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忘れることは生きること。ファイリングされた私の記憶
ときどき思い出す光景がふと浮かんだけれど、以前よりかなりぼんやりとしていた。意識的に何度も思い出そうとしてみたけれどできなかった。
思い出すと涙が出そうになる光景だけど、思い出せなくても涙が出る。こんな風に思う記憶に触れるのは何度目だろうか。
忘れたくなかった。覚えていたかった。そう思い少し泣いた。
でも、そう思う度に、思い出す言葉がある。
「忘れることは生きること」
10代の終わりごろ、ラフォーレ原宿で行われたCoocoの展示会に訪れたときに見たCoccoの言葉。
「許すことは忘れること、忘れることは生きること」
当時、憎悪を持っている人たちがいて、腹が立って眠れないほどの気持ちを抱きながら過ごし、考えたくもないのに自然と沸き起こる怒りをどう対処してよいのか分からずただ無力だった。記憶を消し去りたい。ずっとそう思っていた。
この言葉を見たときに、その人たちのことを思い浮かび「そっか、許していけば良いんだ、そしたら考えることもなくなり忘れられる。それが生きるってことなんだ」
消し去りたい記憶や、年月を重ねるごとに忘れたくない記憶の悲しみを覚えるようなる過程を経て、記憶というものに惹かれていった。
新しい記憶は脳の「海馬」に蓄積され、古い記憶は「大脳皮質」へ転送されると言われている。あの光景も、きっと海馬から大脳皮質へ転送されファイリングされたにすぎないということ理解し、新しい記憶を蓄積する場所を確保した。生きる、前へ進むというのはこういうことなんだろう。
このことを知ったとき、昔観た映画のセリフをやっと理解することもできた。
ベルリンという映画の中で中谷美紀が「思い出せないかもしれないけど、忘れないから」と別れ際に友人に言うセリフがある。相手には「なんだそれ?」と言われ、私も同じく何だそれ?と思った1人で、10年以上分からなかったけれど、脳の本を読むようになってやっとわかった。
忘れていくことへの恐れを抱いていたわたしは、このことを知ったときにとてもとても救われた気がした。
ファイリングされた記憶はあるきっかけがあれば取り出せる。いつかそのトリガーと出会う日までさようなら。
二度と思い出せないかもしれないけれど、きっと忘れない。
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