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特許調査なんて自分には関係ない?(ちょっと見てみると意外にも。。)
【今日のポイント】
「特許調査なんて自分には必要ない」、「特許調査って費用が高そう」と、感じている方も多いかと思いますが、
特許庁は無料で使える特許検索のサイトを公開しており、
通常のネット検索のように、キーワードを入れると、色々な技術的アイデアや事業検討のヒントを得る機会の一つとなりますので、
ぜひ、覗いて見ることをおすすめする次第です。
※>本記事は、特許調査に親しみを感じてもらいたいという観点でお話していますので、開発や事業、出願を始める前の本格的な特許調査は、ぜひ、専門家に依頼や相談をしていただければ幸いです(知り合いの専門家がいない場合でも、行政などの公的機関が紹介サービスを提供しています)。
1.どんなときに他社や自社の特許を調べるか?
あなたは、新製品の開発時や新規事業の検討時に、市場ニーズがあるかと同時に、
「この分野で先行している技術を持った企業はないだろうか?」や、
「この分野に出ていったときに、他者から権利侵害と訴えられるリスクはないだろうか?」、
「この分野で技術提携できる企業や大学はないかな?」
などの疑問を持った事はありませんか?
私は、特許調査を専門にしているわけではありませんが、
自分の業務の中で、よく、「この会社ってどんな特許を出してるだろう?」と、特定の会社の特許を調べたり、
「あの特許出願は、今どんな状態だろう?」と、特定の特許について、出願後の経過を確認したりしています。
また、ある程度の期間、研究開発を行ってきた企業ですと、以前に自社が出していた特許出願をみることで、
「先輩方はこんな開発をしていたんだ。これは今も通用するかも」と気付かされると聞くことがあります。
また、特定の技術分野について、「どんな会社がどんな特許を出してるだろう?」という視点で他社の特許出願を見ることもあります。
上記のように、技術開発のテーマや新規事業を考える際のヒントや提携先の候補、潜在的な競争相手の目安を得る際に、特許情報というのは、結構、役にたつ情報源となります。
特にビジネスモデル特許と呼ばれる、ビジネスモデルをコンピュータなどのICT技術を用いて実現する発明に関する特許は、技術開発を始める前の、事業アイデア検討の段階で出願されるものもあるので、
自社の事業分野やその他の分野の新規事業や業務改善のアイデアを考えるヒントにもなれば、協業先やライバルとなり得る企業を見つけるきっかけにもなりやすいと思います。
なお、特許情報の活用方法については、以下のブログトピックスなどもご参考になれば幸いです。
『AI利用のマッチングサービスにみる、「お客の課題発見」という特許情報のビジネス活用』
2.特許庁のデータベース
このように、特許情報は色々な場面で役に立つ情報ですが、特許事務所や大手企業などならともかく、有償のデータベースを利用するのは敷居が高いですね。
しかし、特許庁では、無料の情報データベースを公開しています。
私も、普段から大変お世話になっている「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」というデータベースです。
最初は、調べたい特許の番号などが分かっていないと、「どうやって使うの?」と戸惑うかと思いますが、
以下の特許庁のサイトでは、初めて使う方にも分かりやすいように使い方を掲載しています。
『特許公報を検索してみましょう』
https://www.jpo.go.jp/support/startup/tokkyo_search.html
上記のサイトからリンクを貼られているパンフレットやマニュアルは初心者から実務者まで利用者の特性ごとにJ-PlatPatの使い方を解説しています。
その他にも、ネットで「J-PlatPat 検索方法」で検索すると数多くの解説記事を見ることができます。
自分で触ってみるときには、まずは、
・今までに自社で出している特許や他社の特許で番号が分かるものがあれば、その番号を、
・興味のある企業があれば、その正式名称を「出願人/権利者/著者所属」の項目に、
・興味のある技術などは、その名称を「全文」や「要約/抄録」の項目のキーワードに(類義語も含めて)、
それぞれ入れて検索してみることから始めると分かりやすいかと思います。
特許庁の『特許検索ポータルサイト』
https://www.jpo.go.jp/support/general/searchportal/index.html
『特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)』
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0100
ここで、特許情報の検索方法としては、大きく
1>発明者、出願人(個人、企業、大学など)、特許の権利の範囲(請求項)、内容などの項目について、【キーワード】を使って検索する方法
2>特許分類(特許庁によって、技術分野ごとに細かく分類された分類)を使って検索する方法
そして、上記2つを組み合わせる方法があります。
前述の『特許公報を検索してみましょう』https://www.jpo.go.jp/support/startup/tokkyo_search.html で「キーワードで検索してみましょう」に記載されている方法が、1>に、
「さらに使いこなすには」に貼っているリンク先のマニュアル等には、2>も含めた検索方法が掲載されています。
例えば、特許や出願の番号がわかっている場合は、
J-PlatPatのトップページ左上の「特許・実用新案」のタブをクリックし、
