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冷たい頬/スピッツ

記念すべき第一回スピッツ一曲レビューは、冷たい頬。

スピッツを好きになるきっかけになった曲が3曲ほどあるのですが、そのうちの一曲が冷たい頬でした。

スピッツにさほど興味を向けたことがない人間を「ん?」と立ち止まらせてくれた曲ということで、今回選ばせていただいた所存です。



冷たい頬。スピッツ通算18作目のシングルです。「謝々!」両A面シングルで、1998年3月発売。

自分が生まれる一年前の曲です。

wikipediaによると冷たい頬は「コニカ」のCMソングと、「伊藤くんAtoE」の第1.2話エンディングテーマに使われていたみたいです。元々シングル化の予定はなかったけど、アルバム「フェイクファー」発売告知後、急遽シングルとしての発売が決定したそう。

どう考えても名曲だったからかな?アルバム作ってから気づいたのかな?まあとにかく、急遽シングル化するほどの出来栄えだったことは確かだったのでしょう。


この曲、サビあるけど、そんなに「サビ!」って主張がないです。曲全体的に、ぬるっと始まりぬるっと盛り上がりぬるっと終わる。起伏があまりなくて、公園のベンチでぼーっと聴くのに最適。


そんな一曲ですが、初めて聴いた時「なにこれ…すごい良い曲…スピッツ?スピッツの曲なのか。え~すごいな、チェリーより良くない?!」と衝撃でした。youtubeでの視聴でしたね。


まずイントロが良い。あのアルペジオ。三輪テツヤのアルペジオの才能は本当にすごい。草野さんがつくる繊細な音楽にこれ以上ないぐらいマッチできるギターは彼しかいないね。


そして出だし。「あなたのことを 深く愛せるかしら」

恐らく付き合っていた男女の歌であり、最初のこのセリフも女性側が男性側に言った台詞なのですが、こんなこと、普通は付き合った方に言いませんし、言えません。詩的すぎる。


続き、

「子供みたいな 光で僕を染める 

風に吹かれた君の 冷たい頬に

触れてみた 小さな午後」


これ以上にさりげなく、瑞々しく、どこか危なっかしい関係を表せる綺麗な歌詞がありますでしょうか。小さな午後って、どんな午後なんだろう。日常の、なんてことのない、語る足らないぐらいの、ありきたりな、だけど大事な午後、なのかなって私は思いました。



そんな午後を過ごす二人。

「あきらめかけた 楽しい架空の日々に

一度きりなら 届きそうな気がしてた」

この人となら、自分が思い描いていたような楽しい日々に過ごせると思っていたのでしょうか。でも、そんな日々には「届きそうな気がしてた」だけで、届かなかった。何があったんでしょうね。これには後に「冷たい頬」が関係してきそうです。


私は個人的に次の歌詞が大好きです。

「ふざけ過ぎて 恋が 幻でも

構わないと いつしか 思っていた」

こんなに美しい歌詞があるんだ、って当時は度肝抜かれました。ふざけ過ぎて、楽しすぎて、この恋が夢でも幻でも構わないぐらい、夢中になっていて、且つ、もうそういうことすべてがなんでもどうでもいいぐらい、一点しか見つめていない感じが伝わってきて、切なくなります。


次、Bメロ

「夢の粒も すぐに 弾くような

逆上がりの 世界を 見ていた」

私はこの「逆上がりの世界をみていた」の部分がすごく好きです。意味はよく分からないけど、逆になった世界をみてるような気分ってなんとなくわかる気がします。自分が今までいた幸せの世界が反転しちゃった、みたいな。



そして二回出てくるこのフレーズ

「壊れながら 君を 追いかけていく」

誰かを必死に想うことを、自分が壊れてるの気づきながらもその人を追いかける、と表現するセンスに脱帽。壊れるって相当のことがないと起こらないことです。自分が壊れていっているのを自覚してても足を止められないような恋、してみたい。


最後

「さよなら僕の かわいいシロツメクサと

手帳の隅で 眠り続けるストーリー」

好きな人をシロツメクサと表現。シロツメクサってクローバーのことですよね。「かわいいシロツメクサ」って、めっちゃ愛溢れてませんか?シロツメクサを押し花にして、手帳に挟んだってことなのでしょうか。好きだった人の記憶の納め方をこんな詩的な表現で歌にできる人、草野さんしかいません。無論、好き「だった」人と表現した理由は、さよならと書いてあるからです。


この歌、色々な解釈があるのですが、「冷たい頬」ということから死別説と思われることが多いっぽいです。私は全然そんなこと考えたことなくて、言われてみて初めて「たしかに!」って思いました。個人的には冬、寒い時期のことなのかな、ぐらい。


でもよく考えてみれば二人は想い合ってそうだと個人的には感じていて、想い合ってるのに、さよならとか、追いかけていくとか、一度きりなら届きそうなきがしてたとか、眠り続けるストーリーとかいうのは、不本意で別れた、つまり抗うすべのない病がずっと背景としてちらついていたのかな、という風に考えられるかなって思います。


切なくて、優しくて、だけど必死でかっこわるい熱を感じる、至極の一曲です。


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