人的資本経営流 PBRの上げ方
PBR(株価純資産倍率)とは、
株価が企業の純資産に対してどれだけ評価されているか
を示す指標です。
ちなみに、PBRが1倍未満というのは、
企業の解散価値がその企業の市場価値を上回るという、
理論上、企業にとって非常に不名誉な状態を意味します。
昨年、東京証券取引所は
PBRの低迷する上場企業に対して、
改善策を開示・実行するよう要請したことで、
にわかに、日本企業のPBRに注目が集まりました。
この記事では、
日本企業のPBRを上げる手段として、
流行りの人的資本経営に注目してみたいと思います。
ちなみに、この記事のタイトルは↓から来ています。
人的資本経営がなぜPBRと関係するのか?
PBRを視覚的に理解する
改めまして
PBRとは、
株式の時価総額(市場での企業価値)が、
純資産(帳簿上の価値)の何倍かを示す指標です。
PBRが1倍未満なら、
企業価値は、帳簿上の価値を下回ることになり、
その企業は清算した方が良いということになります。
一方、PBRが1倍以上なら、
企業価値は、帳簿上の価値を上回ることなります。
この帳簿上の価値を上回る部分は、
理論上、市場価値(非財務資本)と考えられます。
非財務資本の一つである人的資本
人的資本は直接的には財務報告に現れませんが、
従業員のスキル、知識、経験などの集合体として
企業の潜在能力を形成し、将来の収益性に大きく寄与します。
人的資本経営が
PBR(株価純資産倍率)の改善に寄与するメカニズムは、
企業の収益性と成長性の向上にあると考えられます。
従業員が高い能力とモチベーションを持つことで、
生産性が向上し、イノベーションの促進が期待できると思います。
これは同時に、
新製品の開発や市場での競争力の強化に直結し、
結果として企業の収益が増加することを意味します。
人的資本経営と女性管理職比率の関係
人的資本経営が充実しているか否かを示す
代表的な指標として
女性管理職比率があります。
女性管理職比率の向上は、
多様性の促進と意思決定の質を向上させると考えられます。
多様な視点を経営層に取り入れることで、
より幅広い顧客ニーズに応える製品やサービスを開発しやすくなり、
企業のイノベーション能力が向上します。
これが直接的に組織の成果に寄与し、
結果として人的資本経営の充実につながるわけです。
具体的にみていきましょう
多様性の視点・経験
女性特有の視点や経験は、
男性管理職では見落とされがちな市場の機会やリスクを捉えるのに役立つことがあります。
この多様性は、
組織内の創造的な問題解決や新しいアイデアの生成を促進し、
競争力のある企業文化を構築します。
意思決定の質の向上
研究によると、性別が多様な経営チームは、
よりバランスの取れた意思決定を行う傾向があります。
女性はリスク管理において保守的なアプローチを取ることが多く、
これが経営の持続可能性や安定性を支える要因となります。
また、従業員とのコミュニケーションが活性化し、
従業員の満足度やエンゲージメントが高まることも、
女性管理職の増加がもたらす効果です。
組織全体のパフォーマンス向上
女性の視点を経営に取り入れることで、
顧客基盤を拡大しやすくなります。
特に女性顧客が多い市場においては、
女性管理職の存在が重要です。
彼女たちは、製品開発やマーケティング戦略において、
女性顧客のニーズに敏感であり、
より効果的なアプローチを提案できる可能性があります。
企業文化の改善
女性管理職の増加は、
企業文化の透明性や公平性を高める効果もあります。
公平で開かれた職場環境は、
全従業員のモチベーション向上に寄与し、
組織全体の生産性の向上に繋がります。
女性管理職比率が高い企業はPBRも高いのか?
有価証券報告書で開示されている
女性管理職比率のデータを使って、
PBRとの相関分析を行いました。
対象企業:2023年3月期決算の上場企業
PBR:2024年3月末のPBR(IR BANKより取得)
データ数:1,350
相関分析の結果
ピアソンの相関係数:0.18 (P値:0.00)
女性管理職比率とPBRについて、弱い正の相関が確認されました。
業種別の女性管理職比率(中央値)とPBR(中央値)
女性管理職比率が高い業種は
PBRも高い傾向にあることが確認できます。
金融(除く銀行)、医薬品、小売、情報通信は
女性管理職比率も高いし、
PBRも高いことがわかります。
さいごに
東京証券取引所は、
ただ単に配当を増やすや自社株買いをするといった
一時的な対策ではなく、
持続可能な取り組みを企業に要求しています。
人的資本経営のアプローチが、
株主価値の長期的な向上に寄与していくことを願います。