プルダウンメニューの最初の「特許・実用新案番号照会/OPD」をクリックして、
出願番号や公開番号、特許登録番号の項目に、調べたい特許の出願番号や公開番号、登録番号のいずれかを入力して検索すれば、対象の特許のリストが表示されます。
複数の特許を検索したい場合は、上記の各項目に、スペースを入れて特許の番頭を記入します。
表示されたリストに掲載されている各特許(出願)をクリックすると、その内容を見ることができますし、
右端の「経過情報」をクリックすると、
その特許が現在、出願から登録までのどの段階で、どのように審査されているかなどが表示されます。
また、出願している企業名や、技術分野のキーワードで探したい場合は、
J-PlatPatのトップページ左上の「特許・実用新案」のタブのプルダウンメニューの2番目の「特許・実用新案検索」をクリックして、前述のように、
「出願人/権利者/著者所属」の項目や、商品の種類、技術分野や特定の技術、用途などの名称を「全文」や「要約/抄録」などの項目のキーワード欄に入れて検索することで、該当する特許の一覧が出てきます。
なお、上記の2>の「特許分類による検索」は、今回は割愛いたしますが、
調べたい技術分野の絞り込みや、検索範囲の拡大などを行う際には必要となってきますので、上記のサイトに掲載されているマニュアルやネット記事、後述の参考書などをみて、利用方法を調べたり、周りに特許調査について知っている方や、知り合いの専門家などがいれば聞いてみたりする事から始めてはいかがかと思います。
なお、この特許分類は、技術分野の変化に応じて改定されています。
例えば、最近注目を浴びている、GX(グリーントランスフォーメーション)については、技術分野横断的な検索を可能にするための資料を特許庁が掲載しています。
『特定分野:グリーン・トランスフォーメーション技術区分表(GXTI)』
https://www.jpo.go.jp/resources/statistics/gxti.html
また、特許を自分で調査するだけでなく、
以前のブログトピックス『意外と面白い?特許庁のコンテンツ』
でもご紹介した、「特許庁の特許出願技術調査」も、色々な技術分野を毎年選んで海外も含めて網羅的に調査した概要を公開しています。
ご自身の関心のある分野について、特許庁が今までに調査されていないか、一度除いてみることをぜひお勧めしたいと思います。
『特許出願技術動向調査』
https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/index.html
なお、以下の書籍なども、大変参考になるかと思います。
「特許調査入門 第三版 単行本(ソフトカバー) 2020/5/29酒井 美里 (著)」
3.転ばぬ先の杖_弁理士などの専門家に相談しよう
ここまで、「特許調情報は、自分でも無料である程度調べられるし、役に立つ」と、親しみを持っていただく事を目的としてお話してきましたが、
とはいえ、【効率よく、かつ抜け漏れなく】、調査対象とすべき特許を探して、その内容を把握することは、やはりスキルと経験を必要とします。
特許や商標などを出願する際の、先行技術の調査は、出願の依頼先となる特許事務所が行ってくれる場合が多いかと思いますが、
自社が新規事業を始めようとする際などに、他者が既に持っている特許の権利を侵害していないかと確認する「クリアランス調査」なども、
自社単独で行うことは困難であり、その事業や技術分野を専門とする弁理士の方や特許事務所に依頼することが必要となってきます。
とはいえ、「そんな特許事務所をどうやって探すの?」、「専門家に頼むと高額なコストが掛かるだろうからちょっと難しい」と感じるのではないでしょうか。
この点でも、国や地方自治体では、主に中小企業向けの支援を提供しています。
例えば、特許庁では、以下のサイトなどで、「アイデアの権利化」、「取得した権利を活用したい」、「海外展開を目指す」など、企業のニーズに応じた支援策や支援箇所の窓口などを紹介しています。
『中小企業の皆様へ 知的財産権を事業に活かそう』https://www.jpo.go.jp/support/chusho/index.html
また、東京都も、特許調査を含めて知的財産権の活用支援の支援を行っています。
『知的財産保護、活用への助成(知財戦略導入助成事業)』 東京都 産業労働局(https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/)のサイト。https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/shoko/chizai/jyosei
まだ、知的財産について、相談先をお持ちでない方は、まずは、上記のような公的支援サイトを覗いてみてはいかがかとお勧めする次第です。
【今日のまとめ】
・特許情報は、特許を出願するときだけでなく、技術開発のテーマ探しや新規事業を検討する際にも有用なヒントを提供してくれる
・特許庁は、無料で特許を検索できる「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を公開しており、初心者向けのマニュアルなども利用できる
・ヒントを得る、関心のある技術分野のプレーヤーなどを見てみる段階から、特許出願や、自社事業、製品が第三者の権利を侵害していないかを調査する段階などに進む際には、その分野に詳しい弁理士や特許事務所などの専門家への相談が必要であり、
このような支援先に関する情報も特許庁や中小企業庁が提供しているので、知り合いの専門家がいない方は、まずこれらのサイトを除いてみることをお勧めする次第です。
最後までお読み頂き、有難うございます(*^^*)!
コメント、ご質問お待ちしております(^o^)!