がんをやっつけろ!第7話「終わりなき戦いのはじまり」
なんかいろいろ忙しくなってきて、更新頻度が落ちてきた。もちろん自覚している。でものんびり忘れたころに更新するペースで今後もやっていくつもりなんで、ご容赦いただきたい。って誰も待ってないかもしれんが。
そしてこのシリーズ、なんとなく全10話な気がしている。つまり今回含めてあと4話ということだ。
地獄の5日間が過ぎ
ラスボス(オペ)に勝利、パンチドランカー状態(腹筋の激痛)から少しずつ回復し、さらに俺を縛っていたあらゆるコードやチューブも段々と外れていった術後6日目、気分も晴れやかな日々が来ると思っていた俺に新たな試練が襲うのだった。その名も「食事トレーニング」である。
ちなみに今は退院して普通の生活を送っているが、いまだにそれを続けている。ていうか3ヶ月我慢しろと言われているので、まだまだ続くトレーニングである。長い!途方もなく長く感じる。今は。
とは言え、退院までのカウントダウン、あいや格闘技的にはカウントアップだが、ていうかぶっちゃけ格闘技例えに飽きてきたんだが、まあそれはいいとして、退院までの特筆すべきこと、つまり今回の日記の目玉はこれである。
THE 食事トレーニング!
なかなかハードなり。
なぜ食事トレーニングが必要なのか?
「食事トレーニング」って言ってもボディビルダーがやるような食生活を変えなきゃいけないわけじゃない。毎日、脂質を控えて、ささみとプロテインだけ、とかそういうことじゃない。ぶっちゃけ何を食べてもいいって言われている。実は食べにくいもの、それが何かは後日解説する、はあるがドクターストップな食べ物はひとつもない。じゃあ「食事トレーニング」ってなんなのか?
ズバリ、栄養指導の先生に言われた言葉を紹介しよう。
「変えるのは食事“内容”ではなく食事“方法”です」
さて、今回のオペで俺は55年、人生を共にしてきた大切な仲間を失った。彼の名は「食道(しょくみち)」。そう、口から入れた食べ物や飲み物を一生懸命、胃に届けてくれる働き者な臓器である。
え?働き者?うっそー!って思ったあなた。たとえば胃は消化、腸は吸収、って重要な働きをしてるのに比べると食道(しょくみち)は何の働きもせず、ただ右から左に、いや上から下に食べ物を移動させてるだけじゃね?働き者っていうより怠け者?って思ってないだろうか。
その認識、半分合ってるが、半分間違っている。
確かに食道(しょくみち)は消化も吸収もせず、そのまま食べ物を運んでるだけという意味ではその通りであるが、どんなに大きい食べ物も、仮に逆立ちして食べたとしても必ず胃に届けてくれる律儀な働き者(専門用語でぜん動運動という)なのだ。逆立ちして食べたことないから知らんけど。
ちなみに、だから今の俺は食べてすぐ横になると内容物を戻してしまう身体になっている。食道(しょくみち)の大事な機能である胃からの逆流を防止する弁ごと切除したから。要は蓋のないペットボトルみたいなものだ。そのまま横にすればどうなるか・・・おわかりいただけるであろう。
だから先生からは「食事後、2時間は絶対に横になるな」と言われている。
・・・ああ、食道(しょくみち)よ!今までないがしろにしてすまんかった。
話がかなり脱線してしまったが、なぜ、食事トレーニングが必要なのか?について話を戻したい。
食道を全摘出し、胃を持ち上げ、喉と繋げる再建手術をしたことは前々回の日記に書いた通り。さて、この胃と喉を繋げるのに直径2cmほどの人口リング(名前はわからない)を用いて接合しているとのこと。例えて言えば、配管工事で繋ぐリングみたいな感じじゃないかな?
