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ちいかわのスイカに学ぶリスク対応 (T3:Pt0:Ch03)

フリーレンの次がちいかわになるとは(´・ω・`)


ちいかわ 2024年8月24日公開分でスイカを食べる

ちいかわという漫画があります。

ちいかわ、ハチワレ、うさぎという三人(三匹)のかわいらしいキャラクターを中心に、かわいらしいエピソードやかわいらしくない(こわい)エピソードが綴られるフシギな作品です。ほのぼのかわいいキャラと話に見せかけて、エピソードや描写の端々から悪夢みたいな不穏な世界の気配が漂ってくる……

その8月24日投稿分で、ちいかわたちはうさぎが運んできたスイカを三人で食べています(この場面に到る経緯もとても“ちいかわらしい”ので、ぜひ8月22日投稿分からお読みください)。

スイカを食べる時に気になるのが種の始末。三者三様の処理の仕方をしています。

読んでいて、ふと「種の始末の仕方はリスク対応の分類のたとえになるんじゃないかな」と思いつきました。

というわけでこれを書いています。

リスクの対応(Treatment)

リスクマネジメントのプロセスの中に、リスク対応という活動があります(Fig.01)(ここではリスクマネジメントの話はしません)(なお、Fig.01中の活動や実施事項は、ITSQB-FLシラバスでの取り上げ方とは異なります)。

Fig.01 リスクマネジメントのプロセス(JIS Q 31000:2019から)

リスク対応は、特定・分析・評価されたリスクを修正する活動で、具体的にはリスクに対処するための行動を選定・決定・実施します([2] p.13, 「6.5 リスク対応」)。

リスクに対する行動にはいくつかの考え方があるとされます。ISO 31000(JIS Q 31000)では「好ましい影響を与えるリスク」も含めているため、リスクの低減や軽減といった用語は使われなくなっていますが、好ましくない結果をもたらすリスクへの対応としては有効で有用だからでしょう、
プロジェクト管理系や情報セキュリティ系の書籍やWeb記事などでは「リスク対応策の4分類」として挙げられています。

  • リスクの回避(avoidance)。リスクのある事業やプロジェクトを中止する・撤退するなど、リスクが生じる要因自体をなくす

  • リスクの低減(reduction)。リスク源を取り除く、リスクの顕在化可能性を下げる、リスクが顕在化した場合の影響範囲を抑える、などにより、リスクの影響を小さくする

  • リスクの移転(transfer)。損害保険をかけるなど、リスクそのものや顕在化した場合の対応を外部に転嫁する

  • リスクの保有(retention)。当該リスクへの対応をしない。リスクを受け入れる

スイカの種の始末とリスク対応

ちいかわ

ちいかわはひと切れを食べる前に種を丹念に取り除く。ハチワレが「種は口の中のをプッてすると楽だよ」と言っても聞きません。眉をきりっと(`・ω・´)させて首を横に振ります。

スイカを口にして種に当たる可能性を可能な限り小さくしたい(できればゼロ%に)。これは「リスクの低減」と言えるでしょう。

食べていて突然「ガリッ」と来た時のイヤな気持ち(=リスクが顕在化した時の影響)はけっこう大きいものがあります。実際ちいかわも万全を期していながら「それ」に当たり、ショックが走ったのちに(´・ω・`)な表情で種をプッとしています。

「万全な状態をつくる」にも、種を取り除く時間と手間がかかります(=リスク対応に係るコスト)。それでもリスクがゼロになるとは限らない。「どれだけコストをかけて、どれだけリスクを減らすの?」は、リスクへの対応を考える時には常について回るトレードオフです。

最適なリスク対応の選択肢の選定には,目的の達成に関して得られる便益と,実施の費用,労力又は不利益との均衡をとることが含まれる。

[2] p.14 (6.5.2 リスク対応の選択肢の選定)

ハチワレ

ハチワレは、ちいかわにアドバイスした通り、事前に種は取り除かず口の中で種を検出するたびにプッと吹き出す派。

判断に迷いますが、これも「リスクの低減」でしょうか。

ちいかわのように事前の除去はしないが、種が見つかったら それなりの手をかけて排除する。
トレードオフを踏まえた低コストのリスク対応と、言えなくもないかと。

うさぎ

ちいかわの対極にあるのがうさぎでしょう。うさぎは種を吐き出すことなく平然とスイカを食べ、種も一緒に飲み込んでいます。

「スイカの種」というリスクに対し、特に対応をせず、リスクを受け入れるこの対応は「リスクの保有」と解釈できます。

リスクが顕在化する(=口の中で種を検出する)可能性はありますが、「大したことないじゃん」で飲み込んでしまえばいい。

リスクの顕在化の可能性が十分低く、影響が十分許容できると判断した場合は、こういう対応もアリなわけです(真面目に考えると「飲み込んだ種が腹痛を引き起こすなどの悪さをする」という派生的なリスクを抱えるわけで、その評価もした上で対応を決めるべきではあります)。

なお

このたとえで言えば、「リスクの回避」はスイカを食べないこと(食べなければスイカの種が口に入ることはない)、「リスクの移転」はスイカの種を食べちゃった場合に備えて保険に入っておく(?)、といった対応となるでしょう。

どうかな

リスクマネジメントの勉強を始めて間もない人に判ってもらうたとえ話としては悪くないと感じているんですが、どうでしょうか。

「このたとえは使えそう」と思った方、ぜひ使ってみてください。

私も次のISTQBのトレーニングなどでリスクマネジメントの説明をする際には使ってみようと思います!


参考URL

参考文献

  • [1] JIS Q 0073:2010 リスクマネジメント-用語 / 日本工業標準調査会(審議) / 日本規格協会

  • [2] JIS Q 31000:2019 リスクマネジメント-指針 / 日本工業標準調査会(審議) / 日本規格協会

※日本工業標準調査会は、2019年に日本産業標準調査会と改称


(2024-08-29 R001)

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