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パパが絶対に禁煙するべき理由

こんにちは。もうすぐ2歳になるやんちゃ息子を持つ産科医パパです。
現在キャリアブレイクし育児に奮闘中。
本日は妊娠とタバコについて書きたいと思います。



夫が禁煙しなくてはいけない理由

妊娠中のタバコは良くないということはご存知かと思います。

ここで強調したいのが、妊婦さん自身が吸うだけでなく、旦那さんが吸ったタバコの副流煙を吸ってしまうこと(受動喫煙)も同様に害となります。

副流煙は妊婦さん、ひいてはお腹の中の赤ちゃんに害があります。
産後であっても、奥さんや赤ちゃんにとって害があります。


タバコのお母さんへの影響

具体的に妊婦さんにとってどのようなリスクがあるのでしょうか?

① 早く産まれてしまう(早産)リスクが上がる

喫煙によって早産のリスクが上昇することが報告されています。
報告によって様々ですが、妊娠32週よりも早く(予定日の2ヶ月前)産まれてしまうリスクは1.3〜2.5倍とされています。
(37週から41週までが正期産です)

早産で産まれた場合、まだ赤ちゃんは体の大きさが小さく、臓器の発達も未熟な状態で外に出てくるため、様々な合併症が起こる可能性があります。

<早産が原因で起こる合併症って?>

体温調整の異常
体温を調節する機能がまだ未熟で、皮下脂肪も少ないので低体温になりやすいです。
そのために寒くならないように余計なエネルギーを使ったり、病気にかかりやすくなったりします。

呼吸のトラブル

赤ちゃんの臓器の中で、最後に出来上がるのは肺と言われています。
34週未満で産まれた場合は、肺の成熟が未熟であり、呼吸のトラブルはほぼ必発です。
自分でうまく呼吸ができないため、酸素をかがせたり、人工呼吸器と言って、チューブを喉に通して機械で呼吸のサポートが必要になる場合があります。
中には長期間にわたって酸素が必要になり、退院した後も在宅で酸素が必要になる場合があります。


血圧の異常

血圧を自分でうまく調整できず、低血圧になりやすいです。
低血圧ということは全身の血の巡りが悪いため、様々な臓器に障害が起きてしまう可能性があります。
血圧を安定させるために薬を使用しなくてはいけないことがありますが、早産の赤ちゃんは血管が脆く出血のリスクがあります。
脳で出血が起きた場合には、神経発達に問題が生じてしまうこともあります。


その他にも感染症のリスクが増えたり、低血糖になりやすかったりなど様々です。


長期的な合併症

満期で産まれた赤ちゃんと比較して、神経の発達に問題が生じることが多いです。
言語発達、運動発達において遅れをとってしまうことが多いです。



ここで重要なのが、早産率は喫煙量に比例するということです。
つまり、禁煙により早産リスクを下げることができるということです。
禁煙が妊娠初期であればあるほど、早産リスクは低くなります。
なるべく早くに禁煙に踏み切りましょう。


② 感染症のリスクが上がる

子宮の中の感染症のリスクが増えると報告されています。
妊娠中に子宮内の感染症が起こると、お腹は張りやすく早産につながる可能性が高くなります。
熱が出たり、お腹の痛みを感じたり、最悪の場合敗血症と言って、菌がお母さんの全身に回って、命に関わることがあります。

またそれだけでなく、赤ちゃんにも感染が及ぶと、炎症が赤ちゃんに悪さをして、最悪の場合脳性麻痺など脳に多大な影響を与える可能性があります。


③ 妊娠中に胎盤が剥がれてしまう病気のリスクが上がる


胎盤は赤ちゃんとお母さんを繋ぐ命綱のようなものです。
通常は、赤ちゃんが産まれてから胎盤が剥がれて子宮の外に出てきますが、赤ちゃんが産まれてくる前に胎盤が剥がれてしまう病気があります。
それを常位胎盤早期剥離と言います。

