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ちょっと古いカメラのはなし
父の形見だった一眼レフ、キヤノンFTQLのはなしです。
父とサヨナラしたのは小学生の頃だった。もう40年以上たち、今はもう生前の父の歳を追い越してしまった。
父は真面目な人で趣味に走る人ではなかったが、このカメラ大切にしていてこれだけは触ると大変に怒られた。だから操作方法も何も教えてもらわないままだった。
父が急に天国に旅立った後、家族で誰も写真を撮る人はなく、このカメラも主を失い眠りについていた。カメラの使い方やそれよりやももっと大切なことも教えてもらえなかった。
父の遺したカメラで写真を撮ってみようとしたのは、父が何を見ていたのかファインダーを通して確かめようと思ったのか、それともポツンと遺されたカメラに我が身を投影していたのか、それともイロイロ試してみたい年頃のただのメカ好き小僧だったせいなのかは、今となっては定かではない。
しかし、小学生ながら取扱説明書もないフルマニュアルのカメラを使うのは困難だった。暗いファインダーを覗きながらのピント合せ、シャッター速度と絞りの組み合わせ、フィルムの装填、巻きもどし方など、父が生前懇意にしていたカメラ屋さんに聞きながら手探りで撮影した。今のカメラと違って、いやあの当時ですら古典機の部類に入るカメラだったから使うのは苦労した。
でも、いろんなことを教えてくれた一台だった。そしてカメラ小僧になるきっかけを与えてくれた一台だった。そして今は写真を生業としている。
父とのサヨナラは、別の形で父と繋がっていたことを教えてくれたのだった。
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