『HollowKnight』の地下に広がる荒廃した王国で、私はムシの騎士になった
以前から気になっていた作品がPSPlusの2020年11月のフリープレイ対象となっていたのでプレイしてみました。パッと見のビジュアルと違い、骨太で歯ごたえのあるアクションゲームとなっており、ギャップを感じさせる酷いゲームになっている。ただし、満足度は高い。以下、感想をつらつらと書いていきます。
📃|『HollowKnight』とはなんぞや
『HollowKnight』は、2017年2月24日にSteam、HumbleBundleなどでPC向けにリリースされた探索型2Dアクションゲーム。翌年の2018年6月にはNintendoSwitch、2018年9月にはXbox、PS4でも配信が開始された。本作はいわゆる「メトロイドヴァニア」というもので、大きなダンジョンを探索しながら進めていくゲームとなっている。私自身はメトロイドヴァニアの作品をプレイした経験があまり無く、同じジャンルでプレイしたものは『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』くらいかもしれない。思い出せないだけで、たぶん嘘をついている。
全体的に「虫」をモチーフとしており、敵、味方を問わず「虫」だらけ。舞台となるのは虫がうごめく、薄気味悪い地下の世界。しかし、デフォルメされたグラフィックがその気味の悪さをマイルドにしているため、虫が苦手でもある程度受け付けられる作品となっている。
本作の目的は「地底の王国『ハロウネスト』が滅びた秘密を知る」ということ。ストーリーが明確に語られることは少なく、マップ上に遺されたメッセージや、他のキャラクターとの会話により、「何故、王国がこうなってしまったのか」ということを考察するような感じなので、考察好きな人はより一層楽しめる要素だろう。1粒で2度おいしい。
ちなみに、過去に4回の無料の大型アップデートがされており、現在では値段に見合わないボリューミーな作品に仕上がっている。
開発はオーストラリアのインディースタジオ「Team Cherry」。3人のゲーム開発者が独立して立ち上げたスタジオだ。1作目からこの仕上がりっぷりは恐ろしすぎる。次回作も期待大だ。
ローカライズは『Enter the Gungeon』と同じく架け橋ゲームズ。一行に表示できる文字数の関係で半端にページを跨いでしまう部分はあるが、しっかりと世界観を感じることができる良い翻訳だった。
⭕|快適操作! 最上級に気持ちの良いアクション!
動かし始めてからすぐにわかると思う。アクションの滑らかさに感動。軽快に飛び跳ねて攻撃する操作は快適で、数ある2Dアクションゲームの中でもトップクラスに気持ちが良い。後半になるにつれ、できることが多くなることと敵が強くなるため、なかなか忙しないアクションが多くなるが、上手く動かせた際は爽快感があって良い。
最初のうちはできるアクションに対して、マップが複雑だったりするので、少しストレスが溜まってしまうこともあるかもしれないが、2時間くらいは我慢して欲しい。ちなみに私は3時間やって、やっと空中ダッシュができるようになりました。
⭕|ムシなのに……かわいらしいグラフィック!
デフォルメされ、アニメチックな見た目が非常にキュート。主人公はちっこくて、ぴょんぴょん飛び跳ねながら進んでいく様子は最後までかわいらしい。時折差し込まれるムービーや各キャラクターの挙動も滑らかでかなり良くできている。道に生えている草や石柱、看板なども破壊できる。意味はないが破壊できる。気持ちがいい。色使いや演出も眼を見張るものがあり、あらゆる場面で感動してしまう。
特に、終盤のボスの演出は個人的に大好きで、見るたびに「うおー! かっけー!」ってなっていました。まぁ、その直後にボコられるのですが……。
終盤、かなりダークなエリアに入ってくると、デフォルメされてるとはいえ、少しグロテスクなデザインのキャラや演出が増えてくる。そういった表現が苦手な人は、途中でリタイアしてしまうかもしれない……。カサカサという音と共に黒いシルエットが横切るのはどうやっても防ぐことができない。苦手な人はプレイ動画をチラッと見てから始めたほうが良いと思う。
⭕|新しいエリアを探索できるワクワク感
新しいアクションを手に入れて、今まで行けなかったところへ足を踏み入れる瞬間が楽しい。「この先にはどんな道があって、どんな仕掛けがあるのだろう」というワクワク感が心地よい。それぞれのエリアには異なった特徴があり、背景やBGM、敵もガラッと変わるので、飽きずに進めることができて良い。ついついプレイし続けてしまう魔力がある。
⭕|美しく、切なく、儚さのあるBGMが良い
ピアノやバイオリン、鉄琴などのオーケストラで使われるような楽器を使ったBGMが多く使われ、まるで映画のような音楽が流れ続ける本作。それぞれのエリアごとに流れるBGMがしっかりとマッチしていて非常に心地が良い。また、効果音も気持ちよく、アクションをしていてストレスが少ない。マップ上に隠されたキャラクターの「声」の使い方も上手く、近づけば大きく、離れれば小さくなる音がヒントとなる仕組みもとても良い。鼻歌が聞こえ始めたら、地図を描く「コーニファー」が近くにいることがすぐにわかる。
作曲はChristopher Larkinさん。他には『OUTFOLDED』や『Expand』といったゲームの音楽を担当もしているらしい。全く知らないタイトル。勉強不足……。プレイ動画で音楽を聴いた感じは『HollowKnight』と同様にキレイなメロディで、ヒーリングミュージックのような感じだった。派手な感じはなく、神秘的なゲームにマッチした良い音楽です。
『HollowKnight』での個人的にお気に入りは、ゲーム序盤〜中盤あたりに聴くことになる「涙の都」のBGM『City of Tears』だ。降り続く雨が涙のようで、悲しみと切なさと美しさが入り交じったキレイな楽曲となっている。Spotifyでもサウンドトラックが配信されているので、ぜひ聴いていただきたい。
▲DLCの楽曲は別のアルバムとしてまとめられてます
🔺|これぞメトロイドヴァニア!? 良くも悪くも、迷子になりがち
メトロイドヴァニアでは当然かもしれないが、かなり迷子になってしまう。道中、地図を買うことでマップの確認ができるが、そこまで細かく描かれないため、上手く道を見つけることができない場合も多い。特に序盤は必要なアクションができなことで進めない道を前にして引き返さなければいけない場面が非常に多いため、メモをしながらプレイすることをおすすめする。中盤以降は、迷うことも少なくなってくるとは思う。
『HollowKnight』の攻略情報はネット上にたくさん存在するので、迷うことでストレスを溜めてしまうくらいなら、最初から攻略ページを見ながらのプレイでも良いかと思う。ただ、攻略の通り進むだけだとメトロイドヴァニア感が損なわれてしまうので、頼りすぎには気をつけよう。
❌|地獄のような、超絶難易度……!
