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【映画鑑賞】警官の仮面を被った犯人【悪人に平穏なし】

作中の中で、
「なんであんな人が警官をやっているの?」と判事が不思議がるシーンに、思わず心の中で大きく頷いてしまった。まさに私が感じていた疑問だったからだ。警官という肩書きを持ちながら、その刑事の態度には、まるで正義感や倫理観が欠如しているようにしか見えなかった。むしろ彼は、自分の立場や権力を利用して、自らの利益だけを追求するために動いているようだった。

この刑事、見た目からして不快だった。
態度が大きく、「俺は優秀な経歴を持っているんだ」と言わんばかりに、偉そうに振る舞う。周りの人間に対しても敬意が感じられず、上から目線で接する彼の姿は、全く魅力的ではなかった。さらに、彼の自信過剰な発言には、嫌悪感さえ覚えた。自分を過大評価し、「本気になれば凄いんだ」と思い込んでいる様子が、余計に鼻についた。

そんな刑事が、ある日、衝動的に人を殺してしまう。
そして、その殺人の目撃者を口封じするために、通常の職務を放棄してまで追い回すという展開。彼の行動は明らかに、警察官としての職務を逸脱しており、自己保身に走るあまり、正義とはかけ離れたものになっていた。不法侵入を繰り返し、他人の家のものを勝手に漁り、手にしたものを放り投げるという粗雑な行動。こんな人間が警察のバッチを持っていること自体、信じがたいことだ。

彼は、自分の罪を隠すために、
悪びれることもなく目撃者を追い続ける。刑事という肩書きを盾に、罪を無かったことにしようとするその姿勢には、全く共感できなかった。むしろ、刑事というよりは犯罪者そのものだ。彼の行動を見ていると、「正義を守る」という意識がどこにもなく、ただ自分の身を守るために動いているようにしか見えない。

そして、最も厄介なのは、
彼が警察官だからこそ、自分の足がつかないように証拠を隠滅する術を知っているということだ。彼の周到さは恐ろしい。普段は法を守る立場にいるはずの彼が、その立場を逆手に取って、法を破ることに慣れてしまっているような印象を受けた。私はこんな人間に、ましてや警察という権力を持たせておくことがどれほど危険なことかを改めて感じる。

彼が追っていた目撃者が、
たまたまテロリストの一員だったという事実も、正直なところ、彼にとっての「正義」には繋がらない。最終的に、彼がテロリストを殺してテロを未然に防いだのは、ただの結果論に過ぎないとしか思えなかった。彼の行動が結果的に「良い方向」に繋がったとしても、それは偶然の産物であり、彼自身の行動が正当化されるわけではない。

もしかしたら、彼が目撃者を追っているうちに、
彼がテロ集団の一員であることに気づいたのかもしれない。でも、それを察知して行動に移ったとしても、その行動が正しいとは思えない。彼の粗暴な態度や、倫理に欠けた行動が受け付けなかったため、私はそんな細かい部分にすら目が向かなかったのが正直なところだ。彼のやり方が嫌いすぎて、まともに評価する気持ちすら起きなかった。

彼は、ずっと目撃者を見つけられずに、
同僚からも不審がられるような日々を送って、ビクビクして過ごせば良いのに、と思った。少なくとも、私にとっては彼の行動がどうしても理解できず、彼を嫌う気持ちが終始変わらなかった。彼の人生に訪れるべきは、成功ではなく罰だ。自分の罪を隠すために奔走し、その過程でどれだけ多くの人々を犠牲にしてきたのだろうか。そんな人物が、たとえ一時的に正しい結果を導き出したとしても、それは正義とは呼べない。

警察官という肩書きを持つ人物が、
どこまで自分勝手に、そして自己中心的に振る舞うことが許されるのか。彼の行動が、「正義を守るためのもの」ではなく、「自分を守るためのもの」だったことが、この映画の一番の問題点だと思う。正義を守るべき立場にいる人間が、その立場を悪用して自らの利益を追求することが、どれほど社会に害を及ぼすか。その問題を、この映画は静かに、しかし確実に提示していた。

私は、こんな刑事に出会いたくはない。
彼が警官であろうと、普通の人であろうと、こうした人間とは距離を置いて生きていきたい。

No habra paz para los malvados / 2011


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