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バージンロードまで…

駅から学校までの葉桜並木
その緩やかな坂の途中で
君は何かを待っている

行き過ぎる顔は
皆どれも同じに見えて
僕にはお目当てがさっぱりわからない

君は来るとも知れない何かを待ちながら
手持ち無沙汰に僕の手を打つのだ
苛立ちとも不安とも取れる仕草で

さぁもうお行き
そのグラグラとした目の奥の影を見て
僕は促した

一歩進みかけて
振り返る
また一歩踏み出しては
振り返る

一度僕の顔を見て
ほんの少しだけ微笑む
じゃあ…と言いかけて
視線だけは坂の下に残っている
パッと君の顔が綻ぶ
頬に赤みがさして
思わず声が出る
…ちゃん…

僕には名前が聞き取れなかった
いや、聞こえていても忘れたのかも知れない
君はそのまま何も言わずに行ってしまった
もう僕の顔を見返さず行ってしまった
グラグラの影ももうどこかに行ったようだ

少しづつ小さくなってゆく背中
君は振り返らない
百日紅の花が風に揺れていた

ちょっと寂しいような
でも君のあんな顔見たことない
ちょっと誇らしいような
そう思うとなんとなく
左手が寂しくなる
バージンロードまでお預け…

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あとがき

手持ちの写真にピッタリくるのがなくて
葉桜どころか思い切り桜咲いてますけど…
あと、実際は女の子友達なので想像を膨らませて
書いてみました
男の子友達だったら泣いてしまうかもですね


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