていうかむしろ気持ちよくない?」て思うよね。きっと。

想像して欲しい。
ハラキリしたサムライへの介錯が失敗した時、そのサムライは地獄の苦しみでのたうち回ると聞いたことがあるが、おそらくその痛み(苦しみ)と同じだ。知らんけど。
気を失えば楽なのだが、そうならないとき、「早く殺してくれー」とそのサムライは叫ぶ。その痛み(苦しみ)だ。知らんけど。
さすがに「殺してくれー」とは思わなかったが、でもそう思ってしまう気持ちはすっげー理解できた。

これ、すなわち、ラスボスの強烈なパンチを浴びたことによるパンチドランカー状態と言えるのではないか、なんて。
ハラキリなんて物騒な!と思うかもしれんが、実際、ハラキリしたのだから、そうとしか言えない。

前回(第5話)の日記で「開腹せずに食道を切除した」と書いたが、それはそうなんだが、実は正確に言えば、食道切除自体はそうなんだが、そうするためには2箇所、身体にメスを入れなきゃいけないらしく、腹と鎖骨のあたりを切っている。

2箇所:腹と鎖骨のあたりの切った痕

腹を切るのは食道を切った時、繋がりを失った胃が重力で落ちてしまわないよう下から支える器具を入れるため。鎖骨あたりを切るのは、切除した食道そのものを取り出すためだとか。

人間の行動はすべて腹筋から始まる

腹筋が筋肉痛になった時、咳が辛かったり、「ちょっと笑わせないでよ!」って言った経験はないだろうか?
あれがもっと酷くなり、だから何をしても痛くて、かつ24時間ずっとそれが続いている状態だ。
そんな状態になったからこそ、「人間は何をするにも腹筋なんだなー」って思ったり。

喋るのも、寝返りを打つのも、もちろん動くのも、もっと言えば息をするのも辛いという。だからホントにこの術後の5日間は地獄だった。大袈裟でもなんでもなく、生きてるだけで痛いから。

余談だが、身体にメスを入れる場合、大抵、強力な痛み止めを背骨から注入するそうだが、俺にはそれをしなかったと。抗がん剤の副作用なのか手術前に血栓が見つかり、血栓が身体を巡ると脳卒中などの合併症の危険があるからということで5回目の入院前、血液サラサラになる薬を飲んでいた。手術ができなくなるリスクがあるからという理由で。
で、この薬を飲んだ人は背中に針を入れると血が止まらなくなる危険があるとのことでそれをしなかったらしいのだ。つまり強力な痛み止めをしてもらえなかったのだ。俺は。オーマイガー!!!!

そしてもうひとつ。
実は去年の3月からジム通いをしていて毎週、筋肉と会話を続けていた(もちろん病気のことなど微塵も感じなかった頃)のだが、そのおかげで少しパンプアップしていていて、だから腹筋もしっかり育っていて、先生曰く「筋肉が大きいからその分、痛みも大きいんですよー」て、こっちの痛みなんかどこ吹く風で解説されて、ジム通いがある意味、裏目に出たという。
あ、でもそもそもこのジム通いのおかげで回復も早かったんだけどね。ま、その話はまたあとで。

いやーホントにこんな辛いことが世の中にはあったんだと心の底から思ったよ。だから何もする気にならず。それでも萎んだ右肺を元に戻すためにコーチトレーニングはやらなきゃいけないし、院内を歩かなきゃいけないしで、しんどかったなー。マジで。眠ることができればいいんだが、痛くて眠ることもできず、消灯時間が過ぎた夜がホントに長かった。横向きに寝たいのになれなくて。ずっと仰向けでホント辛かった。
振り返れば、あっという間に過ぎ去った日々ではあるが、渦中にいた時は人生最長の5日間だったように思う。