先に書いた通り、食道は大きい食べ物が入れば伸び縮み(ぜん動運動)して運ぶ働きをするが、このリングは人口物だからして、伸びもしなければ縮みもしない、いついかなるときも直径2cmのままだ。だからご飯を口一杯に頬張り喉に流し込むと詰まってしまうのだ。2cmしかないから。トイレ詰まりのごとく。
つまり、「変えるのは食事“内容ではなく、食事“方法”です」という意味は、リングに詰まらせないような食べ方を修得しろということだ。
最初、この話を聞いたとき、「簡単じゃね?」って思ったよ。あなたもきっとそう思うんじゃないだろうか。「だってよく噛んで食べればいいんでしょ。楽勝じゃね?」って。
でもね、これが思った以上に大変だったのよ。だって俺、早食いだし。そしてその早食いのリズム、55年掛けて培われたものだから身体に染みついちゃってるし。だから簡単じゃないことがすぐにわかった。こりゃ大変だと。それでまたまた強烈なストレスを感じるようになったという。
とにかく食事の時間が苦痛に
痛みが治り、いろんなコードから自由になって晴れ晴れしたのも束の間、今度はこの食事時間が強烈なストレスに。本当に憂鬱だった。
まず1回に口に運ぶ量はスプーン1/3。それを口に入れたらしつこく咀嚼。ドロドロにして流し込む。そして時間を掛ける。つまり口に入れる間隔を今までの数倍空けなければならない。一口食べて休憩、一口食べて休憩、という風に。リングを通って胃に落ちるまで待たなければいけないのだ。おかげでおにぎり1個とおかず1品を食べるのに30分以上掛かるようになった。っていうか掛けなければいけなくなった。
これが苦痛でなくてなんなんだ!
しかも病院食は不味い。時間を掛けなければいけないから、温かい料理もすっかり冷める。
これが苦痛でなくてなんなんだ!
術後、8日も過ぎ、俺と同じ手術をした人でも早い人は退院できる頃らしいのだが、残念ながら俺はできなかった。1回目の抗がん剤入院のときと同じ症状が現れたのだ。食事ができないことによる脱水症状で血液の何かの数値が向上しなくなったのだ。
退院するためには食事をしなければいけないのに、苦痛で食べることができない。だから血液の数値が上がらない。だから退院できない。一刻も早く退院したいから我慢してご飯を口に入れるも一口で嫌になる。だから脱水症状は続く・・・という負のスパイラルに陥ってしまったのだ。
これが苦痛でなくてなんなんだ!!!!!!!
神様からの贈り物
そんなある日、その悩みをある友人に打ち明けたところ、こんな差し入れを持ってお見舞いに来てくれた。
神様、ありがとう!
おかげで、ご飯をばくばく食べれるようになったという。冷めてもおいしかったんです。ご飯が。感涙・・・偉大なり、桃屋。そして永谷園。
あまりにも美味しすぎて、食べるスピードが上がってしまうという逆の悩みが出るほどに。苦笑
単純なことに、この日からご飯が食べられるようになり、そしたらなんと!血液の数値も向上、先生から「そろそろかな」と言われるように。すべては桃屋と永谷園・・・じゃなくて、友人のおかげである。超感謝!
神様からの贈り物だった。
術後13日目に
回診時、俺のベッドに来た先生がこう言った。朝の血液検査を見てのひとことだった。
「明日、退院していいですよ」
やったーーーーーーーーー!!!!!!!!!
思わず両こぶしを突き上げたよ。ロッキーみたいに。このときの喜びをなんて表現すればいいのか。「エイドリアーン」って叫べばよかったんだろうか。とにもかくにも4月から続いた全5回の入院(このときは8月)がようやく終わるという喜びに満ち溢れた瞬間だったように思う。
そしてそのとき先生は続けざまにこう言った。
「とにかく食事には本当に気を付けてくださいね。過去に調子に乗って退院祝いに焼肉食べて、喉に詰まらせてすぐ病院に戻ってきた人いましたから」
・・・・喜んだ興奮も一気に冷めた。
術後14日目に退院
お世話になった先生や看護師にお礼を伝え、病院を出た。そして帰宅。
いやー長かったなー。心の底から「もう二度と入院なんかしたくない」って思ったよ。あんなに苦痛な思いは懲り懲りである。
ということで全5回の入院生活の話は以上で終了。もちろん退院した今も「食事トレーニング」は変わらず続けている。そんな退院後のあれこれについてはまた次回に。
コメントや「いいね」や「スキ」、とても励みになってます。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?