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パパが気を使うべき食事。妊娠糖尿病について知る。

(夫) 今日仕事で遅くなるからご飯待ってて。

(夫) 締めのラーメン食べに行こう!

妊婦さんの奥さんにこんなこと言ってないでしょうか?

旦那さんは妊婦さんの食事時間や内容に気を使う必要があります。
そしてもし奥さんが「妊娠糖尿病」になってしまったら、特に食事のことを気に掛けてください。



妊娠糖尿病って何?

妊娠中に初めてわかる糖代謝異常と定義されています。
糖代謝異常って何でしょうか。

糖代謝とは、食べた糖を体のエネルギーに変える働きのことです。
インスリンと言う名前のホルモンを聞いたことがあると思いますが、インスリンが血液中の糖を細胞に送り、エネルギーとして使えるようにします。

糖代謝異常とはこの仕組みがうまくいかなくなることを言います。
インスリンがうまく出なかったり、インスリンは出ているけど効きが悪くなってしまい(←妊娠糖尿病はこっちがメイン)、糖が細胞に入らず血液中に残ってしまいます。
その結果、血糖値が高くなりすぎる状態が続きます。
これが糖代謝異常です。

そもそも妊娠中は、赤ちゃんにも十分な血糖をあげようとするので、血糖は上がりやすいです。
また、妊娠中のホルモンの変化や胎盤から出るホルモンによって、インスリンが効きにくい体になっています。
そのため妊娠中には糖代謝異常が発生しやすく、妊娠中に糖代謝異常を発生した場合に妊娠糖尿病と診断されます。

具体的には妊娠中期に、血糖負荷試験というジュースを飲んでどれくらい血糖値が上がるか(インスリンがしっかり効く体なら血糖値を目標値まで下げれる)という検査をして診断します。


妊娠糖尿病で厳格な食事指導が必要な訳

妊娠中に高血糖にさらせると、お母さんにとっても赤ちゃんにとっても様々な不都合が生じます。

 お母さんにとっての不都合

① 妊娠高血圧症候群
妊娠糖尿病を発症したお母さんは、同時に妊娠高血圧症候群を発症しやすいと言われています。
妊娠高血圧症候群は、妊娠中に血圧が上がる病気であり様々な合併症が起こります。
けいれんや脳出血など怖い合併症もあります。
妊娠高血圧症候群については、また別でまとめようと思うので読んで頂ければ幸いです。

② 将来的な糖尿病のリスクの増加
妊娠は将来の負荷試験(妊娠中に起きたことは将来的に起こりやすい)とも言われるように、妊娠糖尿病の方は将来的に糖尿病を発症しやすいです。
産後10年以内に15%以上の人が糖尿病に以降するとも言われており、産後も血糖のフォローが重要になります。


 赤ちゃんにとっての不都合

単純にお母さんからたくさんの血糖をもらうため大きくなりやすいです。
(糖代謝異常が重症だと、胎盤の機能が落ちて逆に小さくなってしまうこともあります)

大きい赤ちゃんはどんなことがリスクなんでしょうか?

①  胎児死亡
怖いお話になりますが、お腹の中で亡くなってしまう胎児死亡のリスクが上昇します。
赤ちゃんは高血糖にさらされ続けると、低酸素になりやすくそれが原因でお腹の中で状態が悪くなってしまったり、最悪の場合お腹の中で亡くなってしまうことがあるのです。

帝王切開の増加
大きい赤ちゃんはうまく産道を通れず帝王切開の頻度が増えます。

肩甲難産(けんこうなんざん)
赤ちゃんは通常頭が一番大きく、頭が出てきてくれればそれ以降体はスムーズに出てきてくれます。
しかし、大きい赤ちゃんは頭だけでなく肩周りが大きくなりやすいと言われています。
そのため、頭は出てきたは良いけど肩周りが出ず、肩が産道に引っかかって出てこないという事態が発生することがあります。
これを肩甲難産と言います。
肩が出てこないため、無理に出そうとして腕の神経に障害が残ってしまったり、骨折してしまったり、脳は低酸素にさらされ続けるので、最悪の場合脳性麻痺や死亡の原因になってしまうことがあります。

