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プラトン知識のJTB説とゲティア問題の再評価

知識のJTB説とゲティア問題は、一般的に後者が前者を否定する関係にある。

以下のゲティア問題はWikipedia(2024/09/06)の例を参照・改編したものである。

…スミスとジョーンズはある会社の採用面接に来た。スミスはここである信念を持つ。

スミスの主張:『ジョーンズが採用される』
理由:『金のある方が採用されるからだ』

その後、ジョーンズが採用された。そのときスミスは、やはり自分の信念の通りだと思った。だがこのとき、スミスは誤って『偶然による知識』『適切な理由による知識』として持っていただけなのである。なぜなら、スミスは後から知ることになるのだが、スミス自身も金を懐に持っていたからである。ならば、上の主張と同等に『スミスが採用される』という推論もされなければおかしい。なぜなら、『金のある方が採用される』からである。しかし、スミスが自身の懐にあった金の存在に気づかなかったので、そうはならなかった。むしろ起きてしまったのは、ジョーンズが採用されたので、誤った推論が訂正されずに、それが『適切な理由による知識』となってしまった、ということである。

それは、スミスが、真の意味では知識(適切な理由に基づく知識)を持っていたとは言えない、ということになる。

ここまでがゲティア問題の概要である。以下はその後のスミスがどう振る舞うのかの一つの示唆的なストーリーとして考えられるものである。

…スミスは、ジョーンズが採用されたことを受けて、そして懐の金の存在に気づく事によって、金の有無とは関係なく採用は決まったことを理解する。そしてスミスは自らの非知識を反省して『金の有無とは関係なく、他の基準(資格の有無や人柄など)で採用は決まる』と非知識を新たな知識にした。

このように、古い知識を新たな知識へ刷新していく運動を見れば、プラトンのJTB説は未だに妥当なものであることが分かる。誤った古い知識は真なる知識に至るための一過程だからである。

つまり、ゲティア問題の示唆するのは、ゲティア問題とは知識のJTB説を完全に否定する材料なのではなく、むしろその改善を促すきっかけとなるものである、ということである。


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