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本来楽しいはずの育児で苦しむ人を減らしたい〜産科医パパとしての発信〜Note始めました

キャリアブレイクを選択した訳

「危なかった」
生ぬるいお風呂の中で冷や汗が出た瞬間でした。仕事でどっと疲れた中で、子供をお風呂に入れている時にふと意識が遠のいてしまっていました。

初めて子供と過ごすクリスマスの日は夜勤明け。気が付いたら睡魔に襲われ子供の横で寝てしまっていました。

「自分は父親として何をやっているのだろう」
子供の笑顔を見る度に逆に心苦しくなることがありました。

「本来楽しいはずの育児が、なんでこんな気持ちになってしまうのだろう」
それは私だけではありませんでした。

私の妻は体力は人一倍ありますが、ワンオペ育児の中で私に弱音を吐いてくれたことがありました。
私は産婦人科医として産後の母親の問題点について知識はあったものの、どこかで自分の妻は大丈夫だろうと楽観視していました。
今まで私に弱音を吐いたことがない彼女が、育児を通して初めてのことでした。
職場の雰囲気から育児休暇を取得できず、自分の弱気な気持ちで妻と子供のために育児休暇を取得しなかったことに強い自責の念を抱きました。

もっと育児に向き合いたい、妻を支えたいという一心から、一旦仕事を辞めるという選択をしました。
半年間のキャリアブレイクを取得し、育児にどっぷり浸かる経験をしました。
子供の成長を間近で見守る幸せを感じると共に、妻からも支えに対する感謝の言葉をもらいました。
言葉通り『二人』での育児が初めて始まったと思えた瞬間でした。
この経験から、育児は素晴らしく貴重な経験であると同時に、非常に過酷であり、夫婦二人で向き合わなければならないイベントだと感じました。

自己紹介

産婦人科医のたくまと申します。
約10年間、周産期医療に携わり、年間約2000件の分娩を誇る関西随一の周産期医療センターで研鑽を積み、周産期専門医を取得しました。
自身の育児の経験から、父親の育児への関わり方に疑問を抱くようになり、また産婦人科医として、妊娠、出産を母親一人で抱え込むことに対して問題意識を持つようになりました。
妊娠期からの父親の育成を目指して情報発信を行いたいと考えています。

育児休暇取得の現状と課題

日本では育児休暇取得希望者が多く制度もしっかりしているにもかかわらず、育児休暇取得率がまだ低いのは、私と同じように言いたくても言えない人が多いからではないかと感じます。
しかし父親の方々には、「できれば取りたい」という希望ではなく、妻と子供のためにも「取らなければならない」という義務感に変えるための意識改革が必要だと感じます。
産後1年間での母親の死亡の原因が、産後うつなどメンタル不調が原因での自殺であることが育児の大変さを物語っています。
そんな時代だからこそ父親の支えが必要だと言えます。

一方で、父親だけでなく職場の雰囲気や上司世代の理解不足も原因の一つとしてあると感じます。上司世代が子育てをした時代から昨今の育児事情は大きく変わり、核家族化に伴い夫婦二人で育児をしなければならない時代になりました。
さらに、女性の社会進出により、女性が育児に向き合える時間も減少しています。
そのため、夫の力が必須であることは言うまでもありません。
この事実を上司世代に理解してもらうことが、育休取得率上昇の第一歩になると思います。
ただし人員的に取らせてあげれない中小企業へのサポートや、育休取得者の同僚への応援手当など問題は山積みです。

しかし、育休取得率の数字だけを追いかける危険性もあります。
昨今、企業が育休取得率~%など数字でのアピールを競い合っているように感じます。
昨年の育休取得率の数字も30%超えと発表されましたが、育休の取得期間が3ヶ月未満であることがほとんどで、育休前後での父親の支援も決して十分とは言えません。
なんとなく数字が一人歩きしているように思います。

また父親側も、「とるだけ育休」という社会問題の背景には、父親の育児に対する自覚の無さ、何をして良いのかわからないという知識の無さがあるのかもしれません。
育児休暇取得率の数字だけの上昇では、育児の問題の根本的な解決にはなっていません。
本当に必要なのは、単なる数字ではなく、その中身です。
企業側、父親側の両者が妊娠、出産、育児には父親の力が必要であるという事実を理解し、本当の意味で父親の支援を推進する社会にしたいと強く望んでいます。



妊娠から育児までの父親の役割

一人の命を育てるという意味では、育児のスタートは妊娠から始まっています。
私は産婦人科医として多くの妊娠・出産を見てきましたが、妊娠・出産というイベントを妻一人で抱え、夫の支えが得られていないケースが多いことを問題視しています。
大切なインフォームドコンセントに夫が同席しないことが多々あったり、妊娠発覚後に夫に逃げられシングルマザーになってしまうという社会問題もあります。
胎児という一つの命を育てる責任は妻だけでなく、夫にもあることは至極当然の事実です。
周産期医療が進歩し、高齢妊娠が増加する現代において、不妊治療や出生前診断、胎児異常に伴う胎児治療、無痛分娩など、夫婦ともに精査や治療が必要であったり、夫婦で話し合いの上決定が必要な事項が増えています。
受動喫煙や感染症など夫側が原因で予後が変わる妊娠中の合併症も存在します。
また、周産期合併症には1分1秒が予後を左右する急速に悪化する重篤な疾患も存在します。
これは一番身近にいる夫が妻ひいては赤ちゃんの異変に気づかなくてはならないとも言えます。
父親達にはまずはこの事実を知ってもらうこと、また上司世代に対しては母親だけでなく、母親を支える父親にも妊娠期から絶え間ない支援が必要であることを知って欲しいと思います。

Noteで発信したいこと

産婦人科医であり、父親として育児に向き合った私が、客観的データと経験を基に、妊娠から出産、育児には父親の力が必要であることを広め、また父親に対する啓発活動を行いたいと思い、Noteを始めました。
ネット社会において、いつでも手軽に情報が手に入る時代だからこそ、正しくそしてわかりやすい情報の発信を心がけたいと思います。
同時にX(旧Twitter)でも発信を始めようと思います。
今までSNSを全くやってこなかった身としては、わからないことばかりでドキドキですが、どうか温かい目で応援頂けたら嬉しいです。
宜しくお願い致します。
今こそ父親達の力で育児の在り方を変えましょう!


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