【超短編小説】細(その7)#140字小説
父は病院と自宅を往復する晩年だった。病室で昼夜付き添う同居の姉を誰よりも頼りにしていたのだ。居心地悪い見舞いの最中、姉がトイレに立った。痰を詰まらせた父の口許に、咄嗟に吸引の細い管をあてがう僕。糊塗する邪念はなかった。鬼の形相で私の手を強く振り払った亡父。もう確執を消す術はない。
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父は病院と自宅を往復する晩年だった。病室で昼夜付き添う同居の姉を誰よりも頼りにしていたのだ。居心地悪い見舞いの最中、姉がトイレに立った。痰を詰まらせた父の口許に、咄嗟に吸引の細い管をあてがう僕。糊塗する邪念はなかった。鬼の形相で私の手を強く振り払った亡父。もう確執を消す術はない。
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