日本文化が西洋の芸術家に与えた影響から、日本人が気付かなかった魅力を探る
マウリッツハイス美術館に収蔵されているフェルメールの有名な絵『真珠の首飾りの少女』は1666年に完成したと言われています。その頃の日本はというと関ヶ原の戦いを経て徳川家康が江戸幕府を開き、徳川幕府がいくつかの世代に引き継がれているといった頃です。実はこの首飾りの少女は着物を着ているのではないかと言われています。
西洋美術の権威である田中正道氏によるとこの絵のほかにも当時のヨーロッパの多くの画家や音楽家が、日本に魅せられていたと言います。
フェルメールの『絵画芸術』、『天文学者』、『地理学者』など複数の絵において着物を着た人物が描かれているというのです。なぜでしょうか?当時の日本はオランダと貿易をしていたので、デルフト出身のフェルメールには周囲から当時の日本文化に関する様々な情報を得ていたのかもしれません。
哲学者デカルト。彼はフェルメールのモデルになっていました。当時のヨーロッパでは当然キリスト教が最も信仰されていましたが、そんな中デカルトは無神論者であったとされています。日本では仏教が到来し布教活動が活発に行われていたものの、無神論に基づく神道が受け継がれていました。
これは面白いですね。フェルメールは絵の中で、モデルの無神論者デカルトを通して自然信仰の日本への憧憬を表現していたのかもしれません。先述のようにキリスト教信仰が当たり前だった頃の静かなる主張?抵抗?だったとすると1つの優れた絵の中に何か深いものを感じ取ることが出来ますね。
イギリス留学時代に、私は2001年にゴッホ美術館へ行きました。日本画から受けた影響を素直に描いていました。歌川広重の江戸百景が『種まく人』から完全にインスパイアされている。『タンギー爺さん』の背景は富士山や着物の女性、農村がびっちり描かれている。
ゴッホ、モネ、セザンヌら巨匠の共通点は何でしょうか。
日本文化、日本画から影響を受けているという点なのです。
ゴッホは浮世絵を500枚以上コレクション。モネは日本庭園を自宅に造園。
コロナ前、全国の美術館を巡る、または立ち寄る外国人が増えてきているような気がしていましたが、彼ら特にヨーロッパから来訪した旅行者にとって親しんできたヨーロッパ画の「ルーツの一部」がここ日本にある。
個人的にまた日本画を見る楽しみも増えてきたなぁと思います。