ノンストップで駆け巡る問題と答えの死闘 ~「Q eND A」感想
獅子吼れお(2024)『Q eND A』KADOKAWA.
レビュー(ネタバレなし)
今月の逆噴射小説大賞2024募集要項で出版の事実を知ったので、買った。読んだ。読み終えて面白かったと息をつき、そして脳内サルーンで静かに杯を上げた……乾杯……!
異能力クイズデスゲーム。クイズに答えられなかったら死ぬ。異能力の正体が暴かれたら死ぬ。という異常状況に追い込まれた人間のやるかやられるか、という極限のスリルが味わい深く、クイズの解答席で白熱する心理戦と頭脳戦に加えて誰を疑い誰を信じるか推理しながらページをめくっていける。
謎の空間に閉じ込められた二十六人のうちの主な人物像も、ときに主人公の一人称視点から外れる飛び道具を用いつつも「どんな個性を持っているのか」が「どのようにしてクイズに臨むのか」に活かされ、無理がないと思った。
「こいつはこんなやつだから、そうするのか」という筋の通ったイメージが頭にどんどん入ってくるから、文章から脳内にビジュアルイメージを描ける人間からすると一本の映画を見終えたような読後感がする。
ある少年が競技クイズの面白さに目覚める話、としても読めるし、人体爆裂スプラッタとしても読める層の厚みにも感じ入った。KADOKAWAの縦スクロール&フルカラーマンガ「タテスクコミック」にてコミカライズ配信予定ということで、それも待ちたいと思う。
感想(ネタバレあり)
結末に向けて登場人物全員のことが一旦は好きになる、ループ能力の知覚によってそれができるというのが本作のいいところだと思った。素直な人間賛歌であり、全員生還するんだというパワーがデスゲームの理不尽を打ち砕くところに胸がすっとした。
作品内で『答えに向かう力』と明示される人間の能力は、今まさに誰かから/機械文明から与えられる単一の答えばかりにとらわれて『答えに向かう力』を失いつつある現代社会の芯を食っていると思うし、その困難に真正面から立ち向かうAのことはずっと応援したく思う主人公だった。
最初にAとQのライバル関係を際立たせたあと、他の人物とのクイズ対決で徐々にAが成長していき、実力がQと並び立ったあたりでそれまでの前提がひっくり返され、今まで見えなかった真実に触れることができる────これが面白かった。面白かったという語彙では語りつくせないようなエンタメの爆発力、化学メキシコのスパイスだった。
次回作が楽しみだ。
(了)