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レーマン製菓の缶

引越しの時にうんざりしながら処分したものはいろいろあるが、贈答お菓子の缶もうんざり処分アイテムの一つだった。特にヨックモックと鳩サブレは呆れるくらいあった。無目的に溜めてた空き缶や、ここ12年くらい縁の無いご祝儀袋などが出てくる缶を、キーってなりながら捨てまくった。

でも缶の全てがゴミだったわけじゃない。ミシン糸とボビンとミシン針を収納して、高頻度に開く缶の一つが、レーマン製菓の缶。

びかびか光って立派だにゃー

この、無駄にロココで、無駄に柄々しているのが一周回って素敵。

ロココという言葉を、こないだ辞典でしらべてみたら、華麗のみにて内容空疎の装飾様式、と定義されていたので、笑っちゃった。名答である。美しさに、内容なんてあってたまるものか。純粋の美しさは、いつも無意味で、無道徳だ。きまっている。だから、私は、ロココが好きだ。

「女生徒」太宰治より

そんなロココな缶をミシン仕事などしながら眺めていたら、あ、この絵は見たことある、エリザベート・ヴィジェルブランの自画像だ、って気づいてしまった。

よーく見ると下フレームにÉlisabeth Vigée Lebrunって書かれてる

この人はマリー・アントワネットの肖像画をいっぱい描いてて、仲良しでもあったらしい。「ベルサイユのバラ」にも登場してる。この自画像はWikipediaにも載ってる有名作品。

フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵とのこと。

さて、こうなると他の絵も気になる。天面と側面の5枚の絵の画家とタイトルを知りたい。

天面の絵は

Franz X. Winterhalterって書かれてる

こちらの画家さんも王族や貴族の肖像画が得意だったよう。ヴィクトリア女王のお気に入りとは、ヴィジェルブランさんと同レベルの大物だ。

この作品のタイトルは「侍女に囲まれたウジェニー皇后」。Wikipediaにも載ってるので代表的な作品なのだろう。こういうコテコテの西洋画って、主役が主役だとわかるように描かれてるのが面白い。私は美術の心得は無いけど洋裁ならわかるので、ついお洋服に目がいくのだが、お洋服の格が違うから皇后と侍女の区別がつきやすいというのもある。まあ侍女のお洋服の絢爛さもすごいけどな。こんなにたっぷりギャザーを寄せるにはスカート部分だけでも布が10mくらい必要なのではないだろうか。脱水機も無い時代、これを洗った後に乾かすのはめちゃくちゃ大変だっただろう。ヨーロッパは乾燥してるから生乾きで臭くなったりしないのかな。こちら、フランスのコンピエーニュ城美術館所蔵。

ヴィジェルブランの反対側の側面はこんな絵。

Samuel Baruche Halle

日本語版も英語版もWikipedia無しのようで、ドイツ語がヒット。

そして作者名からこの絵がヒットしない。Googleレンズでもお手上げ。マイナー作品なのか作者名の誤記なのか。

気を取り直して残りの2面。

Ernest G. Girardotだそうです

よし、今度は英語版Wikipediaがあった。肖像画がご専門だったようです。

でも、こちらも作品画像がヒットしない。どういうこと? レーマン製菓の秘蔵?

最後はこちら。

Auguste Toulmouche

日本語Wikipediaがあった。

こちらは、雰囲気が近い絵はあったけど、ちょっと違う。

というわけで、5面中作品が判明したのは2点だけ。残り3点も著名な画家の作品なのだろうけれど、インターネットの世界ではレーマン製菓の缶画像でしか参照できない。これらの絵画の出所をレーマン製菓さんに取材してみたい。