低血糖や呼吸障害
高血糖にさらされ続けた赤ちゃんはインスリンと言う血糖を下げるホルモンが多く作られています。
産まれた後は、お母さんからもらう血糖がなくなるため、血糖を下げようとするインスリンだけが残ってしまい、逆に低血糖になりやすいと言われています。
低血糖を放っておくと手足のピクつきやおっぱいの飲みが悪い、眠ってばかりなどの症状が出ることがあり、生後は頻回に血糖値のチェックを行い必要に応じて糖を補う治療が必要になります。
またインスリンは、呼吸をするために大切なサーファクタントと言う物質を作るのを妨げてしまい、呼吸のトラブルも起こりやすいと言われています。

発達障害、糖尿病
新生児期に低血糖があったり、お産時のトラブルがあると将来的に神経発達に問題が生じやすく、発達障害が増えると報告されています。
また糖尿病のお母さんから産まれた赤ちゃんは、将来的な糖尿病のリスクと言われています。

このように、妊娠中に血糖が高い状態を放置しておくことは、お母さんにとっても赤ちゃんにとってもたくさんの不都合が生じます。
そのため、血糖を適切な値に維持することが大事であり、妊娠中の食事時間や内容はとっても大切なんです。



妊娠糖尿病ではどんな食生活になるの?

食事による急激な血糖値の上昇が良くないため、食事の1回量を減らして回数を増やす分割食が勧められます。
具体的には、1日3食ではなく1日6食になります。
朝昼夕食の間に付加食という間食を挟むことになりますが、血糖値の乱高下をなるべく避けるためにも、きちんと時間を決めて食べることが大切です。

また栄養素の中で、最も血糖値に影響を与えるのが炭水化物です。
炭水化物が過剰になっても少なすぎても良くないため、炭水化物の量についてはより気を付ける必要があります。
妊娠糖尿病になった人は、通常栄養師さんから指導を受けることになります。

また、食前後の血糖値を測定する手段として、指に細い針を刺して血糖値を調べる手段があります。
それ以外にも、腕やお腹に機械をつけて、携帯をかざすだけでリアルタイムに血糖を測れる手段があります。
携帯をかざさなくても、アラームで低血糖や高血糖を教えてくれるシステムもあります。

私も実験で付けたことがありますが、「こんな食事で血糖が上がりやすいんだ!」と食事内容を見直す良いきっかけになります。
(炭水化物を食事のはじめに食べると上がりやすい。カレーはめちゃくちゃ上がりました…)

食事をしっかり気をつけても血糖値が下がらない場合には、インスリン注射が必要になります。


パパに出来ることは?

妊娠糖尿病と診断を受けたお母さんは、お母さん自身のため、そして赤ちゃんのために血糖を厳格にコントロールする必要があることはわかってもらえたでしょうか?
そのために最も重要なことが食事の時間や内容に気を配ることです。

つまりパパができることとして、夜遅い時間のご飯に付き合わさないことや、炭水化物メインの誘惑の多い食事に誘わないことです。

ママは赤ちゃんのために妊娠中唯一の楽しみと言っても過言ではない「食事」を我慢しているのです。
そのストレスは半端ではないと思います。
その頑張りを理解してあげてください。
パパにとっても、ご自身の食事を見直す良いきっかけになりますよ。



まとめ

① 妊娠中は様々な要因でインスリンが効きにくい体になり、糖代謝異常が起こりやすいです。妊娠中に初めて糖代謝異常が見つかった場合を、妊娠糖尿病と言います。

② 妊娠糖尿病によるお母さんのリスクとして、妊娠高血圧症候群の併発や将来的な糖尿病のリスクがなります。

③ 妊娠糖尿病による赤ちゃんのリスクとして、胎児死亡、帝王切開や肩甲難産のリスク上昇、低血糖や呼吸障害、将来的な発達障害や糖尿病の発症のリスクがあります。

④ 妊娠糖尿病で最も重要なのが食事時間や内容です。1日6食の分割食や炭水化物の量に気を使う必要があります。

⑤ パパにできることとして、夜遅い時間の食事に付き合わさない、炭水化物メインの誘惑の多い食事に誘わないことです。ご自身の食事を見直す良い機会と思って、奥さんと一緒に食事の見直しをしましょう。

2024/9/12時点でのエビデンスを元に作成しています。

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