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「女」のメガネをかけて見る

あの上野千鶴子さんが帯を書いてる注目の本。


これは、著者小林エリコさんの半生とともに、「女であること」の違和感、劣等感、そして今女として自分にできること、をとても素直な文章で書かれているノンフィクション。

正直、かーなり強烈な内容で生々しい描写も多いので、気分が落ちてる時はおすすめできない。でも、最後は明るいので、希望を持って最後の章まで読むと最後の言葉の重みを感じるはず。

著者は、性的虐待や暴力を経験し「女である=社会的弱者」であることに
ずっと疑問があった。

”女は男にとって入れるだけの”穴””
”女は男に擁護され生きる弱い存在”

結構強烈な表現なんだけど、著者の半生で積み上げられた男へのイメージはこうしたもの。正直、同じ女として、読むのが辛い箇所もある。

でも、現実問題、日本の性産業が世界的に有名で潤い続けるのは、日本の男性が「性のための女」を求め続けているからという一面でもある。日本男性には申し訳ないが、過激なAVの真似事でしか「性」を学んでこなかった人が多いということかもしれない。

世の中には、人間的に素晴らしい男性も多い一方で、この本に出てくる男たちは、男尊女卑な”クソ”ばかり。健全なメンタルの男性がほぼ出てこないので、著者が女性として自信が持てなかった理由は、人間として尊敬できる男性との出会いをまだ経験していないからかもしれない。

でも、私自身も自分が出産するまで「女=弱い」と扱われるのが、実は嫌で嫌でしょうがなかった。

以前働いていた職場の上司にこう言われたことがある。

「お前が男だったらなぁ・・・昇格させてやるんだけど。いつ子どもできて仕事休むかわからないじゃん?」

やっぱり、女であることはハンデでしかないんだ。そう思ったし、女として男より劣っているように扱われるのが、たまらなく嫌だった。

でも、今は違う。

母親になり、生まれて「女」であることに喜びを感じている。自分の体内で命を育て、その命と対面した時の感動は一生忘れないし、初めて我が子が母乳を飲んだ時の感動は、女ではないと味わえない喜び。

勿論、職場で昇格できないこと、転職したくても、通勤時間が短く、残業なし、急な休みが許される環境というのは、正規雇用ではなかなか難しい。以前のように夜に人と会ってご飯食べたり、お洒落なバーに行ったりもできない。そういう意味では、女であること、母であることは、社会的に制限だらけの弱者なのかもしれない。でも、私は生まれ変わっても女がいい。

私はそう思えているのは、自分の人生を自分で選択肢持って選べる環境にいるからで、自分を認めてくれる家族、仲間の中に居場所があるからかもしれない。

一方、この本に書かれているように、世の中には頼れる人がいなくて、居場所がなく、男に自分の人生の決定権を委ねコントロールされ、苦しみ続ける女性たちが多くいる。

周りからの「早く結婚しろ」「若いうちに子供産め」というプレッシャーに苦しみ、自分に自信が持てなくて、結婚も子どもを持つ未来も想像できず、時間だけが過ぎていく。

世の中の雑誌やネットには「男に選ばれる女」になるような、男ウケするヘアスタイル、ファッションなどが紹介され、「女は男に選ばれないと負け」という前提が成り立っている。

こうしたライフイベントにタイムリミットがあり「選ばれるため努力しろ」という社会の圧力を受ける女性の苦悩も、男性側からはなかなか見えてこないかもしれない。

だから私は、こうしたキラキラからほど遠い女性(ディスってるわけではない。)が書いたこの本を、多くの男性に読んでほしい。

男性もこの競争社会で「男らしさ」像に苦しんでいるはず。競争に勝てない男性たちが、社会的に弱い女性たちへ力を行使し、コントロールすることで満たされる。でも、それがどんなことか、この本を読むことで「女」というメガネをかけて、客観的に認識してほしい。

「男らしさ」「女らしさ」じゃなくて「人間」としてお互い生きやすい国になり、こうした悲しい事実を語る本がなくなり、幸福感の高い国になりますように。

最後に、この本の最後に書かれている一部を引用して終わりにしようと思う。

私も小林さんのように、声をあげていこうと思うし、こうして本という形で声をあげた小林さんの勇気に感謝したい。

女性の声を伝えられるのは女性。次の世代のためにも、声をあげていこう。

離婚した後の女性は、大概が貧困に追いやられている。養育費が支払われないのに、女性に与えられる仕事は非常勤のパート、介護や保育士など給料の安いものばかりである。
女性の貧困がまるで自己責任のように言われているが、結局は男性が自分の子供への責任を果たさず、国ですらそのことを問題視しない。

フェミニズムに「個人的なことは社会的なこと」という言葉がある。
離婚して子供を抱えているシングルマザーが陥っている貧困は、個人的なことではあるけれど社会全体に繋がっている。この国を覆う男尊女卑の思想が、現代のシングルマザーの貧困を生み出しているのだろう。

レイプなど、今現在法的に罰せられることなら声を上げて訴えられるが、法整備にされていないことについては声をあげても無視されることが多い。
夫婦別姓も未だに認められておらず、アフターピルは未だに薬局で気軽に買えない。
法律を変えるのはとても骨が折れることだ。それが男性にとって都合のいい法律なら尚更だ。これこれ、こういう理由で法律を変えてほしい、と伝えても、それを受け取る側が男性なのだから、なかなか変えてくれない。日本ではまだ女性の首相が生まれていないばかりか、女性議員の数は二十パーセント程度にとどまっている。
女性が心から生きやすい社会がやってくることを願うが、まだまだ遠いと感じる自分がいる。
不当なことを不当と言い、間違っていることを間違っているという、そんな当たり前の権利はずっと女性から奪われてきた。
これからも声を上げ続けよう。それが今を生きる私たち女性の役目だ。私達の後を生きる女性たちが生きやすいように。
そして、その社会は男性も生きやすい社会になるはずなのだ。男性に課せられた、男らしさというものは、決して男性にとって心地よいものとは言えない。凸凹だらけの社会が平坦になり、男と女が互いに尊敬し合える社会が到来するのを夢見ている。

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おかたむらアキコ
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