見出し画像

「未利用魚から見出したビジネスの核心 - "行動から価値を創る"という真髄」【No Fish No Life活動日誌 vol.15】

こんにちは!未利用魚加工事業「No Fish No Life」です。私たち「使われないをなくす。〜自分たちで獲った資源への責任を持つ〜」というビジョンを掲げて未利用魚の加工事業に取り組んでおります。

今回は、未利用魚のビジネス展開について、水谷さんから貴重なご指導をいただく機会に恵まれました。その中で特に印象深かったのは、ビジネスの本質は「負」を見つけ出し、それを解決することにあるという視点です。ここでは、その貴重な学びを共有させていただきたいと思います。

楽しんでお読みいただければ幸いです!


ビジョンから具体へ - 4つの問いがもたらした気づき

1ヶ月前、私たちの構想について水谷さんから「抽象度が高い」「プロダクト側はいいけど、消費者側がまだ考えられていない」というご指摘をいただき、4つの重要な問いを投げかけてくださいました。

「ビジネスにおいての骨格は、問題意識は何で、ありたい姿はシーンで何で、超えるべき壁は何で、その打ち手・仮説は何なのか。この4つだね」

この問いを受け、私たちは様々な方にお話を伺い、現場の声を集めました。その結果見えてきたのが「島なのに獲れた魚が食べられていない」という矛盾でした。

漁師さんは「もっと食べてほしい」と考え、消費者は「地元の魚を食べたいが捌くのが大変」「加工品は添加物が心配」と感じています。そして実際には、島で配送費込みの冷凍魚を大量に仕入れる一方で、イシガキダイのような地元の魚が未利用魚として扱われているという現実があります。

水谷さんは、この状況を「安心✖️手軽がこの島にはないということがいまの消費者にとっての負だね」と指摘してくださいました。この言葉で、私たちは初めて自分たちが解決すべき本質的な課題が何なのかを理解することができました。

実際の商店に並んでいるノルウェー産のサバ

消費者理解の革新的アプローチに出会う

私たちの考え方が大きく変わったのは、消費者理解についての水谷さんの指摘でした。「アンケートをとって消費者のことがわかりましたって言ってる系の人は、ビジネスはできない。ビジネスができる人ってのは、行動を見に行く」という言葉は、これまでの私たちの考え方を根底から覆すものでした。

「人間は行動だけが本音が出るね。言葉は嘘というか...言葉はどの程度嬉しいのかがわかんない。いくらだったらいいのか?って言って3000円って答えるじゃん。ところが3000円だったら2ヶ月に1回しか買わないかもしんないよね」

本当の消費者理解とは、実際の店頭に立ち、その行動を観察することなのだと気づかされました。「社長さん達だって、新しい事業をやるときにはさ、その店頭に立って、消費者がどういう行動を、どういう顔つき、どういう動きをして、いくらを出してんのかを見る」という具体的な方法論を学ばせていただきました。

実際のお店の様子

マーケット理解の新しい発見

私たちのマーケット理解は、水谷さんが教えてくださった3つの重要な観点によって一変しました。

まず「負」を見つけることです。消費者が負とはそれを不便に感じていることです。その観点から「そこに起こっている負は何なのか」を正確に把握することが、ビジネスの出発点になります。私たちの場合、消費者にとって魚を食べるにあたって「安心✖️手軽がこの島にはない」という負を特定することができました。

次に「マーケットサイズ」です。「マーケットのサイズっていうのは、その負を負と感じている人数なんだよ。人の数じゃない。その負を解消してくれるなら嬉しいという人数は一体どれぐらい。これがマーケットだよね」

そして「キャッシュポテンシャル」です。「主婦は週に何回魚を使うのがいい。使うペースなんだろうか。これで売れる量がだんだん見えてくるよね。そうすると、でも、今よりもこれぐらいだったらプラスアルファでお金を回してくれるかもしれない。もしくは、今冷凍で売ってるものをやめてこっちに使ってくれる。お金の量はこれぐらい。月に何千円分ぐらいはこれに。で、それが何百人いる。そうやって考えていくと、どれくらいのキャッシュが動く可能性があるのかがわかってくる。

この3つの観点から市場を見ることで、私たちは一般家庭、外食、そして給食などの大規模なところの3つの市場それぞれについて、より具体的な分析ができるようになりました。特に子育て世代をターゲットとした家庭市場では,この3つの視点が戦略立案の重要な指針となっています。

