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小寺の論壇:沈むオタクの街? 「アキバ」を「アキバ」らしくしていた遺伝子とは
知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。
5月30日にJ-CASTニュースが報じたところによれば、ネットでは秋葉原のオタク離れが指摘されているようだ。10〜20年前にあった雑多な魅力が減り、オタク文化を支えた店が次々と閉店しているという。
記事によれば、2020年以降に閉店・休業した店舗は、「ガンダムカフェ」、「虎の穴」、「イエローサブマリン秋葉原スケールショップ」などがあり、いわゆるアニメ系のカウンターカルチャーを下支えした店舗の撤退が目立つ。
一因としては、駅前の再開発により画一的な街並みになったことが挙げられている。とはいえ個人的には、そこは一因か? という気がする。再開発とは言うが、ヨドバシAkibaが開業したのは2005年だし、秋葉原UDXビルができたのは2006年だ。一方ラジオ会館は健在だし、ガード下の秋葉原電波会館もそのままである。駅前にある、電気街的な雰囲気はそれほど変わっていない。
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そこには、アキバへ通う目的の変化があるということではないのか。
■「アキバ」を構成するコマ
電気街時代のアキバの中心は、電子・電気パーツが買える超小型店舗と、LaOXや石丸電気といった大手家電量販店であった。筆者は1980年初頭からの秋葉原しか知らないが、元々は戦後の焼け野原から国鉄・都電が走る拠点として闇市が立ち上がり、のちに電器商が復興して、近くにあった現東京電機大学の学生アルバイトがラジオを組み立てて販売したのが大当たりしたところが、電気街の発祥である。
ビルの名前に「ラジオ」の名前を残すものが多いのは、この名残である。ちなみに「無線」も多いが、これはアマチュア無線とか通信のことではなく、そもそもは「ラジオ」の意味である。
部品の卸から完成品販売へシフトしていく中でも、祖業である電子部品の販売業はなくならなかった。今もなお、なくなっていない。80年代を支えたのはオーディオで、CDの登場によりデジタル化へ向かう一方、真空管アンプなどのアナログ技術の中で、小さなベンチャーが高額商品を出し、そこそこ売れていた。
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そこからパソコンの街へ向かうのは、必然であった。元々パソコンはエレクトロニクス商品であり、電子部品との相性がいい。また自作ブームもあり、完成品ではなくパーツが買える街として、活況を呈した。
その理由は、ビルの構造にあると思っている。大手量販店を除けば、細長い雑居ビルが多く、小さな間取りでビジネスが始められる。同様の店舗と競合するなかで専門性を高く打ち出す必要性もあり、個性のある店が数多く現われた。かつてはキーボード専門店や、PCケース専門店などもあった。
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