見出し画像

性教育におけるパパの役割を考える



学校では教えてくれない性教育

中学生になると本格的に性教育が始まりますが、カリキュラムを見てみると、内容は妊娠の仕組みと性感染症(エイズだけ)だけで、まだまだ不十分だと感じます。

産婦人科医からすると、妊娠した場合どのような経過を辿るのか、どれくらい妊娠出産が大変なものなのか、初めての性交渉前にワクチンを打つことが望ましいこと、具体的な避妊方法、万が一望まない妊娠をした場合に助けを求める手段は?などなど、中学生のうちから知ってほしいことは山程あります。

若くして望まない妊娠をしシングルマザーで苦しんでいるママ、ましてや赤ちゃんの遺棄という悲しいニュースも散見されます。
若い頃からの性教育が重要であることは言うまでもありませんが、まだまだ日本では進んでいないのが現状です。

学校のカリキュラムを抜本から変えるのには時間がかかる中で、性教育における家庭の役割は非常に重要になってくると思います。

ここでは自分の大切な娘さんを守るため、そして大切な息子さんにパートナーを守るための指導をするために、パパが出来ることを考えます。



パパが「娘」を守るために知るべきことは?


① HPVワクチン

子宮頸がんという癌をご存知でしょうか?
子宮の出口の頸部というところに発生する癌で、国内では、毎年約1万人が子宮頸がんにかかり、約3000人が亡くなっています。
患者数も死亡率も増加している癌です。

原因としてヒトパピローマウイルス(HPV)という性交渉で感染するウイルスが関係しています。

HPVワクチンを打つことで、子宮頸がんの60~70%を予防できると考えられていて、世界保健機関は、性交渉を経験する前の10歳代前半に接種をすることを推奨しています。

日本では2013年からHPVワクチンの定期接種が始まったのですが、接種後に問題行動など多様な症状が生じたとする報告があって、全面的に差し控えられてしまいました。
しかしその後ワクチンとの因果関係は否定され、またワクチンで防げたはずの子宮頸がんの患者数の増加により、HPVワクチンを積極的に打つように方針が変わっています。

ワクチンを打てば防げる癌。
性交渉を経験する前に打つべきワクチン。

大切な娘さんを守るために、ワクチンの接種に連れて行ってあげてください。


② 避妊法、緊急避妊(アフターピル)

避妊方法には、コンドームやIUDなどの子宮内器具、腟外射精などがありますが、ピルの内服が最も思春期に推奨される避妊法とされています。

ピルの内服は、避妊方法の中でも最も避妊率が高い方法です。
しかし、日本ではあまり服用している人が少ないのが現状です。

ピルは、思春期女子を悩ませている月経困難症の改善など、避妊以外の利点もあります。
さらに卵巣癌や子宮内膜癌に対する予防効果も報告されています。
スポーツの大会や受験などで、月経を調整する場合にも使用しやすいです。

なんとなくピルは怖いと思っているお父さんお母さん世代もいるかと思いますが、副作用を減らすために色々な種類のピルが出てきており、一度婦人科で相談してみても良いと思います。

少し話が脱線しましたが、パートナーができた場合に、無計画な妊娠を避けるためにも、ピルの内服を考えて良いと思います。
ただし性感染症については防げないので、パートナーにコンドームを着けてもらう必要があります。


もし万が一、娘さんが望まない性交渉や性被害に会ってしまった場合には、アフターピルと言う薬で守ることができるかもしれません。
性交渉があった3日以内に薬を1 錠飲んでもらえれば、90%の妊娠は防げます。
婦人科でなくても、緊急で救急外来を受診し処方してもらえることが多いです。
もしもの時に備え、娘さんを守る手段として知っておいてください。


③   流産手術

万が一、望まない妊娠をしてしまった場合はどうなるのでしょうか?

妊娠12週未満であれば、流産手術が可能であることを知っておいてください。
近年は、流産手術の主流であった子宮内を器具で掻き出す掻爬(そうは)術から変わって、吸引療法というより体に負担が少ない手術に変わってきています。
吸引療法は、手術時や術後の痛みが少なく、子宮への損傷が少ないと言われています。

また、手術をせずお薬を飲んでもらって中絶することもあります。
日本でも2023年に飲んでもらう中絶薬が承認されました。
手術ほど確実性はないですが、体の負担を考えると飲み薬も選択肢かと思います。

妊娠12週を過ぎてしまっても、妊娠22週未満であれば法律上中絶は可能です。
ただし陣痛を起こす薬を使うので、お産を経験することになり、また死産届けも必要になります。

妊娠するとお腹が大きくなるだけでなく、つわりや眠気、腰やお腹の痛みなど多くの症状が出てくるので、普段から娘さんの様子に気を配ることが大切ですね。


④   心のケア PTSD(心的外傷後ストレス障害)

性被害は、時にPTSDという心的トラウマを発症させる恐れがあります。
急にその光景がフラッシュバックして、恐怖に襲われたりしてしまいます。
そんな時に家庭が果たす役割は計り知れません。

無理にアドバイスしようとせず、そばにいて話を聞いてあげるだけでも救われます。


パパが「息子」に教えてあげれることは?

息子への性教育においては、よりパパの役割が大きくなると思います。
私も思春期の頃は、母親に相談するのは気が引けたことを思い出します。

大切なパートナーができたときに、パートナーを守るために何ができるのか?
パパはしっかり教育する必要があります。

学校でも教えられることですが、妊娠について再度教えることが重要です。
性交渉で妊娠するかもしれない。妊娠したら赤ちゃんが産まれる。赤ちゃんを育てるということはどれだけ大変で責任が伴うことなのか。
よくよく話をする必要があります。

そして避妊については女性だけでなく男性もしっかり考える必要があり、誤った情報が溢れるネット社会において、パパの教育が重要になってきます。


① コンドームの使い方

無計画な妊娠を防ぐために、避妊方法についての教育が必要です。
男性側からすると、最も確実なのがコンドームの着用です。
女性側からしても、避妊だけでなく性感染症の予防の上で重要です。
しかし、コンドームについては、実際に扱ってみないと使い方がわからないと思います。
何より購入する手立てがないことも多く、実物を与えて使い方の指導をすることが大切です。


② 男性もHPVワクチン


娘さんのところでHPVワクチンについて話しましたが、今や男性もHPVワクチン接種が推奨されています。

男性も、HPVが原因でかかる病気があるのです。
HPVは、尖圭コンジローマという外性器のイボや、喉や肛門の癌の原因になることもあり、ワクチンはこれらの病気を防いでくれます。

加えて、男性がワクチン接種による感染予防をすることで、性交渉によるHPV感染からパートナーを守り、子宮頸がんの予防につながります。



まとめ

① 若い頃からの性教育が重要ですが、まだまだ日本では進んでいないのが現状です。そのため家庭での性教育の役割は非常に大きいと思います。

② パパが娘さんを守るためには、初めての性交渉前にHPVワクチンを打つこと、具体的な避妊方法(主にピルの内服)、万が一のための緊急避妊(アフターピル)や流産手術、心のケアについて知る必要があります。

③ パパが息子さんに、パートナーを守るための指導ができることとして、コンドームの着用の仕方やHPVワクチンの接種があります。

2024/9/8時点でのエビデンスを元に作成しています。

これからも妊娠、出産、育児に関連する記事を書いていきますのでスキまたはフォローして頂けますと幸いです。
宜しくお願い致します。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?