試作品①

ビジネスモデルとシーン作りの可能性

水谷さんとの対話で、私たちは未利用魚の新しい可能性を見出すことができました。「未利用魚っていうものは、本当は寿司屋があったらぴったりだよね。新鮮で」というご指摘は、これまで考えもしなかった方向性を示してくださいました。

特に印象的だったのは、その展開方法についての具体的な示唆でした。水谷さんは「日本人っていうのは新しいことをやっても飛びつかないので」という現実を踏まえた上で、月に一度の特別な寿司屋台という提案をしてくださいました。「20人限定です。何月何日何時から来るので興味あったら早めに来てくださいねって言って、わっと集まり未利用魚いいねってなったら、大漁は未利用魚も仕入れた方が得かもと言って利用魚が増えるかもしんない」

このアプローチこそが、シーン作りの本質なのだと気づかされました。「最もインパクトのあるシーンを作ると、営業なんかしなくても勝手に向こうが行列を作る」という言葉は、良いものを作るだけでなく、それをどのように見せ、伝えていくかという視点の重要性を教えてくださるものでした。

また、様々な可能性の中から現実的な方向性を見出すことの大切さも学びました。例えば給食センターは「230食を週に2回、月に1800食」というボリュームは魅力的でしたが、「企画統一供給安定プロセス」という課題も見えてきました。そこで水谷さんは「飲食店の方が可能性感じんだけどね。つまり、飲食店って規格統一やアレルギー対応とかがないので、給食ほどのハードルがないじゃん」と、より実現可能な方向性を示してくださいました。

こういう状況を作ってみたい。

言葉の力と細部へのこだわり

水谷さんは、言葉の持つ力についても気づかせてくださいました。「そもそも未利用魚っていう名前自体が、なんかワクワクしねえじゃん」。この指摘により、「希少で新鮮な、その日の旬の魚」というポジティブな表現への転換を考えるようになりました。

さらに、ビジネスの成功は細部への気配りにあることも学びました。「世の中にさ、狂ったように居酒屋があっても大繁盛の居酒屋とダメなとこあるでしょ。ラーメンもそうだよね。超えるべき壁、全部同じなんだよ。でも、その細い線をつけた人間だけが大行列の居酒屋、ラーメン屋をつくれるんだ。」

この「細い線」は、解像度を上げて物事を見ることで見えてきます。「手間っていうのはどこまでの手間のことを言ってんのか」という問いかけは、漠然とした課題をより具体的なレベルで捉え直すきっかけとなりました。例えば、「中骨あっても許してくれんのかな。みたいな。でも、中骨のない魚だったら、その場で3枚に下ろすのは何秒かかるんだろうかと。そんなの、行列が3人ぐらいだったら、島の人だったら我慢してくれるよな」という具体的な検討がビジネスの成否を分けるのです。

本写真は中骨も腹骨もある状態

私たちの決意

この対話を通じて、私たちはビジネスの本質について多くの学びを得ることができました。それは単なる戦略論ではなく、市場における真の「負」を見つけ出し、それを解決することの重要性でした。

特に印象的だったのは、全てが「行動」から始まるという気づきです。消費者の行動を観察し、そこから本質的なニーズを見出す。そして、その解決策も机上の空論ではなく、実際の行動から導き出していく。水谷さんは、このような実践的なアプローチの重要性を教えてくださいました。

また、ビジネスの成功は「細い線」にあるという学びも、私たちの視点を大きく変えるものでした。表面的には同じように見える商売でも、細部へのこだわりが成否を分ける。その「細い線」を見出すためには、常に解像度を上げて物事を見ていく必要があります。

そして何より、「シーン」を作ることの重要性。良いものを作るだけでなく、それを人々の心に響く形で伝えていく。その積み重ねが、やがて大きなムーブメントを生み出していくのだと学ばせていただきました。

「いいじゃん。お前ら頑張れ」という水谷さんの励ましの言葉を胸に、私たちは一歩一歩前に進んでいきます。消費者の行動をよく観察し、細部にこだわり、魅力的なシーンを作り出しながら。そうして、未利用魚という「負」を、この島ならではの新しい価値へと変えていきたいと思います。

それは簡単な道のりではないかもしれません。しかし、水谷さんから学んだビジネスの本質を常に心に留め、実践を重ねていくことで、必ず道は開けると信じています。私たちNo Fish No Lifeは、この島の未来のために、新たな一歩を踏み出します。

これからも【No Fish No Life】の応援、よろしくお願いします!

いいなと思ったら応援しよう!