10月9日 ハフパット修道院
教会なんてここにくるまで山ほどみたから、たいして気分も乗らないんだけど、時間もあるし、せっかく来たし、とりあえずいってみるかとハフパット修道院へ向かう。
午前中に着いた。観光客も誰もいない独り占めの世界遺産。この修道院の中心である聖ヌシャン聖堂に入ってみる。
真っ暗。だんだん目が慣れてくるとすごいところに来てしまったと、おもわず「はぁー」と声を出してしまった。人が3人手を広げてようやく一周するほどの大きな石柱四本に支えられた空間は、石を積み上げ綺麗な曲線を描いたドームになっていて、いくつかの間口から自然の光線が上から下、左から右へと差し込んでいる。
足下は平たい大きな石碑のようなものがいくつも敷かれて少しでこぼこしている。どこを切り取っても千年前に造られたままという重みがある。神様の母体にでも入ってしまったかのような暗く不思議な空間。その中を一歩き、二歩きして、奥の扉を開けるとこれまた「はぁー」と言ってしまう石造りの教会になっていた。正面には壁の下から天井まで一杯に聖書を持ったイエスの絵が描かれている。教会の壁は天井に近づくとドームを描く曲線になっているものだから、描かれたイエスが前のめりになって、私の頭の上まで来ている錯覚がする。真上から「おまえは罪深いぞー」と言われて、「本当その通りでございますー」と言う気になる。
昼を過ぎると中国人か、韓国人かの団体が観光バスで一杯やってきて、聖堂に入ってくるやいなやセルフィーをばしゃばしゃとりあって、味わいもせずにそそくさと出て行った。もったいない。座ったりして「はぁー」「へぇー」とか言えばいいのに。
結局3時間もいて、もう一つの世界遺産サナイン修道院へ行く。歴史ある大切な修道院なのだろうけれどもハフパットの印象が強すぎて入ってこない。
山を下りて、次の街へ行くバスがあるか調べていると、親子が「今から私たちもその街へいくのよ」というから、連れて行ってもらうことにする。転がるように次の街へ。