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Adobe MAX Japan 2025で見えてきた、AI動画生成の今
知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。
先週13日に東京ビックサイトでAdobe MAX Japan 2025が開催された。例年米国のAdobe MAXを受ける形で11月に開催されてきたが、これは日本だけの独自イベントであった。今年からは世界中の主要都市で行なわれるAdobe MAX○○ 2025というツアーの一環として開催されることになったことで、その第1弾として2月に行なわれることになったようだ。
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このツアーは毎年開催されるものの、その開催順は決まっておらず、来年も2月になるかどうかは不明だという。とはいえ、1月に多くのベータ版が公開になったこともあり、2月の開催はまあまあ話題が豊富であった。
Adobe会長兼CEOのShantanu Narayen(シャンタヌ ナラヤン)氏も来日し、キーノートに初登壇したことからも、力の入ったイベントだったと言える。
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キーノートはAIの話が中心だったが、その一方各セッションやセミナーでは、各アプリのエキスパートによるテクニックが共有された。来場者の年齢層はかなり若い。20代から30代といったところで、割合としては女性の方が多いのも、独特の雰囲気である。
ただ一般の入場料は2万円と、安くはない。InterBEEだとひやかしで来るような元業界人のオジイチャンも多いが、そうした人はおらず、皆少しでも何かを持ち帰ろうと、セッションを熱心に聞き入っていた。
■動画生成強化の裏で起こっていること
Adobeの生成AIツールのうち、一番大元となるのが「Adobe Firefly」である。アプリケーションではなくWEBツールだが、まずはこれにβ版として機能が追加され、ある程度形になったものが各アプリに専用ツールとして組み込まれていく、という流れだ。
1月末の時点で新機能として実装された機能は、「テキストプロンプトからの動画生成」、「3Dシェイプからの画像生成」、「動画の翻訳」、「画像から動画生成」、「音声を翻訳」の5つだ。また今後公開予定の機能として、「音声を自動調節」、「テキストからアバター作成」の2つがある。
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動画の生成ができるようになった点が大きいが、これがそのままPremiere Proに組み込まれているわけではない。例えばFireflyの「動画の翻訳」は、しゃべりの動画のうち、音声を別言語に翻訳して本人の声でしゃべらせ、リップシンクも合わせてくれる。一方Premiere Proのβ版で実装された翻訳機能は、字幕として書き起こした文字を他言語に翻訳してくれるに留まっている。
この動画音声を別言語に翻訳する機能は、すでにベンチャーの[Captions](https://www.captions.ai/)が実用化している機能だ。2023年に一度試しているので、ご存じなかった方は以下から記事がご覧いただける。
すでに元ネタは別の会社が2年前に完成していたわけだ。ただこの機能、非常に危ういのは、フェイク動画の作成に使われてしまう可能性があることだ。この点ではCaptionsでも指摘されており、こちらは翻訳された音声には、修正や編集を加えることができない。
Captionsはその名の通り、編集ソフトというよりは翻訳ソフトに近い。よって編集・修正機能が弱くても納得できる。現時点でのFireflyの翻訳機能にも、編集・修正機能は実装されていない。それは動画編集ソフトではないからだ。
だがこの機能がPremiere Proに組み込まれたとしたら、「編集できない」というのは許されない。同音異義語の誤訳があった場合に修正できないのは、コンテンツとして困るからである。
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