アクションゲーム慣れしていないと苦戦することは必至。私はそこまでアクションゲームが下手ではない方だと思っているが、それでもつらい場所があった。
1つはボス戦。行動パターンの1つ1つはそこまで難しいものではないのですが、雑魚敵の召喚や複数の飛び道具などの「1対多数」のシチュエーションが多く、攻撃を避けきるのが難しい。また、攻撃のモーションが速く、欲張りすぎるとダメージを受けてしまうため、時間をかけて慎重に戦う必要もある。私にとっては苦手な戦法なので辛い。勝てない場合はYoutubeにボス戦の攻略動画も多くアップロードされているので、そちらを見るのもおすすめします。
もう1つは精密な操作。トゲだらけの道を進まなければいけない箇所があり、そこでは非常に正確な操作を求められる。「針に刺さったら即ゲームオーバー」ではないのが救いですが、少し前の位置までは戻されてしまう。繰り返しプレイして、最適な動きを身に着けなければならない。ただ、これは普通にクリアする上では避けられる場所もあるので、まだマシかもしれない。
▲ここは難所の1つかも
ちなみに、様々な媒体にて、難易度の高さやダークな雰囲気から「『DARK SOULS』のような〜」と並べられてしまうことが多い本作だが、開発者は『DARK SOULS』はプレイしていなかったらしい。ただ、『DARK SOULS』と『HollowKnight』に影響を与えた作品たちが似ているのかもね、と言及している。そのインタビューはこちら。
❌|死んだ場合の再開位置が不親切でつらみ有り
マップ内に点在する「ベンチ」で休憩すると、そこが死んだあとの再開位置となる。『HollowKnight』では、体力が0となると全財産を失って、再開位置で復活することになる。全財産を失っても、死んだ場所には主人公の「カゲ」が残っており、そいつを倒せば死ぬ前に持っていた全財産を取り戻すことができるので安心して欲しい。ただ、カゲを倒す前にもう一度死んでしまうと、「今死んだ状態」のカゲが作られてしまい、その前のカゲが持っていた財産はすべて消えてしまう。悲しい。
その再開位置となるベンチの場所が微妙な位置にあることが多い。先に書いた通り、難易度の高さにより死ぬことが多いため、何回も同じ敵を倒しながら同じ道を何度も進まなければならない。この繰り返しプレイが精神的に負荷となり、プレイを止めてしまう人も少なくないだろう。私も多分に漏れず、そうなりかけた一人だ。不慣れなジャンルであることと、直前にプレイしていた『Wings of Vi』や『The King's Bird』といったゲームでのリトライの快適さに慣れていたので、この道中のループはなかなか重かった。
終盤になると、自身でワープポイントを作成し、あらゆる位置からそこにワープすることも可能となるが、1つしか作成できないため、完全には解消されない。
同じ場所を何回も往復しないといけないのはメトロイドヴァニアでは普通かもしれないが、慣れていないとマップ移動でプレイがしんどくなってしまうかもしれない。
💬|続編も開発中!
2019年6月25日に、続編の情報が既に発表されている。作品名は『HollowKnight: Silksong』。『HollowKnight』のサブキャラクターの中でも重要な立ち位置にいるホーネットを主人公とした新作アクションゲーム。動画では、雰囲気やシステムを受け継ぎながらも、ホーネットに合わせた新しい要素もふんだんに盛り込まれていそうだ。書いている時点ではPCとNintendoSwitch向けにリリースされることだけは決まっているが、発売日は未発表。楽しみだ。
▲素直に楽しみ。
⭐|難易度が高いが、メトロイドヴァニアを体験したいならおすすめの名作
アクションゲームとしては難易度が高く、ゲームクリアまでの道のりは決して楽ではない。しかし、操作性の高さや上質なグラフィックとバッチリとハマったBGMなど、プレイする価値が非常にある作品。最後の最後には、プレイヤーの腕前が問われる超絶難易度のコンテンツも用意されており、骨太すぎる一品となっている。今回、私はフリープレイでプレイさせていただいたが、通常の価格で購入しても損はないと思う。
注意点は「虫」がモチーフになっているということ。ここさえ抵抗がなければ、素晴らしいゲーム体験が待っているので、ぜひともチャレンジして欲しい。
それでは。
おわり。