術後、2日目くらい


腹筋の痛みだけじゃない。俺を縛るもの。

術後5日間、あらゆるコードが俺に繋がっていた。痛み止めやら、なんやかんやの点滴だったり、開けた穴から滲み出る血(排液)を溜める袋だったり、酸素ボンベだったり、血中酸素や脈拍をリアルタイムにナースステーションに送る電極だったり、おしっこを溜める袋(この5日間はずっと紙おむつ)だったり、、、、
これがホントに煩わしい。っていうか鬱陶しい。・・・同じか。

チューブやコードでがんじがらめ
どこに行くにも酸素ボンベと痛み止め(モルヒネ)を連れて歩く


ちなみに俺が1番嫌いな熟語は「束縛」で、1番好きな熟語は「自由」である。思い込みかもしれないが、バイクを愛する人は皆そうなんじゃないかなって思ったり。

我が愛車!ZRX1200DAEG

なにが言いたいかと言うと、この5日間は腹筋が痛いから動けないし、コードがたくさん身体に付いてるから煩わしいわで、つまりとにかく不自由で、ずーーーーーっとイライラしていた、ってことだ。

ある時、あまりにも煩わしいので、こっそり酸素ボンベの鼻チューブを外していたら、血中酸素濃度が下がったことがナースステーションに伝わってしまい、看護師に注意されてしまった。でもこっちもイライラしてたから、「外したのは一瞬だけだ!」と小学生並みの嘘を付いて言い返したり、大人気なかったなと。その時の看護師さん、ごめんなさい。

「自由」を我が手に

術後4日目にICUから一般病棟に移動、なんとか亀並みではあるが、自分で動けるようになっていて、それでようやく俺を縛っていたあらゆるものが少しづつ外れていった。

まずはおしっこを貯める袋とおむつ

ちなみにこの4日間はシャワーが浴びれないから毎朝、看護師さんに身体を拭いてもらっていた。もちろんおむつの中、つまり股間もなんだが、そのとき、妙な気持ちになったことは正直に告白する。
当たり前だが、おむつが取れると自分でトイレに行かなきゃいけないのだが、取れて1回目のおしっこの時のことだ。
よくホースで水撒きするとき、最初の水が出る際、なんていうか空気と混じってぶるぶるって不規則に水が出て、しばらくして普通に出るようになると思うんだが、あんな感じだった。苦笑
というのもおむつをしていたと言ってもあそこはフリーだったわけじゃなく、尿道から直接、袋におしっこを貯めていたから、その管が入っていた影響で空気と尿が混じった感じになったんじゃないかと。ホースの水撒きみたいに。知らんけど。
どうでもいいが、トップ画像は退院後、メンバーとマザー牧場に行った時の写真。「びしょぬれ注意」という文言が、このエピソードにふさわしいかなと思い採用した次第ww

次に身体の穴から出る血(排液)を貯める袋

医療用語でその管のことをドレーンっていうのだが、このドレーンがずっと身体にぶっ刺さっていて、このときにようやく取れた。ちなみに抜くのはまったく痛くなかった。

術後4日目にしてはじめて口から食事を

それがこれ。

1日の食事がこれ1本w

久し振りに食べた(飲んだ)これ、めっちゃ美味かった。

点滴の数が減っていく

なんの点滴かは忘れてしまったが、たくさん繋がっていた点滴がひとつずつ減っていった。

そしてようやく「5日間の戦争」が過ぎ

腹筋の痛みも唸るほどじゃなくなった。
もちろんまだ痛くはあったが、そこまでじゃないところまで回復。「時間が解決することもある」という当たり前の事実を身をもって実感したときだった。
ここまでくれば退院までのカウントダウンが始まったも同然。事実、この日から約1週間後に俺は退院することになる。

ということでここから退院までの話はまた後日。
それにしてもたくさんの方に「ブログ読んでます」と言われる。ホントにありがたい。少しでも楽しんで読んでもらえるよう、あなたを意識して書いてるつもり。嘘はひとつもないけど、ある種、表現していることは事実。そのあたりは単純に「読み物」として捉えてもらえたら嬉しいなと。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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