これが起きると、赤ちゃんは酸素や栄養が貰えなくなり急激に状態が悪化し、最悪の場合死に至ることがあります。
また胎盤は血流が豊富であるため、胎盤が剥がれると大量に出血して、お母さんの命に関わることがあります。

つまり、赤ちゃんとお母さん双方にとって致死的な非常に怖い病気であり、タバコは常位胎盤早期剥離のリスクとして非常に有名です。


④ 胎盤の位置が低くなり出血のリスクが上がる

胎盤は本来子宮の出口にはありませんが、胎盤が子宮の出口を塞いでしまう前置胎盤という病気があります。

子宮の出口というと赤ちゃんが産まれてくる通り道になる場所ですが、そこに胎盤があるとどうなるでしょう。
先ほど胎盤とは血流が豊富と言いましたが、出口にあることによって大量に出血する可能性があります。

また胎盤の位置が低いところにあると下からのお産が難しく、帝王切開になる可能性も高くなります。

タバコは前置胎盤などの胎盤の位置異常のリスクとされています。


タバコのお腹の中の赤ちゃんへの影響

①赤ちゃんの奇形が増える

具体的には口唇口蓋裂と言って、口の中や唇にすき間や穴ができてしまうことがあります。
赤ちゃんが口唇口蓋裂を持って生まれてきた場合、食べ物を飲み込むのが難しかったり、言葉をうまく話せなかったりすることがあります。
(ただし、手術を受けることで、そのすき間や穴を閉じることができ、食べたり話したりすることができるようになり、美容面もほとんどわからないくらい綺麗に治ることがほとんどです。)


生まれつき心臓の形に異常がある
先天性心疾患のリスクも上昇します。
中には生後すぐに手術が必要であったり、激しい運動などができない病気もあります。

②小さな赤ちゃん(低出生体重児)で生まれてくるリスクが高い

小さい赤ちゃんだと予備能力が低いため、早産の項でもお話ししたような様々な合併症が起こることがあります。

また最近ではDOHaDといって、様々な疾病の原因が胎児期にあると言う概念が注目されています。

子宮の中の環境がその子の一生を左右してしまうのです。
子宮の中で十分な栄養をもらえていないと、いかにエネルギーの消費を抑えるかと言う、言わば省エネの体になってしまいます。

産まれてからもその体質は変わらず、肥満や糖尿病などの成人病になりやすいのです。

タバコのせいで、成人後も様々な疾病にかかってしまう可能性があると考えると、我が子のために禁煙しようと決心できると思います。



③ お腹の中で赤ちゃんが亡くなってしまう(死産)のリスクが増える。
死産の原因は様々で、半分以上が原因不明です。
しかし、喫煙によって死産が増えることは明らかであり、悲しいお産を避けるためにも禁煙をしましょう。


タバコの産後ママ、赤ちゃんへの影響

受動喫煙とお母さんのうつ症状との関連の報告があります。

産後はただでさえお母さんのメンタル不調を来しやすい時期ですが、旦那さんがタバコを吸っていると、よりお母さんのうつのリスクが増えてしまうのです。

また副流煙は赤ちゃんにとっても有害で、突然死症候群や肺の感染症、喘息、発達障害などとも関連します。



ここまでタバコのリスクについて説明してきましたが、禁煙したいと思っている人も多いはずです。

禁煙したいけどどうすれば良い?

病院によっては、禁煙外来というものがあります。
禁煙を考えているけどできない人は頼って欲しいです。

病院に頼るのはちょっとという人もいるかもしれませんが、妊娠、出産は待ったなしです。
ここで思い切って禁煙に踏み切って欲しいです。


まとめ

① タバコは副流煙であってもお母さん、赤ちゃんにとって有害です。

② 禁煙が早ければ早いほど早産のリスクは低くなります。

③ タバコは感染症、常位胎盤早期剥離、前置胎盤など妊娠中の合併症のリスクとされています。

④ タバコは赤ちゃんの奇形、低出生体重児、死産のリスクとされています。

⑤ 禁煙外来など病院を頼ってなるべく早く禁煙に踏み切りましょう。

2024/8/25時点のエビデンスを元に作成しています。


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