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なでしこ銘柄

「なでしこ銘柄」という官製テーマを知った。
脱力するやらイラっと来るやら。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/nadeshiko.html

The お役所、っていうネーミングセンスに脱力。
そして、こんな時だけ「女性」とか持ち上げられることに、労働者&投資家として、イラっとくる。

日本のジェンダーギャップ指数が146か国中118位という、超不名誉なポジションにいるのは、女性の政治参画が極端に低いからだ。そして女性が政治参画しにくいのは、選挙の供託金が他国の類を見ないほど高額で、許容されている選挙運動が前時代的すぎるからだ。やるならここから手つけないと。


経済面のテコ入れももちろん必要だ。解雇規制が大きい中で、女性の非正規雇用が調整弁になっている点を是正しないといけないのだが、これもお役所が率先して変えないといけない。バブル崩壊後の不況時に公務員叩きをした国民とマスコミもダメだったと思う。不況の時こそ、公務員の正規雇用を増やすべきだった。今、市役所レベルだと半数近くが非正規雇用(年度任用)らしい。そして技術系公務員はどこも不足している。もっと待遇を上げて採用枠も増やし、公務員に応募が殺到して、民間も魅力的な条件を提示しないと採用できないような競争を起こすべき。そもそも日本の公務員の人数も国際的には低水準だ。

まずは法律と公務員の雇用を変えるのが先なのに「なでしこ銘柄」とか言われても、ねえ。

あと、この名称、お役所センスだからというのとは別に、本当にどうにかした方が良い。なでしこJAPANが先行しているから倣ったのだろうけど、「才色兼備」とか「見た目はおしとやかだけど芯が強い」的な意味合いが強い言葉だと思う。なでしこ銘柄、というときに「色」は求める必要なくない? 天照銘柄とかイザナミ銘柄なら、まあわかる。イザナギ景気があったのだから、「イザナミ銘柄」が良いんじゃないのかな。知らんけど。

最大の問題は、この指標を見て投資しようって気になる投資家がどのくらいいるか、だ。日本取引所グループもツッコミ入れたら良いのにね。

私は、ESGだのSDGsだのを投資判断に使わない。なでしこもそうだ。投資家に利益をもたらしそうかどうかと、女性活躍に直接の関係は無いし、サステナブルな運営はとかく利益と逆行しがちなものだ。サステナブルな企業活動も女性活躍もやらなきゃいけないことだけれど、そしてそういうことを率先してやれる程度には体力のある企業という点での評価はできるのかもしれないけれど、ROEとかPERより優れた投資判断指標だとはとうてい思えない。株を買うのはシビアな経済活動であって、応援とか寄付とかではない。フェアトレードと銘打ってるコーヒーを買おうかな、という時に、フェアトレード分が100%なのか5%なのかは誰も監視してない、くらいの疑いの目は当然持つ。再生紙を使うからエコなんです、と名乗る商品にも環境負荷(古紙を回収する輸送と漂白剤が余分に必要だ)があるという前提で商品を選ぶ。株式の個別銘柄だって同じことだ。誰が認定しようが、既存の指標を超えるものでなければ誰にも相手にされない。

「女性が活躍したら企業業績が伸びる」とは言えないはずだ。そんなに女性の方が優秀なら最難関大学群の学生も教授も女性だらけになるはずだが、そんなことはない。女性だから男性と同等に活躍できない、という認識は是正されるべきだが、女性だから男性より良い企業活動ができるわけではないのだ。出産育児介護を経ても就業し続ける体力オバケな女性か独身あるいは子どもを持たない女性しかキャリアアップできないから、女性経営陣になるのが難しいという点も見逃してはいけない。

新しい指標やお墨付きは、経済活性化策のつもりなのだろうけれど、こんな小手先でどうにかなるわけないじゃん。大丈夫かよ、経済産業省。