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haru_lifelog
第十二章 想い出⑦
「岬さん、グランプリおめでとうございまあす♪」
安奈がクネクネと腰をいやらしく振りながら、究極の笑顔を振りまいている……。
そして、あたしは。
あたしの顔を見て、岬は……。
「おめでとうございます……」
「ありがとうございます」
お互いに、知らないフリをしたんだ……。
それは、むかつくような当然の事のような。
そして、食事の席になり、一哉の隣にあたしは当然座っているけれども。
そのテーブルには、岬も座っている。
一哉が、とんでもない事を言いだした。
「あ、この子。梨紗。オレの彼女です」
ぎょえー……。
もう泣きたい。
いつもだったら、嬉しい!一哉が皆の前であたしを『彼女』って言った!嘘みたい!幸せ!ってな感じなんだけれども。
いたたまれない状況とは、この事だろう。
まさしく……。
「ああ、そうなんですか」
なんて言う岬。
帰りたい。
一刻も早く……。
まだまだ帰る事などできない一哉。
けれども、あたしの役目はもう終わったと言ってもいい。
先に帰る事にした。
そそくさとタクシーを捕まえて……。
寝室に入るなり、ベッドに顔を突っ伏す。
岬とは、色々あり過ぎたのだ。
だから、あたしはホストなんかが嫌いで……。
岬は、あたしの全てだった。
あの頃。
あたしは、岬を愛していた。
あたしは、岬に多大なる迷惑をかけて……。
終わったんだ。