見出し画像

不登校エッセイ#22 恵方巻を食べながら、涙がこぼれそうになった話

家族4人の食卓。
同じ方角を向きながら、「せーの」で恵方巻にかぶりつく。

全員無言。
ふと、はす向かいに座る娘と目が合った。

ほっぺを膨らませながら、必死に笑いをこらえている。
暗い顔をしていた不登校の頃とは別人のよう。

巣ごもり中の息子はどうだろう。
向かいに座る息子をちらりと見る。

パジャマ姿のまま、目をつむって、もくもくと食べている。

何をお願いしているんだろう。
心の中が見えたらいいのに。

「ごちそうさま。美味しかった」
一番先に食べ終えた夫が、嬉しそうにデザートを持ってくる。

「私も食べる!」と娘。
出遅れた息子と私は、あわてて口を動かす。

「食べ終わった!」
大声で勝利宣言をする息子。

恵方巻を食べながら、涙が出そうになる。

家族4人が健康で、食べるものがあって、住むところがあって、
そして、笑いあえる。

はたから見たら、ひきこもりの息子がいるなんて、不幸せそうに映るかもしれない。

でも、うちはたぶん大丈夫。

そう思いながら、最後のひとくちを飲み込んだ。


#不登校エッセイ

いいなと思ったら応援しよう!

NOAH(ノア)@不登校ママライター
いつも応援ありがとうございます! いただいたチップは不登校ひきこもり支援活動に使わせていただきます。