『ゴッホの耳』が示す私たちの現在地【森美術館『未来と芸術』展レポート】
現在六本木の森美術館で行われている『未来と芸術』展に行ってきた。膨大な展示数が鋭い思想の濁流となって脳内をかき回す感覚がたまらなく心地よい。刺激的な展示だったので、ぜひ多くの人に行ってみてほしい。
中でも個人的に衝撃的な作品があったので紹介したい。
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ゴッホの耳。
悲劇の天才画家ゴッホの親戚から提供された遺伝子を元に培養した「耳」の展示。彼の逸話を題材にしたこの作品は、一見ただのグロテスクなブラックユーモアだ。
しかしそれは、鑑賞者に「現在」を突きつける。「現在」の技術や、芸術や、思想。そしてそれらを担う人間について。
それから「現在」に至るまでの歴史や私たちが共有してきたものについて。
それに気付いたとき、ゴッホの耳はある種の神々しさを伴って、過去・現在・未来を繋ぐタイムマシンになった。
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『未来と芸術』展は森美術館で2020年3月まで開催中。