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【映画感想】梟
※ネタバレ注意※
予告を拝見したときからずっと楽しみにしていたが、まさしく期待を裏切らない作品だった。最初から最後まで無駄がなく面白く、丁寧に緻密に制作されていると感じた。
ポスタービジュアルもそう。キャッチーなデザインであると同時に、作品中に画として存在するだけでなく、物語としても重要な役割を果たすシーンであり、観賞中でも思い出して唸らざるを得ない。
そもそも、「昼盲症」という実際に存在する病に着目し、暗闇でのみ視力が宿るという設定を生み出し、「梟」というタイトルを付ける、とセンスの良さにとにかく脱帽。プロデューサーの腕なのだろう。
また、史実を紐解いて歴史の謎を再解釈し、映画というエンターテイメントに昇華するというそのスタンスも素晴らしいと思う。実際のところは、「王子が薬物中毒で亡くなったようにみえた」というところを深堀りして脚色したものであるが、本当にこうだったかもしれない、という説得力が活きる。
予告の内容もあって、王子の死の真相については最後まで引っ張られ、それを解き明かしていくことが本題なのかと思っていたが、実際はあっさりとその手口(トリック)と犯人は明かされる、ここから最後までどうするんだと思うのも束の間、ギョンス視点でどうやって追手から逃れながら、真犯人を追い詰めていくかというサスペンスが始まる。敵は、その国を全て掌握しているに等しい王であるから絶望感も凄まじいのだが、それだけに見応えがあった。
鍼灸という要素も十二分に活かされている。ギョンスが黒幕が王だと感づくのは、施術中の心音の乱れからだろう。それを仰々しくなく表現し、ギョンスが作戦の実行を躊躇うことで伝えられるのも技巧が凝っている。右腕だけを麻痺させて左手の筆跡を取る、というのはややご都合主義というか無理があるような気もするが、ギミックとしては面白い。
ギョンスが一度は躊躇うことで、二度目に立ち上がる際のカタルシスも何倍にも膨らむ、というもの。盲目のギョンスが一度は”みない”ことにしたと表現するのも憎い。盲目(昼盲症)の設定も色々練られていると思っていて、たとえば本作では緊迫シーンのBGMが非常に大きい。わざとすぎるとも白けそうになったが、逆に目が見えないからこそ、音を十分に響かせないといけないのだろう。
と、ここまではべた褒めしたが、個人的にラストは少々蛇足だった気がしないでもない。数年後…に復讐を果たすことは必要だったのかもしれないが、疾走感の中で余韻を残して想像の余地を与えるエンディングでもよかった気がするが、好みの問題だろう。