『死者への7つの語らい(1916)』
この著作はユングの生前には、友人に配布されただけで一般への公開はされなかった。
『死者への7つの語らい』の邦訳は、「ユング自伝2」の付録として収録されている。これはユングの死後に発表された著作になる。
2世紀の初期に実在したグノーシス派の教父バシリデスが、エルサレムから帰ってきた死人たちに教えを説く形式で書かれている
河合隼雄著「ユングの生涯」によるとこうある。
ユングの心理学的基盤が完全に出来上がったものと評されるので、『死者への7つの語らい(1916)』を先読みしてみた。
◎ユング自伝付録Ⅴ、Ⅰ章
こんなふうに始まる。
この著作は1916年ごろのもの。というわけで、リヒャルト・ヴィルヘルムが道教の錬金術の論文をユングに送ってきたのが、1928年なので東洋思想の陰陽論とか太極論的な考えを知っての上で書いたのではないと思われる。
次に出てくる「プレロマ」という概念は、陰陽論とか太極論的なものである。禅問答のようなところもある。
狐につままれたような話である。最新の宇宙論でわかってきた『真空は何もない空っぽではなくて“真空のエネルギー“が満ちていること』をイメージしてしまう。
次に「クレアツール」という概念が出てくるCREATURとつづるのでドイツ語では生き物のことのようだが、もっと広い意味で使っている言葉のようである。
何を意味しているかよくわからないが、我々は時間的、空間的に有限のサイズと寿命のある存在であって、我々を構成する広く宇宙を構成する物質のように永遠ではないということとでも理解しておくとする。
この説明からすると、クレアツールは生物より上位の概念のようである。そして、クレアツールである人間は区別する。要は分析してアレとこれは違うものだと本来存在していないプレロマの特性を定義していく輩だと言っているようである。
区別しないことは、クレアツールにとって死であるとも言っている。クレアツールの本質の原理は、「個性化の原理」(PRICIPIUM INDIVIDUATIONIS)と言われる。
例えばこんな「対立の組」が例示される。
+と−の電荷が打ち消しあっているのに無理に分離して、区別をつけていると例えればよさそう。そして、片方のみを追求したくても「対立の組」の相手側を無視することはできないと言いたいようだ。
電荷よりも磁極の方がより良いメタファーだろう。N極だけS極だけ単独で取り出すことはできない。必ずセットで現れるのが磁石のN極とS極であるように、「対立の組」の対極はふるまうようだ。
私たち人間は相違を求めたがるが、「自身の本質」を求めるべきであると書かれている。
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今回はここまで。それにしても東洋思想である陰陽論とか太極論的な考えを知る前に「プレロマ」という概念を表していて、その内容が最新の宇宙論でその存在が確実視されている「真空のエネルギー」を示唆しているようなあたり何を透視している人だったのかと畏敬の念をもつ。
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こころざし創研 代表
ティール・コーチ 小河節生
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